ダイリクの2024年秋冬コレクション
Image by: FASHIONSNAP
「ダイリク(DAIRIKU)」デザイナーの岡本大陸が2024年秋冬コレクションで探し求めたのは、夢に向かう自分の新たな可能性だ。「ファイト・クラブ」や「ロッキーホラーショー」などのカルト映画のフィルターを通して披露されたランウェイショーは、これまでとは違った自分を見つけるための通過儀礼のようでもあり、未だ道半ばにいるデザイナー 岡本が夢に向かって羽ばたくための決意表明のようにも映った。
ショーの舞台は、2024年春夏コレクションと同じ国立競技場内駐車場。1000人をゆうに超えそうな数の観覧者が詰めかける中、会場中央にはさながら映画の撮影現場のようなセットが用意されたが、異彩を放っていたのは中央に置かれたスクラップになった外国車だ。ダイリクは2024年春夏コレクションでアメリカのヴィンテージカーを用いて「MY HERO」をテーマとしたエネルギッシュなショーを開催したが、前回のショーを「光」とするなら今回のショーは「闇」。前回との共通点を持たせながら「何かが違ったらこうなっていたかもしれない」という一種のパラレルワールドを表現した。
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2024年秋冬コレクションのテーマは「Who're you?」。「入ってはいけない部屋に入ったとき、観てはいけないと言われた映画を観てしまったとき、経験を終えた自分のなかには、それまで知らなかった自分がいた」と振り返る岡本。「ファイト・クラブ」「ロッキーホラーショー」「ファントムオブパラダイス」「ドニー・ダーコ」といった子どもには観せられない映画から着想を得たコレクションを製作することで、ここまでデザイナーとして順調にキャリアを積み上げてきた自分自身の新たな可能性を模索したという。
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岡本の飽くなき探究心は、デザインからも見てとれた。これまでなかった花柄モチーフのアイテムや極端に着丈の長いアウターを用意したほか、コレクションのキーとしてダイリクでは一度も提案がなかったオールインワンを製作。落ち感のあるベロア生地やスカジャンモチーフなどを採用した多様なアイテムをラインナップした。また、パンツの裾にスリットを採用して肌を見せるなどフェミニンな見せ方にも挑戦しており、「新しい自分を見せたい」という岡本の姿勢を随所に垣間見ることができた。
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ダイリクがショーを開催するのは今回で3回目。「学生の頃にやりたかったことを実現できている」とここまでの道のりを振り返る29歳の岡本だが、内なる炎の勢いが衰える様子はない。岡本は現在の目標について「FASHION PRIZE OF TOKYOを獲ってパリでショーを開催すること」だと力強く宣言するが、おそらくその目標を達成したとしてもすぐに次のゴールを見つけて走り出すに違いない。「ダイリクというブランドがどこまで大きくなるのか、行く末を見届けたい」。ショーのフィナーレで「ありがとう!」と言いながら颯爽と会場を一周する岡本の背中は、観る者にそうした期待感を植え付けるのに十分だった。
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