ファッションショーの様子
Image by: レリアン
年々縮小を続ける、国内のアパレル市場。不況の煽りを受け、モノを売るだけではなく顧客とのコミュニティ形成を目指すブランドも少なくない。そんな中、一足早く顧客同士のコミュニティづくりを実現させているブランドがある。婦人服の「レリアン(Leilian)」だ。全国に多くの顧客を持つレリアンでは、首都圏を中心にイベント「クラブレリアン」を定期開催。ブランドと顧客の関係を構築する場ではあるが、顧客同士の交流にもつながっている。そんなクラブレリアンの現状を探るため、9月にコンラッド東京で開催されたアフタヌーンパーティーを現地取材。同サービス発足の裏側と、レリアン流の顧客との付き合い方に迫った。
「着て行く場所がない」顧客の言葉をヒントに
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クラブレリアンは、レリアンの顧客向けサービスの一環として、2023年10月に本格始動。顧客を招いたランチパーティーやアフタヌーンパーティーを行う会員制のイベントで、これまでに3回実施した。ドレスコードは、「レリアンの服を着用すること」。参加者は、お気に入りのアイテムに身を包み、同じくブランドのファンとともに食事を楽しむ。一見、単純な取り組みのようにも感じられるが、構想期間は約5年。その背景にはどんな苦労があったのか。
クラブレリアン立ち上げ当初の目的は「顧客とのエンゲージメントを強固にすること」だったと、発起人の一人であるレリアンの松永奈穂美氏は話す。「ある時、顧客様の1人から『レリアンのスタッフの皆さんは感じが良いから買い物をするのはすごく楽しいけど、着て行くところがない』という声が上がりました。その一言をヒントに、ただ単に洋服を売るだけではなく、おしゃれをして行く場所までもパッケージにして提供したらどうかと考えたのがきっかけです」(松永氏)。
同サービスを立ち上げるため、場所はもちろん、その先で何をするのかについても考えた。2018年から、社内でチームを発足し協議を重ねたが、コロナ禍の煽りを受け、当初の計画が頓挫。2022年、コロナ以前の日常に戻りつつある中で、チームの再編成が実現した。以来、2週間に1度の定例会を通して「クラブレリアン」の正式ローンチまで協議を重ねたという。
レリアン流、顧客との付き合い方
レリアンでは、クラブレリアンのほか、毎年5月には秋冬シーズンの展示会を兼ねた「逸品会」を開催。同イベントでの紹介アイテムは完全受注生産とし、その場で受注を行うことで、余剰在庫を作らないための取り組みも行っている。また、毎年2回、春と夏に「ザ・ウィーク(THE WEEK)」と題した新作の催事を各店舗で開催。事前にカタログを郵送し、購入者にはギフトを進呈するなど、手厚いサービスを頻繁に行うことで、顧客との関係をより密にしている。
顧客との関係性を強化する中で、“つい立ち寄りたくなる”店舗づくりも行っている。「美容師さんやお医者さんと同じように、販売スタッフはある意味他人だからこそ、家族や友人にはなんとなく言いづらいことでもつい話してしまうことがあると思います。買い物のついでに、込み入った家庭の事情やお子様の自慢話を話しにくるお客様も少なくありません」(松永氏)。販売員としてはもちろん、話し相手として振る舞い、回数を重ねることで、顧客にとっての居場所の一つとしての店舗づくりに努めているのだという。
イベントを通して友人同士に、現地取材で見えた顧客同士の関係性
第3回の開催となる今回のアフタヌーンティーの会場を見渡すと、来場客は夫婦や友人同士、また1人での参加も目立った。第1回の開催から約1年が経ち、当初は1人で参加していた顧客も回を重ねるごとに交流を深めるようになったといい、1人で来ている者同士で談笑しているシーンも見られた。
パーティーの中盤に行われたファッションショーでは、宴会場の客席の間を舞台に、レリアンのスタッフがモデルとして登場し、最新コレクションを披露。モデルの着用アイテムに実際に触れたり感想を口にしながら楽しむ顧客の様子は、ランウェイで行われるいわゆる“ファッションショー”とは一線を画し、親しみやすさに溢れたアットホームな雰囲気で、円卓をともに囲む顧客の間には「あの服が(あなたに)似合いそう」といった会話が自然と生まれていた。
顧客との信頼関係が肝に
「エンゲージメントを強固にする」という目的からスタートしたクラブレリアン。その成果として、来店の促進や売上に繋がっているという。「反響は予想以上でした。結婚式に参列する前にドレスや靴を新調するように、イベントが発生すると、そのために新しい洋服が欲しくなるものです。そのため、クラブレリアンに着ていくためにお洋服を新調されるお客様もいれば、イベントが終わると、その足でいつも通っている店舗に立ち寄って、イベントの内容を仲の良いスタッフに報告しに行く方もいます」(松永氏)。
レリアンは1968年の創業から今年で56年を迎え、顧客層は40代から70代までと幅広く、親子2世代や3世代にわたってブランドを愛用している顧客も少なくない。今年2月には、新規顧客獲得に向け、ブランドの若返りを目指す新カテゴリーの展開をスタートさせるなど、時代と共に変わりゆく側面もある。そんな今、ファッションブランドとして、顧客とどのように向き合うべきだと考えているのか、改めて松永氏に尋ねると「信頼関係が何よりも大事」だという。「これだけ情報が多く、沢山のブランドがあり、買い物の仕方も多様化する中で選んでいただくためには、販売員を信頼できるかどうかが肝になると考えています。お客様に信頼をしていただける接客を心がけることは、時代が変わっても変わることはなく、レリアンらしさの軸になっていると思います」(松永氏)
ただ服を売るだけではなく、その服を着ていく場所、そして時に同じ趣味や空間を共有する人との繋がりまでをも提供しながら、顧客との絆を育むレリアン。常に受け手と密接にあり続け、些細な声を拾い上げて実現してきたことが、半世紀にわたって愛されてきたブランドたる所以なのかもしれない。
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