
Image by: アオイエス
「ナイキ(NIKE)」をスポンサーに開催された第11回目「LABELHOOD」。上海ファッションウィークとは別に、同名のセレクトショップ「LABELHOOD」が中国発・若手ブランド輩出のためのプラットフォームとして2016年に設立。これまでにネットフリックス(Netflix)のファッション番組「Next in Fashion」に出演したエンジェル・チェン(Angel Chen)、XGに衣装提供する「ウインドーセン(WINDOWSEN)」、ドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)で展開している「シュシュ/トング(SHUSHU/TONG)」など数々の中国ブランドをグローバルへと送り出してきた。LABELHOODの特徴としては、ファッションショー以外にもマーケットや展示を同じ会場内で行っていること。業界だけではなく消費者にも開けた場をできる限り提供することで、彼らに購買以外の体験を出来るだけ提供しようとしている。
これまでスポンサーもマーケットとして参加することが多かったが、今回ナイキは「スーザン・ファン(Susan Fang)」、「マークゴン(Markgong)」、「アオイエス(AO YES)」、ウインドーセンとのコラボレーションウェアの発表に合わせたファッションショーをLABELHOOD終了後の4月1日に開催。XGもモデルとして登場し、現地SNS上での話題もさらった。
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前日にLABELHOOD内でショー発表した、アオイエスは2022年秋冬シーズンにブランドをスタート。2025年旧正月を祝う「ザラ(ZARA)」との中国国内限定のコラボは売り上げも好調で、ディズニーとのコラボアイテムの発表や、「10 ASIAN DESIGNERS TO WATCH」に選出されるなど現在国内外での活躍を期待される若手ブランドだ。
アオイエスの特徴は、東洋の美学と西洋のモダンさを融合した現代的なスタイル。一歩間違えると難しいその二つの組み合わせは、ヴォーグ(VOGUE)やワンダーランド(Wonderland)での経歴を持つワンインツォー(王穎超・Austin Wang)と、文化服装学院でパターンメイキングを学んだリュウイェンソン(劉炎松・Liu Yansong)2人のクリエイティブディレクターによって絶妙なバランス感覚で仕上がる。クリエイティブイメージをワンインツォーが担当し、共同作業であるデザインを経て、リュウイェンソンが服作りを担当することで、インディペンデントな若手ブランドでありながらも全てを完結することができているのだという。これまで「東洋文化」と言われるものは、他国から一緒くたなイメージで解釈され、海外ブランドから世界に発信されることが多かったように感じる。しかし中国国内で、コロナ禍を経て2021年頃から徐々に自国の文化を現代的なウェアとして提案する「新中式」がトレンドとなってから、自分たち主語で中国の伝統的なモチーフやディティールを落とし込んだデザインが多く散見されるようになった。そんな国内マーケットの後押しもあってか、アオイエスは飛ぶ鳥を落とす勢いで人気になったのかもしれない。
そんなことを考えながら、LABELHOODのメイン会場である、National Industorial Bank Building(中國實業銀行)跡地に向かった。「UNREAD」と題した2025年秋冬コレクション。本の間に挟まれたままのラブレター、月あかりの下で伝えられていない愛の告白など、言葉にされていないラブストーリーを着想源に、あらゆる想いがスピーディーかつダイレクトに伝わる現代社会において、古典的な時の流れや想いを馳せることの大切さを思い出させるエモーショナルなコンセプトを表現した。しかしデザインにおいてはその複雑で湿り気のある想いは、アオイエスの手にかかると驚くほどにポップに現代的なファッションへと昇華されている。

AO YES2025年秋冬コレクション
Image by: アオイエス
ファーストルックに登場したのは、人民服をモチーフとしたセットアップ。ユニフォームウェアとしての堅苦しさは、ワンポイントの刺繍やチェック柄によって軽やかに。その後も制服のようなプリーツスカートにチャイナシャツが融合したワンピースやタイトスカートや刺繍を施したチャイナドレスなど、フォーマルウェアをベースとしたスタイルが登場。














AO YES2025年秋冬コレクション
Image by: アオイエス
かつて知識人が装いに限らず時代のトレンドアイコンになったように、アオイエスは前衛的な感覚を持った知識人をブランドのミューズにしている。グレー、ブラック、ブラウンなどをベースカラーにしながら、時折差し込まれるビビットなレッドカラーは、活気や大胆さを表すアオイエスのロゴカラーであり、中国文化としても喜び、幸運、熱意を意味するキーカラーなのだという。











AO YES2025年秋冬コレクション
Image by: アオイエス
シャツやカーディガンなどのフォーマルウェアは、ナイキのレギンスやスニーカーをスタイリングすることでカジュアルに仕上げる器用さはアオイエスらしさとも言えるのかもしれない。ショーの起爆剤となるようなコレクションピースは登場しなかったものの、若きブランド歴を思わせないほどの絶妙なバランス感覚はブランドビジネスの面としても今後の期待が集まるものだった。
1991年生まれ。国内外のファッションデザイナー、フォトグラファー、アーティストなどを幅広い分野で特集・取材。これまでの寄稿媒体に、FASHIONSNAP、GINZA、HOMMEgirls、i-D JAPAN、SPUR、STUDIO VOICE、SSENSE、TOKION、VOGUE JAPANなどがある。2019年3月にはアダチプレス出版による書籍『“複雑なタイトルをここに” 』の共同翻訳・編集を行う。2022年にはDISEL ART GALLERYの展示キュレーションを担当。同年「Gucci Bamboo 1947」にて日本人アーティストniko itoをコーディネーションする。
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