2月6日にメンズブランド「アモク(amok)」による初の単独でのショーが開催された。創設10年という節目を祝う日であり、ブランドを継続するために支えてくれた工場の職人やコラボレーションしたアーティストたちへの恩返しの日、そして新たな門出としてスタートを切るための日。デザイナーの大嶋氏は西洋先住民族の「祝祭」と重ね合わせ、アモクとともに歩んだスタイリストやヘアメイクたちと一夜限りの儀式のような「お祭り」を作り上げた。
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当日私は15時からバックステージに入っていた。何より目を引いたのはヘッドピースを中心とした過剰と言っていいほどの装飾。インスピレーション源となったのは、シャルル・フレジェの写真集「WILDER MANN」だという。同書には、欧州に残る伝統的なカーニバルで着飾る多様な衣装の奇怪的な美しさが写されている。先人の想い、思想が詰まった民族衣装に「伝統を重んじて手作業で作られたものにパンク精神を感じる」と大嶋デザイナーは言う。草や木材、動物のツノなどプリミティブな装飾とビーズやレーザーカットされた生地を用いて現代的に再現していた。ヘアメイク、スタイリングが完成していくごとに現れる獣人たち。「祝祭」のテーマ通り特別なショーピースだが、「伝統」という言葉にはもう一つ、東京のイメージを作った先人たちのクリエイションも反映されているのではないだろうか。この解釈は、ショー会場である原宿の文脈からコレクションを紐解いていく。
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私から説明するまでもないが、原宿が奇妙なファッションをする若者が集まる場所として世界で注目されていることは周知の事実。「原宿族」という言葉もあるように「画一的な社会」や「保守的な価値観」に反発するような若者が集まる場所であり、パンク、ロリータ、ゴシック、デコラ、古着、アメカジなど、さまざまなカルチャーが入り混じりアレンジするスタイルが原宿を中心に広がっていった。2000年以降になるとストリートスナップ雑誌「フルーツ(FRUiTS)」やインターネットの普及により、原宿の「カワイイ文化」と総称されるストリートスタイルは、たむろする若者だけでなく、彼・彼女らを彩ったブランドたちの哲学からも影響を受けて成長していった。例えば、アニメーションのキャラクターのようにカラフルでデコラティブなカワイイを広めた「ロクパーセントドキドキ(6%DOKIDOKI)」や、制服を独自でアレンジする日本の文化からノスタルジックなカワイイをファッションに根付かせた「ケイスケカンダ(keisukekanda)」など、原宿のイメージを作ったブランドの存在は大きく、若者のアイデンティティとなっていた。デコラの過剰な装飾とDIY精神が同居するスタイルは、強固かつ異色な空気を醸し出す先住民族の衣装と重なる。
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アモクのコレクションに戻ると、ボアスエードに穴をあけて手編みで繋げたジャケット、過剰に装飾されたロングコート、レーザーカットで架空のモンスターの姿が1500体施されたセットアップなど手作業で1点1点に込められた想いと、メンズでありながらもパステル調で「カワイイ」雰囲気を兼ね合わせている。デコラとDIY精神、原宿ファッションの哲学を受け継ぎながらも現代のテクノロジーを駆使してアップデートしているように筆者の目からは映った。しかしインバウンドの影響で観光客も多く個性的なセレクトショップの数は減少、代わりに商業施設が並び始め、世界が注目した「原宿だからこそ生まれる独自のファッション文化」が少なくなっているのも事実。
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だが、ショー開始2時間前、メイクを終えて控え室からショー会場「オモカド」までモデルがショールックそのままで街中を歩いたあの時間が一番印象に残っている。世界でも類を見ないカオスな原宿族が至る所で闊歩する原風景。それは奇抜な若者が目立った90年代から2000年初頭までの原宿の色合いを取り戻すような景色に映った。アモクは先人デザイナーが作り上げた「原宿ファッション」の精神をこれからデザイナーになる若者に文化を紡いでいくブランドになって欲しいと願う。
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