ファッションデザイナーの川西遼平が、新たなプロジェクト「エア ガーメンツ(AIR GARMENTS)」を発表した。現在の社会問題に焦点を当て、サステナビリティを作品で表現するもの。第1弾は、鳥取で自動車リサイクル事業を行う西川商会との取り組みでスタートし、同社が抱える使用済みの車用エアバッグをはぎ合わせテキスタイルにし、再利用した9型を製作した。
Image by: AIR GARMENTS
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川西は「今日本に豊かな生活があるのは、第二次世界大戦後の自動車産業が発達し、高度経済成長が起こったおかげ。ただその後出た産業廃棄物の量は多く、業者が分解して部品を再販売しているが、リサイクルが容易ではないものもある。前の世代の尻拭い、後始末をしなければならない」とプロジェクトを立ち上げたきっかけを話す。
川西の私服が原型になった9型
エア ガーメンツのアイテムは川西本人の私物をモデルにしており、シンプルなアウターアイテムがそろう。モッズコートのAir N-65(3万8000円)をはじめ、ボンバージャケットのAir Arm Strong(3万2000円)、フェデックス(FedEx)のジャケットから着想したAir Sympatex(4万8000円)、デニムジャケットの形のAir Indigo(2万5000円)、シャツジャケットのAir Zip-Up(2万4000円)、コーチジャケットAir Teacher(2万6000円)、ショートパンツのAir Labour(1万7000円)、トートバッグのAir Baggage(4500円)、バケットハットのAir Head(5800円)など。2サイズ展開で、表記をウィメンズサイズの「レッド」とメンズサイズの「ブルー」に分けている。
Image by: FASHIONSNAP
アイテムに込められた個人的な記憶
川西の私物が原型になっていることから、それぞれのアイテムにデザイナーの個人的なストーリーがある。例えば、モッズコートは2020年までクリエイティブディレクターを担当した「ランドロード ニューヨーク(LANDLORD NEW YORK)」で手掛けた、襟のアーミーディテールを排除したもの。川西のデザインに興味を持っていなかった同氏の妻が初めて「欲しい」と言った一着でもあるという。ボンバージャケットは、川西が2013年にニューヨークで初めて迎えた極寒の冬、アンティークマーケットで30分値切り交渉し、20ドルで手に入れた「ボーイロンドン(BOYLONDON)」をベースにした。国産車のエアバッグは、白いデザインが多く、一つ一つにシリアルナンバーが印字されている。作品はその特徴を生かし、シリアルナンバーがランダムに入る。
自動車パーツを使ったアクセサリー
またルックでは、“SUZUKI”や"HONDA"のマークなど自動車備品の廃材を使ったアクセサリーを制作し、コーディネートとして合わせている(非売品)。
”ボディ”として利用も促す
アイテムは、セレクトショップなどへの卸売りを計画しているほか、企業やブランドに向けて二次加工も促したいと考えている。「真っ白でシンプルなデザインなので、このボディに装飾をするなどデザインを足して使ってもらえたら」。アイテムは川西の出身地である鳥取県で生産され、ブランド運営では一部、鳥取県の支援も受けている。
エア ガーメンツは、川西が手掛けるブランド「レシス(LES SIX)」とは異なり、RYOHEI KAWANISHIとして発表する作品としての位置付け。川西の個人名義で発表した作品は、これまでに2017年にニューヨーク近代美術館(MOMA)の「Is Fashion Modern?」展で展示したGuayabera Shirtsをはじめ、2020年に角川武蔵野美術館で発表した松岡正剛事務所と共同制作のBOOKWEARなどがある。
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