

■外食チェーン最大手のマクドナルドは今年1月、冷たい飲み物をコンセプトにした新業態「コズミクス(CosMc's)」の3店舗を閉鎖すると発表した。
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コズミクスは新たに2店舗をオープンすると同時に、テキサス州内にある閉鎖予定のコズミクスは従来のマクドナルドに改装されてオープンする。
新フォーマットはオープンから1年もしないうちに方針変更に迫られた形だ。
なお日本のニュースメディア等はコスマックスと表記しているが、アメリカ人の発音はコズミクスが近いためここでは発音に近いほうで表記する。
マクドナルドのスピンオフ・ブランド名は1980年代後半から1990年代前半のマクドナルドの広告に登場した宇宙人キャラクター「コズミック(CosMc)」が由来。
外食の巨人がファーストフード店の「午後3時のスランプ(the 3 p.m. slump)」を解消する目的で作ったコズミクスにより、ファストフードに代わる新たな業界の誕生を予感させていた。
またコーヒーチェーン最大手のスターバックスでは冷たい飲み物が売上全体の75%を占めており、Z世代など若い世代を中心にアイスドリンク需要をファーストフードの巨人が飲み込もうとしているのも狙いだったのだ。
発表後に閉鎖となったのはダラス・フォートワース地区にある2号店、3号店、4号店だ。
コズミクス1号店は2023年12月、イリノイ州シカゴ郊外のボーリングブルック地区にオープン。
コズミクス2号店(6033 Campbell Rd, Dallas, TX 75248)は昨年3月、テキサス州ダラス市内にオープンした。
コズミクス3号店は昨年5月、テキサス州ウォートーガ地区(7304 Denton Hwy, Watauga, TX 76148)にオープン。
また同じ月にはフォートワースとダラスの中間にあるアーリントン店(300 E Abram St, Arlington, TX 76010)が4号店目としてオープンした。
ドライブスルーのみの1号店と異なり、2号店以降は店内にウォークアップウィンドウが導入されていたのだ。
また4店舗目となるアーリントン店はドライブスルーがなく、ウォークアップ・ウィンドウのみとなっていた。
ドライブスルー・オンリーのコズミクス1号店(ボーリングブルック店)には4つのレーンのドライブスルーがあり、そこで注文した後に支払いを終えピックアップ窓口で注文品を受け取る。
複数のレーンからピックアップ窓口用にレーンが一つになることでフォーク並びの逆向きとなるドライブスルー。
一方、ダラス店とウォートーガ店はドライブスルーに加えて受け取り用のカウンターが導入されていた。
コズミクスは昨年8月、フォートワース地区(5341 McPherson Blvd Fort Worth, TX 76123)とオースティン地区(12360 FM 1957 San Antonio, TX 78253)にもそれぞれオープンし、10月は別のオースティン地区(8726 Potranco Rd San Antonio, TX 78251)にも出店を果たした。
今年2月にはダラス北部のアレン地区(861 W Stacy Rd Allen, TX 75013)がオープンしている。
これによりシカゴ郊外にある1号店を含めてコズミクスは現在、5店舗の展開となっている。
筆者は昨年7月、ダラス・フォートワースに展開する3店舗のコズミクスを視察した。
訪れたのは奇しくも閉店となったアーリントン店(平日の正午)、ウォートーガ店(平日の午後4時30分頃)、ダラス店(平日の午前9時頃)の3店舗だ。
アーリントン店はドライブスルーもイートインスペースもなし。一方、ウォートーガ店とダラス店はドライブスルーにイートインスペースをもっていた。
ファーストインプレッションを一言でいえば「閑古鳥」。
特に建物を他のテナント(レストラン)と共有しドライブスルーのないアーリントン店は繁忙期の正午に行ったのだが、怖いぐらいにお客が皆無だった。
ドライブスルー売上がマクドナルド全体の60%以上を占めているため、アーリントン店は壊滅的な状況になったと想像できる。
ビジネス街のようなウォークアップの立地ではないのだ。アーリントン店は駐車場を他のレストランとシェアしており、しかも駐車キャパも極めて限られる台数しかない。
したがって筆者も遠く離れた場所で路上駐車するしかなかったのだ。実験的に出店し利用率を確認したのだろうが、アーリントン店はそもそも立地で大失敗している。
次にスタンドアローン出店のウォートーガ店ではイートインに若い二組のカップルがいたもののドライブスルーを含めて閑散としていた。
スーパーマーケット最大手のクローガーにあるショッピングセンター内にあるコズミクス・ダラス店もガラガラだった。
ドライブスルーにはときおり車を見かけたが店内では小さいこどもをつれた母親しか見かけなかったのだ。
流通DXワークショップ研修でも参加者と一緒にウォートーガ店を視察したが、客は皆無だった。
コズミクスのターゲット層はZ世代であるが、インフレで最も影響を受けており金銭的に余裕がない。
テスト段階にある「コズミクスを失敗」と位置づけるのは早計だが1年もしないうちに閉鎖は同業態に先がないようにも見える。価格を見直すなど価格戦略の変更が急務だ。
トップ画像:閉鎖となったコズミクス・アーリントン店。ドライブスルーもイートインスペースもなく、さらに十分な駐車スペースもなかった。実験にしてもなぜここに出店したのか?が問われる店だ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。閉鎖発表後にコズミクスは3店舗を閉鎖しましたが、どうやら全店スクラップは時間の問題のようです。というのもメディア関係者がシカゴにある1号店を訪れた時にはもうお客がいない状態になっていたからです。多分、どこも同じなのでしょう。後藤が想像した以上にマクドナルドは新業態を「エイヤッ」の力技で作ったみたいです。つまり価格戦略など、よーく研究とかされていなかったということ。そういった意味でいえば今回閉鎖となった2~4号店は業態として凸凹になっていました。最も酷かったのがコズミクス・アーリントン店。ドライブスルーもイートインスペースもなし。マクドナルドなど多くのファストフード店ではコロナ禍以降、ドライブスルーが稼ぎ頭ですから、新業態でドライブスルーがないのは当初からの欠陥品です。さらにアーリントン店は駐車台数も多くはなく、他のレストランと共有なので停めるのに一苦労という最悪のロケーションでした。それを理解していたうえで出店したのか、とりあえず出してみたのか分かりません。
失敗であっても原因を究明しシェアすることで進捗につながるのですが多分、なかったことにされる黒歴史になる可能性が高い気がしますね。
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