

■サンディエゴ市議会は先週、デジタルの食品クーポンを提供するスーパーマーケットに対して、同価値のペーパークーポンも提供するよう義務付ける条例を全会一致で可決した。
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デジタル障壁により高齢者などがデジタルでの割引の恩恵を受けれないことを是正し、デジタル格差を埋める。
この条例が施行されればサンディエゴ市はデジタル限定クーポンの提供を禁止する全米初の都市となる。
この禁止令の目的はハイテクに詳しくない高齢者の買い物客を含むすべての消費者に、紙のクーポンを提供することを食品スーパーに義務付けることだ。
多くのスーパーは今でもDMや新聞の折り込みチラシでクーポンを配布している一方、同条例案にたいしてスーパーマーケットの業界団体は反対している。
最近のレポートによると2022年、アメリカ人の91%が1件以上のクーポンを使用しており、1億7,800万人以上の成人がデジタルクーポン(ダウンロード可能なクーポン、モバイルクーポン、クーポンコード、自動割引を含む)を利用した。
市議会議員ショーン・エロ・リベラ氏は同条例を先導した理由を「高齢者や低所得世帯、デジタルアクセスを持たない人々が生活必需品を買うのを難しくなっている。それは大手チェーンストアがデジタル障壁でディスカウントを隠しているからだ」と述べた。
同氏はまた「(スーパーマーケットの)アプリの使い方がわからない人、もしくはアプリを正しく使ってもお店側が割引を適用しない人の立場にたてば(アプリを使用することで)20ドルの差が出ることになります」とも語っている。
サンディエゴ市が2014年~2018年に実施した調査によると、同市では5万3000世帯がインターネット接続がなく、低所得地域や脆弱な地域では28%以上の世帯がブロードバンドインターネット接続をないという。
実際、リベラ氏によると定収入で暮らす65歳以上の高齢者層はサンディエゴ市の人口の14%を占めており、大半がテクノロジーに詳しくない。海外生まれの移民で英語が母国語でない、高齢な人々もデジタルクーポン等に不案内なのだ。
またアメリカ国内の高齢者の25%がインターネット接続がなく、さらに39%がスマートフォンを持っていないためデジタルクーポンが手の届かないものになっているとの指摘だ。
調査機関のピュー・リサーチ・センターでも高齢者の30%はインターネットに接続できておらず、24%はスマートフォンを所有していないとしている。
なお同条例は2週間後に市議会で二度目の審議と最終承認を受ける予定となっている。施行後、サンディエゴ市内のスーパーは90日以内に遵守しなければならない。
リベラ氏はまたクーポン冊子の配布や商品棚にクーポン・ディスペンサーで提供したり、スキャン可能なオンラインクーポン小冊子をレジ係に置くことを勧めている。
しかし大手スーパーマーケットチェーンにとって同条例が法律になるとやっかいだ。同様の条例案がニュージャージー州やワシントン州、イリノイ州、マサチューセッツ州で検討されているからだ。
デジタルデバイドを禁止することで、デジタルクーポンを利用して頻繁に購入する優良顧客にむけたロイヤルティ・プログラムなど特別サービスを難しくさせてしまう。
また食品業界の観点から同条例を見れば「環境への負荷を減らします」というメッセージの一方で顧客には「何千枚ものペーパークーポンを使ってください」ということにもなり板挟みにもなるのだ。
そんな中で全く気にならないのはチェーンストア最大手のウォルマートだろう。なぜならEDLPのウォルマートは一般的に集客にクーポンを用いていないからだ。
デジタル上での割引はないわけではないが全体から見れば微々たるもの。オムニチャネル・リテーラーと自負するウォルマートにとって安さ以上に買い物の利便性で集客できている。
競合スーパーが条例でデジタル限定クーポンを使えなくなったほうがウォルマートには追い風になるのだ。
トップ画像:ウォルマート・アプリの売り場「マイ・アイテム」。オムニチャネル化でパーソナライゼーションを提供できていることでウォルマートはデジタルクーポンで集客をする必要がないのだ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。"本来あるべき大事な要素が欠けていて、物足りない状態を表す"比喩表現をずっと考えています。なぜかというと流通コンサルタントや流通団体、旅行社等が主催する米国流通視察ではウォルマートのネットスーパー体験を提供していないから。"ウォルマート・アプリを介して生鮮品をネット購入する研修のない視察"を、分かりやすいメタファーで表現したいな、と思案しているのです。で、最初に思いついたのは「旨味のない味噌汁」。他にも「塩気のない塩ラーメン」に「全くコクのないコーヒー」「出汁のないおでん」「クリームのないシュークリーム」もあります。「オチのない漫才」かもしれません。日本は現在、春休み。人気アニメ「ドラえもん」の最新映画が大ヒットしていますが「映画ドラえもん のび太の絵世界物語」にドラえもんが最後まで出てこないようなものですね(笑)。エンドロールで三歳児も立ち上がって大ブーイングでしょう。それぐらい米国流通ではウォルマートのネットスーパーを体験しなければならないということです。
サンディエゴ市のデジタル限定クーポンの禁止条例の影響は、熱狂するウォルマート・ネットスーパーの前にはほとんど関係ありませんね。
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