
「JOSEPH」2025年春夏コレクション
Image by: JOSEPH
2023年に設立40周年を迎えたロンドンを拠点とするコンテンポラリーブランド「ジョゼフ(JOSEPH)」。1983年の設立以来、女性のための上質で現代的なワードローブを世界中で展開してきた同ブランドは、2023年秋冬コレクションから原点に立ち返るべくリブランディングを図り、商品企画を本国発に統一。2024年11月には新クリエイティブ ディレクター マリオ・アリーナ(Mario Arena)の就任を発表するなど、全世界でのさらなる成長に向けて舵を切っている。日本では、2024年2月にオンワードホールディングスが新会社の「ジョゼフジャパン」を設立。新体制後初来日したジョゼフCEOのバルバラ・カンポス(Barbara Campos)氏は、国内事業のさらなる成長を目指すとともに、日本をアジア太平洋地域におけるグローバル成長戦略の重要拠点と位置付ける。
ジョゼフは、モロッコ・カサブランカ生まれのジョゼフ・エテッドギー(Joseph Ettedgui)により、1966年にコンセプトストアとしてロンドンに誕生。新進気鋭のデザイナーズブランドをいち早く見出し発信するストアとして展開したのち、1983年に自社レーベル「ジョゼフ」をスタートした。以来40年間にわたり、ウィメンズ・レディ・トゥ・ウェアやアクセサリー、フットウェアなど、ファッション性とタイムレスな要素を兼ね備えた、上質でラグジュアリーなエッセンシャルワードローブを提供してきた。
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日本国内では1996年にウィメンズの取り扱いがスタートし、2005年にオンワード樫山がジョゼフグループを買収。グローバルではオンワードホールディングスの100%子会社である英国法人JOSEPH LIMITED社を拠点に事業を運営し、日本ではオンワード樫山が展開してきたが、グローバル戦略加速のため、2024年2月に新会社 ジョゼフ ジャパンが設立された。現在、ジョゼフはオンラインと卸を含めて世界60ヶ国・330店舗で展開し、ロンドン、パリ、台湾、東京に直営店を構えている。

「JOSEPH」2025年春夏コレクション
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業績回復の鍵は、ブランドDNAに立ち返ること
現CEOのカンポス氏は、ハーバード・ビジネス・スクール(Harvard Business School)で学んだ後、「ヒューゴ ボス(HUGO BOSS)」や「フルラ(FURLA)」「ダイアン フォン ファステンバーグ(DIANE von FURSTENBERG)」「マルニ(MARNI)」などでセールスやマーケティング部門の要職を歴任した後、2018年にジョゼフCEOに就任。当時不採算が続いていたブランドを再構築するべく、会社全体として多角的な業務の見直しや組織改革に取り組み、2022年には5年ぶりの営業黒字化を達成した。2024年度においても、12月時点で直営の店舗およびECの売上が前年比9%増となるなど、堅調に推移している。その業績回復の一番の柱となったのが、ブランドのDNAや原点に立ち返るリブランディングだ。
商品構成をこれまで同ブランドの人気や成功を築き上げてきた「パンツ」「ニットウェア」「テーラリング」「コート」といったカテゴリーにフォーカスする形にシフトし、ブランドとしてのアイデンティティを明確化。また、各地域でローカライズが進み過ぎていた製品をグローバルコレクションに統一することで、全世界で一貫した製品・ヴィジュアルイメージを打ち出すことに注力したという。

「JOSEPH」2025年春夏コレクション
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「CEOに就任した私の主な任務は、特にプロダクト面で、ジョゼフのDNAやこれまでブランドが成功してきた要因を改めて掘り起こすことでした。『何でもやろうとしない』という大胆な決断を下したことが、結果的にブランドアイデンティティの明確化に繋がり、ビジネスを伸ばす助けになりました」とカンポス氏は語る。
そのほか、事業面ではデジタル分野の強化に取り組み、プラットフォームやユーザー体験を向上させることで顧客へのリーチを最大化するとともに、実店舗の出店も拡大。40周年を迎えた2023年にはロンドンを象徴するリージェント・ストリートに新コンセプトの店舗を新たにオープンし、同じくロンドンのハーヴェイ・ニコルズやパリのギャラリー・ラファイエット、東京の伊勢丹新宿店など、世界中の店舗で順次新コンセプトのストアデザインを導入している。
さらに2025年春夏シーズンからは、オケージョン用ウェアに特化した「イベントドレッシング(Event Dressing)」ラインを新たに立ち上げるほか、カットソーとドレスカテゴリーも強化。今後はシューズ・バッグカテゴリーを再導入することで、さらなるビジネス拡大を目指していくという。
グローバル成長戦略の重要拠点「日本」
イギリスを拠点に、フランスやドイツをはじめとしたヨーロッパや北欧、アメリカ、台湾など世界的にビジネスを展開する同ブランドが、グローバル成長戦略の重要拠点と位置付けるのが日本市場だ。現在、全世界の売上の45%を構成する本国イギリスに次いで、日本は第2位となる13%のシェアを占めており、カンポス氏はさらに大きな成長のポテンシャルがあると睨んでいる。そのため、現在は日本の消費者に強く響くブランドづくりを本格的に進めており、ブランドDNAやイメージは維持した上で、気候やサイズ展開など、地域の特性に合わせたコレクションの調整にも取り組んでいるという。
加えて、カンポス氏は「今や日本市場は国内でのビジネスチャンスに留まらず、アジア市場全体に向けた強力なショーケースやゲートウェイとして機能している」と言及。「現在、日本には非常に多くの外国人観光客が流入しているため、日本市場でブランドのビジネスやプレゼンスを強化することは、日本の消費者のみならず、アジア全域をはじめ世界中から訪れる消費者への認知にも繋がっています」とその影響力の大きさを強調する。

「JOSEPH」2025年春夏コレクション
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そのため、昨年のジョゼフ・ジャパン設立による運営体制の再編や、独自企画商品を廃止したグローバルコレクションへの一本化は、日英間のコミュニケーションを円滑化・効率化するとともに、全世界から日本を訪れる消費者にブランドとしての一貫した製品やイメージの訴求を行うことで、グローバルにビジネスを拡大していくためのシナジーを創出する狙いがあったようだ。
今後、日本ではオンラインビジネスの強化に向けて、2025年はじめに日本向けECサイトの立ち上げを予定しているほか、2025年秋冬シーズンには、現在は停止している卸事業の再開も計画。より幅広いチャネルでの展開を行うことで、さらなる成長とブランド認知度向上を目指していくという。
高級ブランド市場における、ジョゼフの“潜在能力”
また、来たる新クリエイティブ ディレクターのマリオ・アリーナが手掛ける2026年春夏コレクションについては、「マリオは創業者であるジョゼフ本人の歴史やアーカイヴを相当深く研究してきたため、ブランドのDNAを非常によく理解しています。彼のファーストコレクションでは、ジョゼフのアイデンティティをしっかりと踏襲した、美しいクラフトマンシップや時を経ても色褪せないデザイン、素晴らしいフィット感とともに、何らかの新鮮な驚きの要素も加えてくれるはずです」と期待を寄せた。

「JOSEPH」2025年春夏コレクション
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最後にバルバラCEOは、近年価格高騰が続く高級ブランド市場において、ジョゼフというブランドが持つ“潜在能力”について語ってくれた。「今の高級ブランドの顧客層は、高品質で優れたデザインのアイテムを求めているものの、近年のラグジュアリーブランドによる大幅値上げには抵抗を感じているため、多くの消費者が『価格に見合う価値』を求めて私たちのようなブランドに目を向け始めています。また、現代の消費者の購買行動はより“意識的”なものに変化しつつあり、本当に投資する価値のある、長く愛用できるデザインと品質を求める傾向があります。そういった観点から、我々のような優れたクラフトマンシップとタイムレスなデザインやカラーを備えたブランドが、今の消費者にはより強く訴求できる可能性を秘めていると考えています」。

「ジョゼフ」CEOのバルバラ・カンポス氏
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