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【コラム】目新しいデザインの衣料品が生まれにくくなっている

【コラム】目新しいデザインの衣料品が生まれにくくなっている

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー
南 充浩

80年代のファッショントレンドは、当時中高生だったということもあり、薄っすらとしか覚えていない。逆に言うと薄っすら何となくは覚えている。

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いわゆる「私服」で生活をするようになったのが、大学生からなのでファッションの記憶は大学入学の89年から残っているといえる。

中高生のころからファッションに興味を持っていた人なら違うだろうが、当方が身なりを構いだしたのは大学卒業後の話になる。

それゆえに、大学卒業後から見聞きするファッショントレンドの移り変わりはそのたびに新鮮で驚かされた。実際に新しいデザインというものも90年代、2000年代とふんだんにあった。

時が流れて当方も老境に差し掛かってきたわけだが、ファッショントレンドの認識開始時期が他の同年代の人よりも遅かった当方も2010年代半ばぐらいからは「一回りしたことがある」という既視感しか感じなくなった。

新しいデザイン、新しいシルエットというよりは90年代、2000年代のリバイバル、場合によっては80年代のリバイバルという感想しか無くなった。

もちろん、当方の精神が老化によって無感動になりつつあるという理由もある。しかし、その理由を差っ引いても2010年代半ば以降の新デザイン、新シルエットというのは、過去のどこかの年代のリバイバルばかりというのが当方の感想で、今後、衣料品において画期的に新しいデザインや新しいシルエットは生まれてこないと思っている。

リバイバルの代表が2015年から復活したビッグサイズである。もう10年前のことで、今ではすっかり定着していて、今後も一つのジャンルとして定着し続けるのではないかと思っている。

リバイバルといえば、最近では老若男女問わず定番化しているプルオーバースエットパーカである。前開きのフード付きと区別するために「フーディー」としておく。

あくまでも個人の記憶ベースなので年数が少し間違っているかもしれないので、もし正確にご存知の方がおられたらご指摘いただきたい。

90年代前半にフーディーは存在していて、たしか当時のNBAブーム(死んだ弟がバスケットボールの大ファンだったこともあって記憶している)によって、フーディーが一気に拡散していたという記憶がある。

もちろん、当方も着用していた。この頃には当方も働き始めていたので、美濃屋のコンバースのフーディーを何枚か買って着用していた。

しかし、2000年ごろからピチピチタイトシルエットブームが始まると、徐々にフーディーは売り場から姿を消した。理由はよくわからない。

そして、2015年のオーバーサイズ復活と同時にフーディーも復活した。

2016年に草彅剛氏主演で「スペシャリスト」という連続テレビ刑事ドラマが放映された。元は2013~2015年にかけて土曜ワイド劇場で2時間ものとして何本か放映されたが好評につき、ついに連続ドラマ化したという作品である。

亡母は火曜サスペンス劇場とか土曜ワイド劇場を必ず見ていたが、当方はさっぱり興味が無かったので見ていなかったが、この連続テレビドラマは見た。

主演の草彅剛氏の衣装は毎回常にテイラードジャケットの中にフーディー、その中に襟付きシャツというアイビー、プレッピースタイルで、このスタイルの登場人物を久しぶりに見た。テレビドラマの衣装というのは、ある意味でマストレンドのスタイルであることが多いから、いよいよフーディーが復活したのだとその時に認識した次第である。

そこからもう9年が過ぎると、当方のタンスにもスエットフーディーが10枚以上ある。もうこれ以上フーディーは要らない。ただ、黒・紺・グレーばかりなので、買うとしたら赤やピンク、ブルーといった鮮やかな色物くらいだろうか。

当方のタンスがそのような状態なので、恐らく他の一般消費者のタンスも似たような状況なのではないかと思う。

そうなると、フーディーのデザイン変化版へのニーズが出始める。

当方自身も何でもフードが付いている服には飽き飽きするとともに不便さも感じていた。特にフーディーの上からフード付きのアウターを着るのは着脱にも不便なので、「フードの無いアウター」か「フードの無いフーディー」かを求める心理が2020年以降は強まっていた。

「フードの無いフーディー」なら丸首のトレーナーを着たらええやんと言われそうだが、上からアウターを着用することを考えると首の汚れが襟裏に付着するのでそれは避けたい。アウターを洗濯するよりはフーディーを洗濯する方が気楽である。

そんなことを考えていたら、2024年ごろからプルオーバーのハーフジップスタンドカラースエットがアンドエスティあたりに出回り始めた。当方が認識したということはある程度マス化していると考えられ、もしかすると先端層はその2~3年前に注目していたのかもしれない。

そうすると、ついに今春はユニクロも販売を開始した。ただ、投入後の売れ行きが芳しくないのか、2月末には定価3990円が1990円にまで値下げされてしまった。

ちょうど母方祖母の7回忌の返礼で商品券をもらっていたので、それを使って黒と杢グレーの2着を買った。

このスタンドカラーハーフジップというデザインだが、スエットにかぎらずセーターにも見られていて、90年代には広く売られていた。ただ、このデザインも2000年代には廃れてしまって、いつしかオジサン専用服みたいになっていた。

それが昨年くらいからリバイバルしたというのは驚いてしまう。

早速、ユニクロで買った2着を試着しているが、当方の老いた顔ではやはり日曜日の初老にしか見えないのだが、これもそのうちに「見慣れる」のだろうか。

すでにフーディーが相当なオジサン・オバサン・ジジババ世代にまで浸透しており、すっかり「見慣れて」しまっている。当方と同年代、それよりも上の世代のプロ野球OBのYouTubeを多数見ているが、その人たちのフーディー着用率は異常に高いと感じる。ただ、その姿もすっかりと「見慣れて」しまった。

とりとめのない話になったが、ハーフジップスタンドカラースエットがマスで復活したということに驚きを感じたとともに、やはり全く新しいデザインというのは生まれにくく、今後もこのようなリバイバルが繰り返さるのではないかという考えを改めて強くした次第である。

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