

■カリフォルニアのゴールドラッシュをご存知だろうか?当時のゴールドラッシュは1948年1月24日、当時はまだ州になっていないカリフォルニアの北部、コロマにあるサッターズミルで始まった。
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ジェームズ・ウィルソン・マーシャル氏が製材所に流れる水流を点検していたところ、キラキラ光る物体を発見したのだ。詳しく調べてみると、これが最高級品質の金であることがわかったのだ。
川の底から金が発見されたとの知らせはたちまち世界にひろがり、全米だけでなく海外からも金塊を求めて多くの老若男女がこの地に集まるようになったのだ。
一攫千金を夢見て一説には約30万人がカリフォルニアに大挙して押し寄せた。1949年にはバケツやスコップ、ツルハシなど買っては毎日、金を掘り続ける人が後を絶たなかった。
彼らに商売して大儲けした人たちがいた。金を掘るのに必要なツルハシやスコップ等の道具に作業着、生活必需品、娯楽などを売る商売だ。
その象徴的な事例となったのが「丈夫な作業着がほしい」との需要からデニムを売ったリーバイスとなる。
そこから「ゴールドラッシュで一番儲けたのは金の採掘者ではなく、彼らに道具等を売った人達だった」となっている。
言い換えれば「金が見つかったらプレイヤーよりサプライヤーになれ」ということになる。
金鉱ビジネスをもっと広く捉えながら、スケールする潜在的な周辺ビジネスを他者より先に見つけるほうが確実に儲けられることになる。
今、ゴールドラッシュが起きている。チェーンストア最大手ウォルマートのEコマースだ。
ウォルマートUSのEコマース売上高は11月~1月期、前年同期比で20%も増加した。ネットスーパーを含めECは11四半期連続して二桁成長となっているのだ。
ウォルマートのEコマースは売上全体の18%を占めるまで成長している。2025年1月期通期のウォルマートの総売上高(会員費含む)は前年比5.1%増となる6,810.0億ドル(約102兆円)。
カーブサイド・ピックアップや宅配サービス、さらにマーケットプレイスが牽引してウォルマートのEC事業はシンプルに計算して20兆円近くにも上る。
ネット通販最大手のアマゾンとはネット事業で大きく異なるのは、ウォルマートが毎日必要な生鮮品を含む食品を扱っていることだ。
4,000店以上という店舗網を生かして、ウォルマートは店舗からの即日宅配を米国内世帯の93%に拡大できている。エクスプレスデリバリーは特に人気で注文の30%以上を占めているのだ。
アマゾンには真似ができず、EC競争をオセロに例えればウォルマートが盤面の四隅(隅のマス)を取ってしまっているようなものだ。
家電やアパレル、おもちゃや本等をネット販売できても毎日の買い物になる食品をネット販売で抑えられていれば勝てない。
ウォルマート・ネットスーパーの"金脈"に気づきサードパーティとなる業者がマーケットプレイスに出品して金を採掘しようとゴールドラッシュだ。
ウォルマート・マーケットプレイスの出品企業が50%も拡大し広告代理店事業「ウォルマート・コネクト(Walmart Connect)」売上も前年同期比で24%増加だ。
ウォルマートCEOのダグ・マクミラン氏もECの黒字化は「どうでもいい」と言及した。掘っても掘っても溢れ出る金脈を見つけているばかりか、サプライヤーにもなっているから黒字化は既定路線なのだ。
しかし大変興味深いことがある。ウォルマートだけでゴールドラッシュ状態になっているのだが、この熱狂は日本では全く知られていない。メディアばかりか専門家さえ気付いていない。
理由はバーチャルではない。日本ではウォルマート・アプリをダウンロードできない。ダウンロード不可なので月間で最大11回もアップデートされているアプリのUI等の秀逸性を確認できない。
スマートフォン等にインストールできても米国内住所やアメリカの携帯番号を持っていないため登録できない。
流通コンサルタントが視察でアメリカにやってきてもサインアップできないのでネットスーパーのチェックも不可能なのだ。
さらに買い物を何度も行って得られる、優れたパーソナライゼーションも1回こっきりのネット注文では把握できないのだ。
ましてや流通コンサルが高齢者ならスマートフォンさえ使えないため、米国流通視察ではモバイル体験さえ行わない。
旅行社に雇われた流通コーディネーターも自分のスマートフォンをお客に貸与させるには大きな抵抗がある。
そもそもスマートフォンを使う研修では参加者を少人数に絞らねばならず、ツアー事業で儲けが出にくい。
結果、どんなにゴールドラッシュ的な熱狂となっているネットスーパーも日本で知られない存在になるのだ。
当社の流通DXワークショップではクライアントにゴールドラッシュを体感してもらい、流通業者以外のビジネスマンにも例えば新規事業のアイディアを得てもらっている。
例えればツルハシやスコップの道具類や作業着を売って儲ける新ビジネスのネタを仕入れてもらう。
採掘会社を起業し株式から巨利を得た鉱夫、町の区画を売るビジネスで儲けた策士、洗濯屋を営んで稼いだ人に鉄道事業で財を成したお金持ちなど"今は誰も気付いていない"今後の周辺ビジネスの隆盛を熟考してもらうのだ。
いつの時代にも、ショベルやテントを売って儲けるビジネスを知らない"愚か者"はいるものだが、当ブログの読者にはそうなってほしくないのだ。
トップ画像:ネットスーパーを含めウォルマートのEコマース売上高は、前年同期から20%の増加となった。EC売上高は前年同期で20%の増加となり、11四半期連続して二桁成長となっている。これはもう21世紀のゴールドラッシュだ。君は21世紀のリーバイスになれるか?
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。とても便利な時代になりました。他のコンサルタントが行う米国流通視察の内容が手に取るように分かるのです。研修風景等の画像を多数、ネットにアップしているのです。それらを見ると、まぁー酷いものです。アナロジーで表現すれば、EVや自動運転車が走っているそばで、若い研修参加者は馬車に乗らされているのです。ウォルマートを視察すれば目立つのはネットスーパーで注文品をピックするピッカーの多さです。しかもエントランスや売り場の壁にはデカデカとウォルマート・アプリについてのPOPが大きく掲げられているのです。さらにウォルマートの直近の数字には"ネットスーパー18%"に"店舗からの宅配が国内世帯の93%"となっています。日本の25倍の面積となるアメリカに約3.6億人が住んでいますが、人口9割以上がウォルマート・ネットスーパーの利用が可能ということ。コレ、凄くない?と思うし、11四半期連続して二桁成長を維持してCEOは黒字化は気にしていないとの発言があるほどの自信です。ゴールドラッシュの熱狂感!
本当に申し訳ないのですが、コンサルがアップする研修画像を見ると「ほんまアホちゃうか!?」が正直な感想です。「ゴールドラッシュで儲けた人は◯◯」に今後は「そもそもゴールドラッシュに気付けない人は?」というテーマでも書けそうです。
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