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【コラム】「過度に軽量な防寒アウター」を要望する声への違和感

【コラム】「過度に軽量な防寒アウター」を要望する声への違和感

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー
南 充浩

修業も兼ねて毎月ネット通販でサイズ表記と素材組成だけを見て服を買うということを続けている。

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まあ、何となくコツは分かってきたような気がするが、それでもやっぱり現物を見ていないのは不便で仕方が無い。最近は消費者レビューも見て判断するようにしている。

当方が気付かなかっただけかもしれないが、1年半くらい前からアンドエスティ、アーバンリサーチともに消費者レビューが充実してきたように感じる。

アンドエスティ、アーバンリサーチに関して言えば、レビューを書くとよほどひどい内容でない限りはポイントがもらえる。このポイントを貯めれば次回以降の買い物に値引きで使える。だからレビューを書く人が多いのだと思う。もちろん、当方もそれでポイントを貯めている。

レビューを読んでいて感じるのは

「世の中、いろんな捉え方をする人がいるのだな」

ということで、思いもよらぬ解釈や感想を書き込む人が少なからずいる。まあ、これはSNSでも同様だから、ウェブというのは、人間の相互理解の難しさを可視化したといえるのではないかと思う。

それはさておき。

何の商品だったか忘れたのだが、先日、アンドエスティで商品を物色していてレビューを読んでいたら

「すごく重いです」

というレビューがあった。恐らくは防寒アウター類だったと思うが、実際に当方はそれを買ってみて驚いた。

全然重くないのである。たしかにウルトラライトダウンあたりと比較すると重いが、当方からすると常識の範囲内の重さである。

また、他の防寒アウター類と比較してもそこまで重くはなかった。

アンドエスティのレビュー欄には、メンズ商品なのに女性の書き込みが多い。自分の夫や息子の商品を買った人も多いみたいだが、それ以外は独身女性っぽいので、意外にメンズ服を自分用として買う女性は多いのかもしれない。

この「すごく重い」と書いた人は女性だったので、当方とは筋力が圧倒的に異なると思われるため、重く感じることもあるのだろう、ということは前提として、それでも「すごく重い」というのは驚くほかない。

今回、言いたいことは2つである。

1、予想以上に「軽さ」を求める人が多いのではないか

2、「意見」の吸い上げの難しさ

である。

まず、「過度な軽さ追求」についてである。

このレビューもそうだが、実際に店頭に立っていても、「軽さ」を求める女性客は多い。当方のバッタ店での販売員記憶でも、「重いのが嫌」「とにかく軽いのが欲しい」というババ中高年女性は驚くほど多かった。

客層としては若い女性客は少なく、ほとんどが中高年女性だったので、恐らくは中高年女性の総意が軽さの追求だと見て間違いないのではないだろうか。

しかし、当方が持ってみた感じではそこまで重くなく、極めて標準的な重さですら「重い」と言って拒否する人は少なからずいた。

このレビュー主も同様の嗜好なのではないかと思う。

この「軽さ追求」はけっこう昔からあって、すでに2000年頃には業界でも知られていた。

当時は「軽薄短」が持て囃されていると某大手アパレルの部長が嘆いておられた記憶がある。軽くて薄くて、丈が短いアウターが好まれるというわけだ。

このうち「丈が短い」というのは、現在では必ずしもマストではなくなったと感じるが、軽薄はいまだに好まれる。とくに軽さである。

ただ、何でもかんでもウルトラライトダウン並みの軽さを求めるのはいかがなものかと思ってしまう。

素材組成によっては常識的な重さにならざるを得ない物も多い。そんなに軽いのが良いならウルトラライトダウンだけ毎日を着続けていろよと思ってしまう。

次に「意見」の吸い上げの難しさである。

レビューを書いてくれるということは、消費者の意見をダイレクトに受け取る機会といえる。それだからこそ、あアパレル側もわざわざ値引き用のポイントを付与しているわけである。

これはマーケティングに昔からある課題だが、全員の意見を聞くことは重要だが、採用することは危険であるということである。

常識的な重量のアウターに「過度の軽さ」を求める意見は、聞くことは良いが、採用する必要はこれっぽっちも無いのである。

それを採用すれば使用素材から変えねばならなくなり、商品政策が崩れてしまう。

これは今でもマーケティングの授業などで語り継がれていると思うが「サラダマック事件」の二の舞である。

マクドナルドがアンケートを取った結果「野菜が採りたい」というものが多くそれを「サラダマック」として実現したところさっぱり売れずに早々に廃止したという事件だ。

たしかに多くのアンケートに答えた消費者は「野菜」を支持した。しかし、マクドナルドがそれを実現しても買ってもらえなかった結果である。要するに消費者の意見は聞きすぎてもダメなのである。

もちろん、今の大手企業ならこの辺りはキチンとしたマーケティングコンサルタントと契約しているだろうから、消費者レビューに惑わされることは少ないだろうが、用心するにこしたことはないだろう。

それよりもレビューが手軽に書き込めることによって取るに足りない意見が多くの人に可視化されてしまうというのが、現在のウェブ社会の危険性だろう。

いわゆる「ノイジーマイノリティ―」の意見が可視化されてしまい、変なムードが醸成されてしまう危険性も少なからずある。

この辺りの整理は今後の社会の課題といえるのではないか。

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