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ブランドの頭文字のFをふたつ組み合わせた印象的なズッカ柄、世界中の女性たちのウィッシュリストに入っているバゲットバッグ、アイコンバッグとなっているピーカブーなど、2025年に創業100周年を迎えたFENDI(フェンディ)は多くのシグネチャーを生み出してきました。1925年にイタリアのローマで誕生した小さなお店は今や世界的なファッションメゾンとなり、現在もトップブランドとして世界をリードし続けています。今回は創業100年のFENDIにスポットを当て、FENDIがこれほどまでに愛され続ける理由を探ります。
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FENDIの誕生
FENDIは、1925年にイタリアのローマでアデーレとエドアルド・フェンディ夫妻が創業したブランドです。当時アメリカで流行していたファー製品に着目し、ハンドバッグ店とファーの工房からなるブティックをオープン。扱う製品の品質の高さとモダンなデザインで瞬く間に人気を呼びました。1932年にはレザー用品とファーのアトリエを新たに併設したブティックを開業し、ローマの馬具職人から受け継いだ技巧を巧みに取り入れたハンドバッグコレクション「セレリア」を発表。職人が一つひとつ手作業で仕上げる上質なバッグは評判となり、セレリアはシグネチャーシリーズとして現在も愛されています。1965年には、のちにスターデザイナーとしてモードの帝王となったカール・ラガーフェルドを主任デザイナーに迎え入れ、より革新的なデザインを発表。この時、まだ27歳の新進デザイナーだったカール・ラガーフェルドは、FENDIによって名声を確立し、2019年に亡くなるまで54年もの間FENDIに貢献したことで知られています。ローマで生まれた小さなブティックは、数十年のうちに世界的ファッションメゾンとして成長し、イタリアのラグジュアリーブランドの一角を占めるまでになったのです。そして、その影にはフェンディ家の5姉妹の存在がありました。
躍進に貢献したフェンディ家の5姉妹
創業者である父エドアルドが1954年に他界すると、アデーレは5人の娘たちの手を借りながら事業を続けました。パオラ、アンナ、フランカ、カルラ、アルダの5姉妹は、女性の社会進出が難しかった1940年代から50年代にかけて事業に参画し、女性のニーズや好みの変化を巧みに捉え、クリエイティブな発想でブランドを躍進させます。カール・ラガーフェルドをデザイナーに迎え入れたのも5姉妹の大きな功績で、カールによってアイコンとなるズッカ柄が生み出され、クラシカルなファーのイメージをモダンなものへと刷新することに成功しました。1992年にはアンナの娘であるシルヴィア・フェンディが、2021年にはシルヴィアの娘であるデルフィナ・デレトレズ・フェンディがブランドに参画。現在まで続くFENDIの躍進はフェンディ家の女性たちによってもたらされ、脈々と引き継がれてきたのです。
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photo-lime – stock.adobe.com
ロゴの誕生と変化
FENDIと聞いて真っ先に思いつくのは、Fをふたつ組み合わせたズッカ柄でしょう。ズッカ柄は先述した通り、カール・ラガーフェルドが考案したロゴですが、ふたつのFには「FUN FUR(ファーを楽しんで)」の意味が込められているそう。実はFENDIはこれまでに3回ロゴをリニューアルしており、創業当時のものはどんぐりを手に持つリスでした。このリスのモチーフは今もバッグやチャームなどに姿を変え度々登場しています。リスのロゴからカールが生んだFFロゴへと変わり、2000年に世界トップのラグジュアリー企業、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)の傘下に入ったのをきっかけによりシンプルなロゴへと変化。その後2013年に、ROMAの文字を加えた現在のロゴへと変遷したのです。
映画にも登場
FENDIの代名詞といえばやはり高品質のファー。実は多くの映画の中でもFENDIの毛皮のコートは絶大な存在感を発揮し、その役をつくるうえで重要な役割を果たしていました。貧しい家からファーストレディーにまで上り詰めたアルゼンチンの伝説的な女性を描いた『エビータ』で、マドンナ演じるエビータが羽織っていたコート、風変わりな一家を描いた『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』でグウィネス・パルトロー演じるマーゴが愛用するコート、『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープ演じるミランダが纏っていた、襟元がストライプ柄のファーもFENDIのものでした。これらの毛皮のコートはスクリーンの中で存在感を主張し、見る人に鮮烈な印象を残したのです。
日本におけるFENDIの人気
FENDIが日本に上陸したのは1965年。70年代に女子大生やOLを中心にニュートラブームが起きたことで海外ブランドが日本でも浸透し始め、ルイ・ヴィトンやエルメスなどと並びFENDIも流行しました。その後、80年代になるとイタカジブームの到来でイタリアンブランドが注目され、さらなる人気を得ましたが、なんといってもFENDIの人気を決定づけたのはバゲットバッグの登場でしょう。1997年に登場したコンパクトなバゲットは世界中で大ヒットし、より小ぶりのクロワッサンやミニクロワッサンなど、伝説的なバッグが多数登場しました。現在では実に1000種類以上ものデザインバリエーションがあるというバゲットですが、このバッグをきっかけに「FENDI=ファー」というイメージから、バッグが人気のラグジュアリーブランドというイメージに変わっていったと言えるでしょう。
アイコンアイテムはバッグ
パンを小脇に抱えるような感覚で持ち歩けることからその名がついたアイコンバッグのバゲットをはじめ、「いないいないばぁ」という意味を持つ遊び心たっぷりのピーカブーバッグ、2014年に登場した小さめボストンバッグのバイザウェイ、90年代後半のアーカイヴスタイルをもとに生まれたシンプリーフェンディなど、ブランドを代表するバッグが多数あるのがFENDIの魅力のひとつ。ユニークな発想とデザインが機能美と見事に融合しており、素材の上質さとクラフトマンシップが随所に感じられるなど、いずれのバッグも長く愛せるものばかりです。同時に、ホリデーコレクションではおにぎりをモチーフにしたミニバッグを発表するなど、プレイフルで茶目っ気たっぷりのバッグもリリース。伝統と革新、そして大人にこそ似合う遊び心が、FENDIのバッグがアイコンアイテムとなる理由なのでしょう。
100周年の幕開けを飾るカプセルコレクション
FENDI 100周年の幕開けに花を添えるのが、2025年1月2日から販売が開始されたカプセルコレクション「フェンディ アイズ」。ブランドのシグネチャーである「モンスター アイ」デザインがピーカブーやバゲットなどにあしらわれており、こちらを見つめる愛らしい目のデザインはインパクト満点で早くも話題をさらっています。
世代によってFENDIに抱くイメージは異なるかと思いますが、筆者が真っ先に浮かぶのは太めのストライプが印象的なペカン柄です。黒と茶のストライプにさりげなくブランドロゴがあしらわれたデザインは1983年に登場したそうで、このトートバッグを母が使っていたことを思い出すのです。FENDIが時代も世代も超えて今なお愛され続けるのは、記憶や思い出に残るアイコニックなデザインを多数生み出してきた結果でしょう。そしてこれからも多くの人の記憶に、その時代ごとのシグネチャーが刻まれていくのではないでしょうか。
TEXT:橫田愛子
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