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一般的にバブル経済の崩壊は91年だとされている。
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当方と同年代以上の人は記憶に残っていると思うが、91年からすぐに不景気感が漂ったわけではない。不況感が増したのは97年からになる。
97年の北海道拓殖銀行と山一証券の倒産が明らかに世間一般に衝撃と不況感を与えたといえる。その後、2000年代前半はダイエーやマイカル、そごうが経営破綻し、本物の不況が到来したことを当方も含めて広く認識したことだろうと思う。
業界新聞記者になったのはその97年で、取材先では「服が売れない」という言葉が毎日のように聞こえるようになった。
売れなくなったのは強まった不況感が大きな理由だが、当時、それとともに売れない理由として挙げられたのが世間に普及し始めた携帯電話だった。
不況で給料が上がりにくい上に、携帯電話の通話料という出費が増えたから洋服に回す可処分所得が減ったという指摘である。
今の40代から下の人には信じられないだろうが、97年頃に普及するまで一般には携帯電話はあまり出回っていなかった。持っていたのはよほどの金持ちとか緊急性を要する経営者とかそんな類の人たちに限られていた。
それまで持っていなかった物を持って新しく支出が増えたから、どこかに皺寄せが来るのは当たり前といえる。
ただ、その当時の携帯電話通話料金は全般的に今よりも安かった。当方が持っていたPHSならだいたい3000円台だったし、携帯電話でも5000円台だった。
今の格安通信の方が安いかもしれないが、通常キャリアの通信料よりははるかに安い。取材していた当時は「月々3000~5000円の支出が増えるだけでそこまで洋服に回すお金が無くなるのかな?」と少し疑問に思った。
さて、2020年代である。
不況感が増したとか言いながら2000年前後は裏原宿ブームがあったり、バーバリーブルーレーベルブームがあったり、109ブームがあったり、と、今よりも高額衣料品が売れやすくブームになりやすいご時世だったこともまた事実だった。
衣料品への支出額の平均はその当時よりも下がっている。
もちろん、日本特有の低価格ブランドの発達も手伝っていることは間違いないが、各個人の支出用途が25年前よりも多岐にわたっている。
携帯電話料金は相変わらずそのままだとしても、その他の支出先が増えすぎている。
以前にも書いたが、馬鹿にならないのが各種のサブスクである。ケチな当方はあんなものを気軽にいくつも契約する人の気が知れない。
1つ1つは月額500~1000円程度だが、それがいくつも合わさると1万円、2万円になってしまう。だから当方は極力サブスクは契約しない。これからもする気が無い。
女性の場合だと「ネイル」だろう。
90年代後半当時、マニキュアを塗っている女性は珍しくなかったが、ネイルアートをしている女性はほとんどいなかった。ネイルが一般的に流行り出したのは2000年代半ばくらいからだったのではないだろうか。
もちろん、職業的に今もネイルをしていない人はいるが、マニキュア以上の装飾をしている女性は結構多い。あれだって定期的にメンテナンスしたり、色柄・装飾を変えたりするのはお金がかかる。
さらにいうと、男女ともに「トレーニングジム」もある。2000年頃にジムに通っているとか言っていた人はほとんどいなかった。競技スポーツをやっている人か、ボディビル趣味の人くらいだったが、今では結構普通の人まで健康維持や体型維持の目的から月額使用料を払ってジムに通っている。
当方はこれもケチっていて、時間のある時に自宅の周辺をぐるぐると走ったり、縄跳びをしたりで済ませている。あと思い出したかのように腕立て伏せをしたり腹筋をしたりすることもある。
それ以外に髪型というのもあるだろう。特に、染めたりパーマをかけたりすると料金は高くなる。これも当方は節約して散髪だけにとどめている。すでに天然パーマがかかっているのでこれ以上パーマをかける必要も無い。若い頃、と言っても25年くらい前には興味本位でアッシュに染めていた時期はあったが、それも気が済んだのでそれ以降は一度も染めていない。
あくまでもザックリ見てきただけで、これほどの支出先が増えている。
さらにその上、趣味も多種多様に分かれている。衣料品業界に多いのが、アウトドア、サーフィン、ゴルフ、音楽、釣りあたりだろうか。当方は野外活動が嫌いなので、ガンプラであり、ガンプラ趣味の業界人もコロナ前から結構存在した。
こうなると、業界人も含めた一般消費者全般の衣料品への支出は減らざるを得ない。それでも衣料品への支出を減らさない人は、サーフィンやガンプラ同様に「衣料品が趣味の人」に限られることになる。
ガンプラ趣味の人が、ZZガンダムとZZガンダム後期強化版の差にこだわるように、衣料品趣味の人は素材や細かなディテールやシルエットの違いにこだわっている、と見なすことが当方はできると思っている。
そして「趣味ではない分野」の支出を多くの人は削っている。当方だと各種サブスクやジムである。
衣料品業界人とて同様で、「高額衣料品を買うべきだ」と主張する人が他方では「安くて美味い居酒屋に行きたい」と平気で言うわけである。衣料品が趣味ではない人が「安くて出来のいい衣料品が欲しい」というのと同じである。
結論だが、最も現実的な対処法は、これらの支出先と共存しつつ買ってもらえるような価格の衣料品を業界は製造・販売することではないかと思う。もしくは、衣料品趣味の人をガッチリと囲い込んで高額衣料品を販売するか、である。
もうインポートジーンズブームやバーバリーブルーレーベルブーム、裏原宿ブームのような高額衣料品ブームは起きない可能性が極めて高いのだから。
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