■日本経済新聞社は2日、「1時間働いてビッグマック2.2個 『スマイル』も安い日本」との記事を掲載した。
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同記事では「国際的な物価指標として知られる外食大手マクドナルドのビッグマックをもとにした分析で、日本の賃金水準の低さが浮き彫りになった」と伝えている。
マクドナルドで販売されているビッグマックの価格を基にして求人検索サービスのインディードのデータを活用しながら、日本と海外との賃金で比較した内容だ。
記事には「店舗で1時間働いて買えるのは2.2個と、2.5個以上の米国や英国に見劣りする」とし「値上げほど賃上げが進まず、5年前に比べても0.2個減った」としている。
さらに「『スマイル』の安さには経済全体で労働者の取り分が少ない構造的な問題も浮かぶ」と記事の上文で結んでいる。
日本のビッグマック2.2個をかえって強調するようなニュースがアメリカ流通業ででている。
メンバーシップ・ホールセール・クラブのコストコ・ホールセールは、米国内の大半の時間給従業員の時給を30ドル以上に引き上げるとしたのだ。
直近の円相場は1ドル=155円であるから、コストコの従業員の最高時給30ドル20セントは日本円で換算すると約4700円に相当する。
480円のビッグマックを基本にすれば、コストコの時給は10個程度にもなるのだ。
コストコで1時間働くだけで、大食いインフルエンサーで食の変態さんのYouTube「【大食い】大好きな倍ビッグマック10個を爆食い」を撮影できる計算だ。
なぜコストコの時間給がこんなにもあがったのだろうか?実はコストコは労働組合に加入する従業員と労使交渉のさなかにあったからだ。
コストコCEOのロン・バクリス氏は先週、スタッフに宛てた社内文書で、賃金水準トップとなる従業員の時給を向こう3年で引き上げる方針を示した。
3月にこれら従業員の時給は1ドル増となる30.20ドルとなり、その後2年間も毎年1ドル引き上げられるという。賃金が最低水準となるスタッフでは時給が50セント増しの20ドルにもなる。
チームスターズ国際同胞組合(International Brotherhood of Teamsters)に属しているコストコ従業員が1月31日までに新しい労働契約が結ばれない場合、ストライキに突入すると通告していた。
米国は日本の企業内組合と異なり産業別の組合であり、今回の労使交渉もコストコとチームスターズ組合の間で行われていたのだ。
労働協約が切れる31日の深夜、コストコは組合の要求を飲んでビッグマック10個分にもなる賃上げ等の新労働協定に調印したのだ。
最低時給も約3,100円になりビッグマックが6個強となる。
普通の食の人なら翌日、嬉しさとともにショパンの「プレリュード」が聞こえてくるだろう。
なおコストコは昨年も同様に最高時給を1ドル引き上げており2年連続での引き上げとなっている。
今回の契約には福利厚生として30年勤務した場合にスタッフは追加的に1週間の休暇が与えられ、合計で6週間の休暇を取ることもできる。
ビッグマックを爆食いしても太田胃散を片手にゆっくりとお休みを取れることになる。
時給中央値であるビッグマック2.2個の日本にとってコストコの10個は大きな教訓になりそうだ。
コストコ従業員のチームスターズは85%という圧倒的な支持を得てスト権を確立した。
28日(火曜日)にはカリフォルニア州ヘイワード店やワシントン州サマーズ店でストライキの演習を行い、翌日もコストコ・チームスターズがロングアイランド店でピケと集会の演習を行ったのだ。
30日も南カリフォルニア店で数百人の組合員が大規模なピケと抗議集会の演習に参加した。組合員は声を大にしてビッグマック10個分となる時給を明確に主張した。
こういった行動が目に見えるかたちでコストコ上層部への大きな圧力となったのだ。
日本で賃金が上昇しないのは組合が形骸化し、交渉力を発揮することができないという指摘がある。
もう何十年も「労働者がストライキを行った」という話は聞かないというのだ。
一方、SNSが発達し個人でも声を出せる今なら健全な"組合"行動を起こせることになる。
実際、モバイル注文の殺到により疲れ切ったバリスタがスターバックス数百店で労働組合を組成している。最近ではホールフーズ・マーケットでも初めて労働組合が作られているのだ。
ところで日本ではビッグマック10個もいらないかもしれない。マクドナルドのコマーシャルはフジテレビから消え、太田胃散のプレリュードさえ流れない。
かつてフジテレビの労働組合を立ち上げたフジサンケイグループの日枝久代表は、皮"肉"にも労働者に追求されビッグマック10個分の代わりに職を追われることになりそうだ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。日本の問題は元気な老人にありそうです。経営者や幹部だけでなく、企業の将来を左右する重要な意思決定を行う層に高齢者が多くいるということです。「一生懸命」など古い価値観をいまだにひきづっているため、生産性が上がらないのです。例えば生産性向上を学ぶ米国流通視察でも"老害"がはびこっています。旧態依然となる、店の売り場を見て回るだけという研修内容です。我が社の将来を担う若い社員も「原理原則」「基本」「本質」等の"言い訳"から、世界最先端の流通現場でスマートフォンがどのように使われているのかを見ることさえできません。チェーンストア最大手のウォルマートではネットスーパーが熱狂状態にありながら、成長の中核となるウォルマート・アプリさえ触ることができないのです。海外視察に随行する高齢コンサルタントがスマホを使えず、アプリ利用さえ把握していないので結果、売り場だけ見ることになります。グループ用にビッグマック10個分もモバイルオーダーではなく、イン&アウトのレジ注文というアナログになるのです。
米国流通視察だけでなく優秀な若い奴らが老害に対して(コストコ従業員にように)ちゃんと声をあげられるかどうかでしょうね、日本の将来を左右するのは。
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