■アメリカでは人手不足を補うために、自動化やロボットによるオペレーションを導入するレストランチェーンが増えている。
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外食業界の巨人であるマクドナルドに限らず、タコベルやポパイズ、パネラブレッドなどAIを使ったドライブスルーをテストしているチェーンも少なくない。
そんな中、AI搭載の音声ボットを使ったドライブスルーで実績を上げているチェーンが注目されている。
アメリカ国内に約6,000店を展開するハンバーガーチェーンのウェンディーズはドライブスルーに生成AIを導入し、顧客体験を向上させている。
ウェンディーズは2023年11月、Googleが提供するクラウド・コンピューティング・サービスのグーグル・クラウドと提携し開発した音声受注システム「ウェンディーズ・フレッシュAI(Wendy's FreshAI)」を始動した。
本社近くのオハイオ州コロンバス地区にあるウェンディーズでフレッシュAIを数ヶ月間テストした後にスケール化しているのだ。
ファストフードチェーンにとってドライブスルーの顧客体験の向上は喫緊の課題となっている。なぜならコロナ禍を経てドライブスルー売上が全体の大半を占めているからだ。
マクドナルドは6割以上がドライブスルーで、ウェンディーズでは直近(2024年10月31日)の決算声明でドライブスルーが70%を締めていると明かされているのだ。
またドライブスルーにAIが導入されるのは移民大国であるアメリカならではの事情もある。
米国において「ヒスパニック(Hispanic)」や「ラティーノ(Latino)」と呼ばれる中南米系の人たちが人口の約16.3%を占めているのだ。
彼らはアメリカ最大のマイノリティであり商業の分野でも無視できない存在となっている。
音声だけを頼りに注文を受けるドライブスルーではスペイン語しか話せないヒスパニックにAI対応する必要があるのだ。
また売上に占める割合が増えてくるとドライブスルーではこれまで以上にスピードも求められる。
レジ行列とは異なり、ドライブスルーに長い行列ができ路上までクルマの行列が伸びれば交通状態を招き付近住民から苦情が出てしまう。
コミュニティに溶け込もうとするファストフードチェーンにとって地域住民の迷惑は死活問題になるのだ。したがってドライブスルーでのスピード処理が必須になる。
AIをテストされたコロンバス地区ではウェンディーズ・フレッシュAIがドライブスルーの平均待機時間よりも22秒速くなったことが示されたのだ。
ドライブスルーの音声受注システムにAIを導入するにも大きな問題がある。それは受注の正確性だ。
マクドナルドは2021年夏、シカゴの10店舗でAI技術のドライブスルーをテストした。AIが音声認識ソフトを使用して注文を受けた際、85%の精度で認識できたのだ。
その一方で5回に1回の割合でスタッフが補助する必要があったという。
実際、何の問題もなくスムーズに注文できるドライブスルー客もいる一方で、喋ったことを正しく理解しないなどのトラブルも多い。
そのためSNSには笑い話になるようなAIドライブスルーの出来事が多数アップされていた。
例えばTikTokにアップされた映像では「マクドナルド・ロボットとの戦い(Fighting with McDonald's robot)」の投稿者(@themaddivlog )がマクドナルドのAIドライブスルーで水とヴァニラ・アイスクリームを注文したものの、確認画面では「バター2個とケチャップ4個」の表示となっていた。
「マクドナルドのロボットはワイルドだぜ(The McDonald's robot is wild)」のTikTok投稿者(@typical_redhead_)は、チキンマックナゲットのセットを頼もうとして数量を間違えられてしまった動画を投稿。確認のスクリーンには「255.52ドル(約3万3,000円)」というありえない料金が映し出されており、ポンコツすぎて大爆笑という動画になっている。
笑い話ではなく、聞き間違いにイライラさせるような動画もアップされている。
TikTokユーザー(@That_usa_guy_)はマウンテンデューを注文したが、勝手にコカコーラと注文を変えていた。
マクドナルドのドリンクメニューにマウンテンデューはないので、止む終えないところもあるものの投稿者が間違いを訂正しようとするとAIがスルーするため注文をやり直すはめになっていた。
途中からは女性スタッフに引き継がれたところも映し出され、見ている方もストレスを感じる内容となっている。
結局、マクドナルドは昨年6月、AIの試験導入を断念したのだ。撤退理由は明かされなかったもののAIの受注精度が80%台前半にとどまったことが指摘されている。
一方、ウェンディーズ・フレッシュAIの成功率はほぼ99%になっている。
スタッフの介入なしに正常に処理された注文の割合として測定されたテスト期間での正確性は平均86%で、そこから深層学習を続け平均は増加していると予想されている。
ウェンディーズでは結果、19州の100店舗近くにAIを導入し成果を上げているのだ。
ウェンディーズのDXはドライブスルーのAIにとどまらない。約2,000万ドルを投資して国内にある全店舗にデジタル・メニューボードを設置し、一部に価格やメニューを自由に変更できるダイナミック・プライシングの実験を今年行うのだ。
ハンバーガーなどメニュー価格の上限と下限の詳細は明かされていないが、変動幅から地域による価格変動もテストするのではないかと見られている。
混雑する昼食時の価格が高くなったり、NYマンハッタンのタイムズ・スクエアにある店舗と片田舎の店で価格差もつけるかもしれないのだ。
飲食チェーンDXも多くがまだ実験段階だが、莫大な投資により近いうちに生産性が飛躍的に伸びることが予想されている。飲食店もDXは避けて通れないのだ。
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