■日本の流通業界人の多くが当ブログ「激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ」を読んでいる。
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米国流通を参考にしている流通ビジネスマンなら、読んでいない人はモグリだとも断言できる。
なぜなら当ブログの管理者である筆者は、一次情報にこだわっているからだ。
一次情報とは情報発信者が買い物を直接的に行い、ネットスーパーやストアアプリを体験し、自ら調査して得た"ナマ"とか"リアル"と表現される"現場"情報だ。
信頼性が高く、独自性があるため、ビジネスや学術分野で重要視される。
それに対するのが二次情報、三次情報だ。
二次情報とは、一次情報を元に分析や解釈などをまとめられた情報。続く三次情報は一次情報や二次情報を編集もしくは加工した情報となり、情報の解像度や粒度は粗くなる。
さらに二次情報や三次情報より劣ったものにコタツ記事がある。
コタツ記事はテレビやインターネットなどのメディアで得た情報のみを基に作成されたものだ。
よく言えば「キュレーション記事」、悪く言えば「コピペ記事」とも呼ばれる。
一次情報かそうでないかの見分け方は実に簡単だ。情報発信者が直接撮影した画像や動画があるかどうかだ。
「激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ」のエントリー記事にはトップに画像を貼り付けているが、そのほとんどが筆者が撮影したものになる。
常に体験して一次情報を得ているとコタツ記事しか書いていない人の目に見えないものが見えてくる。
例えば米国のネットスーパー。
チェーンストア最大手のウォルマートのネットスーパーの記事を日本語でも頻繁に目にする。
日本でも最近、ネットスーパー市場に新規参入を果たす大手チェーンストアも相次いでおり、参考にウォルマートの事例を紹介していたりする。
誰もウォルマートのネットスーパー体験をしていないことから、100%書かれていない情報がある。
日本のネットスーパーの成功事例として紹介される三重県鈴鹿市の「スーパーサンシ」でもできていない施策だ。
ちなみに北勢・中勢地区を中心に13店舗を展開する、年商400億円以上のスーパーサンシは以前、インタビューで「逆に、いまウォルマートが、うちの“マネ”をしているんですよ。サブスクにする、配送用ロッカーを置く、物流センター型をやめて店舗集約型にすることも」と話していた。
ウォルマートよりひと足早く黒字化できているため鼻息も荒くなるのも理解できる。同時にこれを読んだ当時、筆者は「オムニチャネルリテーラーとなったウォルマートは随分となめられたものだ」と思ったものだ。
ウォルマートがネットスーパーとして扱うのは商品点数は1万点以上に対してスーパーサンシは何点を扱っているのだろうか?
ウォルマートは全米展開に対してスーパーサンシはどの程度を対象商圏にしているのだろうか?
ウォルマート・アプリは月に最大11回も更新され、買い物に便利なARやAIに他のレシピアプリとも連携している。
スーパーサンシのアプリには同様な便利な機能があるのか?と不思議に思ったものだ。
しかし両者には利用者として決定的に異なるネットスーパーのポイントがある。先に記した100%誰も書いていないことだ。
それがウォルマートのイージーリターンだ。
イージーリターンは顧客がネットスーパーで注文品を受け取った後、最も大事な戦略になっている。
イージーリターンはウォルマート・アプリのタブ「アカウント(Account)」から「履歴(Purchase history)」にいき、所定のレシートを開く。
レシートの上部にある「返品をする(Start a return)」ボタンをタップし、返品する商品にチェックを入れるのだ。
あとは返品理由「品質が悪い(Poor quality)」「損傷(Damaged)」「期限切れ(Past Expiration)」から適当に選ぶだけとなる(オプションでコメントも記入可)。
完了すると画面には「返品する必要はありません(No need to return)」と表示され、クレジットカードへ返金となる。
返品の手間が全くかからず数秒で完了だ。
先日の流通DXワークショップ研修ではネットスーパーで24アイテムほど購入した。
受け取った後にイージーリターンでまずは58セントのアボガドを返品。
さらに参加者自らが4.48ドルのキットカット、3.98ドルのスパム缶、2.88ドルのレッドブル、3.37ドルのダークチョコレートをイージーリターンした。
14.71ドル(約2,300円)分が返品せずとも返金となった。
これには研修参加者の誰もがが"ウォルマートは狂っている!"と目を丸くする。ちなみにイージーリターンの返品期間は1ヶ月間だ。
一方、スーパーサンシでは「万一、商品に傷み等がございましたら、返品・交換させていただきます」で「ご遠慮なくお客様サービスセンター/フリーダイヤルXXXX-XX-XXXXまでお申しつけください」だ。
さらに返品期間の条件として「生もの(冷蔵・冷凍商品など)…お届け日の翌日中にご連絡ください」、「生もの以外…お届け日から1週間以内にご連絡ください」とある。
コタツ情報に毒されていると「逆に、いまウォルマートが、うちの“マネ”をしているんですよ」となってしまう。
自信が慢心になり、無知に加えて自分の思い込みや偏見、先入観に合っている情報ばかりを集める「確証バイアス」も加速する。
反面教師からみる、一次情報の重要性だ。
トップ画像:ウォルマート・アプリのイージーリターンでネットスーパー注文品を返品処理する研修参加者。画面には「返品する必要はありません(No need to return)」と表示されている。下の画像を見てほしい!
先日の流通DXワークショップ研修ではネットスーパーで24アイテムほど購入。受け取った後にイージーリターンでまずは58セントのアボガドを返品。さらに参加者自らが4.48ドルのキットカット、3.98ドルのスパム缶、2.88ドルのレッドブル、3.37ドルのダークチョコレートをイージーリターンだ。14.71ドル(約2,300円)分が返品せずとも返金される。合法的な万引きが可能!これには研修参加者の誰もがが"ウォルマートは狂っている!!!"と目を丸くするのだ。直近の四半期にてウォルマートのECの黒字化に目処が立っていると明かされた。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。スーパーサンシをネタにして申し訳なくも思います。それでも一次情報などのエビデンスで、あのようなプライドをへし折ってあげることを書くと読者には記事が刺さりやすいのですね(笑)。実は後藤はこれまで鼻息の荒い社長や幹部を何百人と接してきました。なぜならアメリカにまで勉強に来るような人は、日本でそもそも大成功している流通業の上層部だから。最初は意気揚々と視察を行うのですが、後藤の解説に彼らの表情が曇っていくのです。コンサルタントとして生活者としてナマの情報を得ている後藤とネットで書かれたコタツ記事には大きな開きがあるのです。知らなかったことを知ってショックを受けるのです。最も象徴的なのはアメリカの返品制度です。エントリー記事にあるようにウォルマートのネットスーパーで食品を購入して返品すると店に返品せずとも返金されるのです。これを体験するとクライアントは「ウォルマートは頭がおかしい!」となるのです。これがウォルマート・ネットスーパーのコタツ記事に書かれていないことです。
ドイツ帝国の初代宰相ビスマルク氏の有名な言葉「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」があります。歴史とは他者の経験です。黒字化に慢心せず賢者ならウォルマート・ネットスーパーを体験して学ぶのですよ。
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