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売れる商品はこうして作る プロが教えるペルソナの描き方

売れる商品はこうして作る プロが教えるペルソナの描き方

サンフランシスコ発デザイン会社の公式ブログ
btrax

「この商品なら絶対に売れるはず…」

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そう確信して開発した新商品や新規事業が、市場で思うような反応を得られない。多くの企業が直面するこの課題に、あなたも心当たりはないだろうか。

実は、商品開発の成否を分けるポイントは、開発の最初の段階にある。それは「誰のための商品なのか」を具体的に描き切れているかどうかだ。

「20-30代の女性向け」「子育て世帯」—こうした曖昧なターゲット設定では、もはや競争の激しい現代市場では通用しない。

では、実際にヒット商品を生み出している企業は、どのようにしてターゲットユーザーを描いているのか?

その答えが「ペルソナ」だ。

今回は、筆者のサービスデザイナーとしての経験をもとに、売れる商品を作るための具体的なペルソナの描き方と、その活用方法を解説していく。

「全ての人に愛される商品」はもはや作れない時代に

かつては、ターゲット層を「女性」「ファミリー層」など大まかに捉えたとしても、商品を大量生産することで売上を伸ばすことができた。

しかし、現代の社会では消費者のニーズは多様化し、モノが溢れた社会では差別化が必須だ。「全ての人に愛される商品」はもはや作れなくなっている。

実際の失敗事例を見てみよう。例えばMicrosoftが2006年に発売した音楽プレイヤーZuneは、音楽愛好者を広くターゲットにして開発されたが、市場シェアが2%未満にとどまり、2012年には販売終了となっている。

Microsoft Zune

失敗の原因の一つは、「ターゲットを幅広く設定しすぎて、皆を少しずつ喜ばせることはできるが、誰にも深く愛されないものになっていたから」とも言われている。

Zuneは幅広いユーザーをターゲットにしており、他の音楽プレイヤーやiPodに対抗する「オールインワン」デバイスとして開発された。

異なるサイズや容量のモデルを展開し、映画やテレビ番組のレンタル、オーディオブックも楽しめる、まさに「いろいろできる」商品だった。しかしその分マーケティングメッセージが明確でなく、市場での立ち位置が曖昧になったとされている。

現代のユーザーは、自分自身の価値観や特定のライフスタイルにぴったりと合致した商品を求めている。情報がインターネットを通じて広がり、世界中の人々があらゆる選択肢にアクセスできる今、単に「どんな人にも少しずつ役立つ」だけの商品では、ユーザーの関心を引くことは難しい。「たったひとり」でも泣いて喜ぶような、具体的なニーズに応える商品こそが選ばれる時代なのだ。

そのためにユーザーを深く理解し「たったひとり」を具体的に描き出す手法が、「ペルソナ」の作成だ。

ペルソナを作成するには

ペルソナとは、特定の価値観や目標を持つ架空の人物像であり、ターゲットとなるユーザー像を具現化するためのツールである。

ペルソナを作成するときには、ターゲットユーザーを象徴する人物のプロフィールを詳細化する必要がある。代表的な項目として、最低限、下記のような要素をまとめてみるとよい。

1.顔写真

2.デモグラフィック情報

3.ソシオグラフィック情報

4.そのペルソナを端的に表す一言

5.ユーザーのゴール

6.生き生きとしたストーリー

これらを一枚の紙にまとめたものの例がこちらだ。一つずつ詳細を説明していこう。

ターゲットユーザーを象徴する人物のプロフィールの例

1 . 顔写真

顔写真は、商品を作るチームメンバーにとってペルソナがまるで実在しているかのように感じさせ、深く共感するために必要だ。リアリティを持ってペルソナを扱えるよう、イラストや有名人の写真ではなく、写真素材サイトなどから個人の顔写真を探して用いるのがおすすめだ。

無料で使える写真素材サイトUnsplashで“Persona”と検索するとちょうど良い顔写真が多数ヒットする。

2. デモグラフィック情報

デモグラフィック情報とは、主に年齢、性別、職業、収入、学歴など、人の基本的なプロフィールや人口統計に基づく情報だ

例えば「大卒の30代の会社員」といったものがデモグラフィック情報にあたる。これらは数値や属性で表しやすく、設定を考えるのも比較的簡単だ。ステレオタイプに注意しながら「このターゲットユーザーなら、こんな属性が代表的といえそう」というものを設定しよう。

3. ソシオグラフィック情報

一方、ソシオグラフィック情報は、価値観やライフスタイル、趣味、行動パターンなど、個人の性格や心理的な側面に関する情報である。データで数値化しにくい部分も多く、より深いレベルでの理解を求められることが特徴である。

例えば、「環境に配慮する生活を心がける人」や「健康を大切にする人」といった情報がソシオグラフィック情報にあたる。このようにソシオグラフィック情報は「その人がどのように考え、行動するか」を表すものである。

4. そのペルソナを端的に表す一言

「そのペルソナを端的に表す一言」とは、その人物を一言でイメージできるキャッチフレーズのようなものである。

例えば「新しいことに挑戦するのが楽しくてたまらない都会の若手ビジネスマン」というプロフィール説明のようなものや、「失敗も含めてすべてが成長の糧」といったユーザーの特徴的なセリフがこれにあたる。この一言があると、ペルソナの特徴や価値観が瞬時に伝わり、チーム全体で共通のイメージを持ちやすくなる。

5. ユーザーのゴール

「ユーザーのゴール」は、ペルソナが達成したい目標や望んでいる結果を示すものである。このゴールが明確になることで、その人がプロダクトやサービスに対してどのような期待を持っているのかが理解しやすくなる。

例えば「仕事と家庭を両立しながら自己成長も続けたい」「毎日の生活を便利にして、自由な時間を増やしたい」などが、ユーザーのゴールの例である。このゴールを設定することで、製品がどのようにユーザーの役に立つべきかがはっきりする。

6. 生き生きとしたストーリー

「生き生きとしたストーリー」は、ペルソナの一日の生活や日常の中でどのように感じたり行動したりするかを具体的に描いたものである。このストーリーがあると、ペルソナがただのデータではなく、リアルな人物像として伝わりやすくなる。

btraxのデザイン思考研修では画像のようなテンプレートの形にして、右上「プロフィール」欄を穴埋めすることで、このストーリーを初心者でも簡単に作れるようにしている。こうしたテンプレートも活用しながら、必要に応じて要素を足したり、絞り込んだりしながら作成してみよう。

ペルソナのストーリーを作成するテンプレの例

ペルソナの作成・活用プロセス

ペルソナを作るには、ユーザーインタビューなどのリサーチで得られたデータに基づいて、特徴ある共通点をまとめ上げるようにするとよい。これにより実際のユーザーの行動や価値観に即したリアリティのあるペルソナが生まれる。

また、リサーチ結果が十分に集まる前でも、「仮のペルソナ」を作成することは有効だ。想像で作成した仮のペルソナは、実際のユーザー像を完全に反映するわけではないが、プロジェクト初期の段階でチーム全体が共通のイメージを持ち、方向性を揃えるための手助けとなる。

仮ペルソナを作成する際は、まずプロジェクトの目標や目的に沿って、ターゲットとする人物像を仮説として立てるところから始める。その後、インタビューで得た新しい気づきをペルソナに反映させ、精度を高めていくことが重要だ。

また、ペルソナが出来上がった時点で「完成」ではなく、継続的にインタビューなどでフィードバックを得て、適宜ペルソナを見直し、より正確でリアルなものにしていくプロセスが必要である。まるで自分の家族や親友を紹介するかのように、ユーザーを代弁して語れるぐらいに解像度を上げることを目標にしよう。

ユーザーインタビューの進め方については、下記の記事も参考にしてほしい。

ペルソナとセグメンテーションの違い

「たったひとりのユーザー」をターゲットにするペルソナの考え方に対し、「ビジネス規模が小さすぎるのでは」と懸念する企業もいるだろう。

そのために、セグメンテーションの考え方、つまり特定の属性や条件で市場を切り分けて、それぞれのグループに最も適したターゲットユーザーを設定するという方法を採用する企業も多い。

しかし、実はペルソナは異なるセグメントを超えて共通の価値観や目標を持ったユーザー像を描く手法なので、結果的にセグメンテーションでの考え方よりも広い市場にアプローチできる可能性がある。

セグメンテーションは属性を切り分けて「違い」に焦点を当て分類するのに対し、ペルソナは価値観や体験の「共通性」に注目する。

例えば、あるコーヒーメーカーが、単に「コーヒーを飲む20代男性」ではなく、「リラックスした朝の時間を大切にする人」をペルソナとして設定したとしよう。この場合、商品が単なる属性(性別や年齢)に依存せず、より多くの人々の共感を得やすくなる。

これにより、異なる年齢や職業、居住地に属する人々にも喜ばれる商品を作り出すことができる。

ペルソナの活用による効果

企業でペルソナの手法を採用することで、さまざまな効果が期待できる。

まず、ペルソナを活用することで、チーム内外でターゲットユーザーのイメージが直感的に共有され、効率的にプロジェクトを進めることができる。それにより、開発やマーケティングにおける戦略立案もより効果的になる。

また、ユーザーが持つ課題や目標を解像度高く理解できるようになるため、企業はより深くユーザーに共感し、ユーザーに響くサービスを生み出しやすくなる。

ペルソナの活用事例:Philips

実際に、ユーザーに愛されるヒット商品を次々生み出している企業でもこの手法が用いられている。オランダに本社を置くヨーロッパ最大の電機メーカーのフィリップス(Philips)がその例だ。フィリップスの電動シェーバー、“OneBlade”の事例を見てみよう。

Dutch Design Weekでの、フィリップスのペルソナ展示

この商品のペルソナは18歳の男の子、ブライアンだ。彼は、両親と暮らしながら忙しい生活を送っている。清潔感に強いこだわりがあり、身だしなみにも常に気を配っている。そんな彼が求めているのは、実用的でありながらもスタイリッシュでかっこいいシェービングツールだ。

商品コンセプト作成時のスケッチ

このペルソナをもとに開発されたのが、OneBladeだ。このシェーバーは、摩擦の少ない刃と肌を保護できる機構を採用しており、切り傷やかみそり負けを防ぐ。そのため、ブライアンのような若いシェービング初心者でも安心して使える​。

さらに、OneBladeは濡れた状態や乾いた状態でも使用でき、刃のカット速度も速いため、従来のカミソリよりも効率的に使用できる。そのため、忙しいスケジュールに合わせた実用的なシェービングツールを求めるブライアンにとって理想的である。

実際の利用イメージ

この商品は大ヒットし、2016年の発売以来、世界中で約2,700万のユーザーを獲得し、100万枚目の替え刃を生産するという大きなマイルストーンを達成している。

まとめ

このように、企業はペルソナを作成し、ユーザーリサーチを通じて解像度を高め続けることで、ユーザーに愛されるサービスを作り出すことが可能となる。

ペルソナを活用することで、企業はターゲットユーザーの深層心理を深く理解し、彼らに響く新規事業や商品開発、マーケティングを実現できる。

btraxでは、企業がターゲットユーザーを深く理解するためのユーザーリサーチの支援や、リサーチを基にした新サービス開発やマーケティング戦略の立案、実行までの伴走を行っている。

ユーザー理解を深めたい、効果的なペルソナを活用したいと考えている担当者の方々は、ぜひbtraxにぜひお気軽にお問い合わせください。

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