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ユニクロ定番「裏毛パーカ」のすごさ 裏生地の工夫に見るこだわり

ユニクロ定番「裏毛パーカ」のすごさ 裏生地の工夫に見るこだわり

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー
南 充浩

近々、来年3月までの3カ月予報が発表されるはずなので、3月の気温予報がどうなるのかに注目したい。

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ちなみに「平年並み」という表現だが、気象予報で使用する「平年並み」とは過去30年間の平均気温で、これとほぼ同等なら「平年並み」ということになっている。

さて、そんな久しぶりの「平年並み」の今冬は洗濯に頭を悩ませている。

暖冬は冬物衣料品が売れにくくなるという業界デメリットはあるものの、洗濯は乾きやすいというメリットもあった。また、人間が活動しやすいというメリットもある。何事にも必ずメリットとデメリットが同時に存在する。

平年並みの気温だと、分厚い生地の服は乾きにくい。我が家に乾燥機は無いから自然乾燥させるのみである。

それと天候的にも暖冬時に比べると、にわか雨が降ったり、曇りの日が多くなったりするため洗濯物が乾きにくい。平年並みの冬も不便な部分がある。

最近、何かと話題になったパーカーだが、いわゆるスエットパーカ―は防寒アウターの中に着る物として冬場は利用される。これはプルーオーバー、前開き両方ともにである。プルオーバーは正式にはフーディーと呼ぶ。

丸首Tシャツの上からフーディーを着たり、前開きスエットパーカ―を着たりして、その上から防寒アウターを着る人は少なからずおられる。

こうすることで、防寒アウターの襟裏に首筋の皮脂が付着することを避けられる。そうすると必然的にパーカーのフード裏が皮脂で汚れることになる。そのため、洗濯は必須になる。

ただ、綿100%裏毛素材のフーディー、前開きパーカーの洗濯には計画性が求められる。生地の厚さにもよるが中肉以上の厚さの裏毛は「平年並み」の冬の気温ではなかなか乾きにくい。

本体は乾いたとしても最大の難所は、フード部分である。フード裏にも表地と同様の生地が縫い付けられているため、単純に生地の厚さは2倍になる。そうなるとフード部分はかなり乾きにくくなり、気温や日差しによっては、2日間くらい乾燥しないこともある。

そのため、気温や天候の予報と照らし合わせながら洗濯する日程を決めるという作業が必要になる。

この洗濯への不便さを軽減しているのが、ポリエステル主体のダンボールニット素材のパーカー、フーディーである。ポリエステル主体なので、綿100%裏毛に比べるとはるかに乾燥しやすい。

最大の難所であるフード部分も半日もあれば自然乾燥している。

おまけに綿100%裏毛よりも軽いし、保温性もそれなりにある。さらに生地もふんわりと柔らかい。ダンボールニット素材が急速に普及する理由はここにある。消費者にとっては利便性が高い。

さらに、供給側からするとポリエステル主体なので、生地の値段も抑えやすい場合が多く、製造時のコストダウンも図りやすくてメリットがある。

そんなわけで両方に利便性があるため、ダンボールニットは急速に普及したと考えられる。

だが、一方で綿100%裏毛でないと我慢が出来ないという人もおられる。単にそういう嗜好だという人もおられるし、敏感肌なので合繊は極力避けたいという人もおられる。

当方も嗜好としては綿100%裏毛寄りなのだが、利便性を考えると最近はダンボールニットで構わないという考えになってきている。

そんな綿100%裏毛フーディー、前開きパーカー類の中にあって、洗濯したらフードが乾きにくいというデメリットを軽減しているのがユニクロである。

このデメリットに取り組んでいるブランドは、マス向けの中ではユニクロ以外に例を見ない。

これは他の方も言及されているが、ユニクロの定番ラインである綿100%裏毛フーディー、前開きパーカーのフード裏だけは素材組成が異なる。

今秋冬商品の素材組成だと綿61%・ポリエステル39%という組成になっている。ちなみに手元にある18年秋モデルだとフード裏の素材組成は綿60%・ポリエステル40%となっており、年度によって組成が少しずつ変わっていることがわかる。

(手持ちの18年秋モデルのフルジップパーカ)

だいたいポリエステルを4割前後混ぜることで洗濯してからの乾燥を速めていることがわかる。

だが、当方が感心をしているのはフード裏生地だけがポリエステル4割混なのに綿100%裏毛素材の本体との色ブレが無い点である。

ご存知の通り、綿とポリエスエルでは繊維が染まる温度が異なる。それゆえに綿100%の本体と同様に染めようとするのはけっこう難しい管理が必要になる。

黒とか濃紺みたいな濃色は比較的色合わせしやすいと思われるが、淡色系は色ブレしやすい。にもかかわらず、店頭で見た限りにおいては、淡色でも色ブレしていない。如実に色が異なる商品を見たことが無い。

これは結構すごい管理だと改めて思う。

さらに言えば、フード裏だけ別素材生地を使用しているということは、その分の生地を調達する必要がある。これはハッキリ言うとコスト増につながる。

もちろん、ユニクロ特有の大量生産によるコスト抑制効果は発揮されているだろうが、それでも別生地無しよりは製造コストを押し上げている。

ユニクロの通常ラインの裏毛素材については、その筋の専門業者からするとそんなにべらぼうに高い評価があるわけではないが、当方はフード裏生地への工夫と色ブレしない管理については、高く評価している。

この点においては、ユニクロの裏毛パーカーはすごいと思う。

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