今年のお買い物を振り返る「2024年ベストバイ」。12人目は、ライゾマティクスのファウンダーでStudio Daito Manabeを主宰するメディアアーティスト 真鍋大度さん。本企画3年ぶりの登場です。今年は大阪で開催した自身の大規模個展「Continuum Resonance: 連続する共鳴」をはじめ、Mutek バルセロナ、モントリーオール、メキシコの出演、アムステルダムのDekmantel Festivalの出演、Perfume結成25周年展のクリエイティブディレクション、坂本龍一の展覧会に向けたプロジェクトなど、例年に増して多忙な1年を過ごしたそう。国内外を飛び回っている真鍋さんに、スタジオ兼自宅で愛犬の"マメ"とともに、2024年のベストバイを振り返っていただきました。
目次
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Supreme × MM6 Maison Margiela ペイント キャンプ キャップ








FASHIONSNAP(以下、F):まずは、真鍋さんのベストバイに必ず入ってくる「シュプリーム(Supreme®)」から、「エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 Maison Margiela)」のコラボキャップ。いま被っているものですね。
真鍋大度(以下、真鍋):このブラックと、色違いでホワイトの2色を買ってから、毎日のように被っていたキャップです。


F:最初に見た時にはシュプリームと気付きませんでした。
真鍋:ですよね。フロント部分にボックスロゴがあるんですが、同色なので目立たないのが気に入っています。ロゴが主張し過ぎると場所を選ぶこともありますからね。このダブルネームは、フーディーとTシャツも買いました。
F:話題になったコラボですね。ひねりが効いているのがMM6らしいというか。
真鍋:ホワイトの方は、ペイントの雰囲気がブラックと全然違うのも面白くて。雑誌「マックファン(Mac Fan)」の表紙を飾らせていただいた時に被っていたのも、このキャップ。

F:真鍋さんはきっと帽子を大量に持っているんじゃないかと想像しますが、選ぶ時のポイントは?
真鍋:数えたことはないですが、もう手元にないモノを含めたら1000個以上は買っちゃってるかもですね(笑)。形はベースボールキャップが多くて、耳が隠れるやつも好きです。特にシュプリームのキャップは1995年ころから集めていて、ここ最近は年間だいたい10個ペース。このダルメシアン柄も一昨日届いたばかりのもので、せっかくだからこっちを被ってみようかな。

F:耳当て付きは珍しいですね。シュプリームのキャップの魅力は?
真鍋:昔はキャップの方がレアだったし、どこか切手集めと似た感覚というか。総数でいくと200〜300個以上は買っているかと思いますが、昔は原宿の路上にキャップを置いて、その場で交換したり売ったりもしていましたね。
F:シュプリームはいつも、レアなコラボ物もですけど、かなりユニークなものも過去に買っていますよね。鍵盤ハーモニカとか、ルアーとか、人体模型とか......。
真鍋:この間、自分で買ったシュプリームがいくつか家に届いて、その中に「これ何だっけ」というものが入っていたんですよ。とりあえず頭や首に巻いてみたりしてたのですが、どうにも納まり悪く......でも途中で思い出したんです。あ、犬のやつ買ったんだって(笑)。ちょっと着せてみましょうか。



F:あれ、マメちゃんあんなに元気だったのに、動かなくなっちゃいました。
真鍋:お気に召さないようで、固まっちゃうんですよ(涙)。やっぱダメか・・・着せてごめんね。

I Need You Baby シャツ、ジャケット、パンツ














F:続いては、スタイリストの三田真一さんがディレクションする「アイニーヂューベイベー(I Need You Baby)」。何着もありますね。
真鍋:毎日というくらい着ているから、完全に普段着です。でもキレイ目なので、発表会とか人前に出る時にも着られるんですよね。手に取りやすい価格なので、シャツは2色買いしたり。
F:いま着ているTシャツもそうですか?
真鍋:これもアイニーヂューです。犬の毛だらけですけど(笑)。ワンポイントで宇宙のモチーフとか、可愛いディテールが入っているのも良くて。
F:こちらのブラックの方はセットアップですかね。ジャケットはポケットが大きくて単品でも使いやすそうです。


真鍋:ポケットは大事。それに、僕の体型に合っているというか、着るとすごく良いラインになる気がします。あ、これセットアップになってないな......アイニーヂューの別のジャケットを持ってきちゃいました。仕事場に置いてきたかな。
F:それだけ愛用しているということですね(笑)。そもそも、三田さんとの出会いは?
真鍋:2010年ころにPerfumeの現場で初めて一緒になって、その後に「Spring of Life」のMVで光る衣装を作った時に仲良くなりました。それまで僕らの業界とファッション業界って少し距離がある気がしていたんですが、三田さんのおかげで縮まったというか。それからは、サカナクションの演出で一緒になったり、少しずつエンタメ系の領域の現場も増えていきました。
F:公私にわたって長いお付き合いなんですね。
真鍋:自分の衣装でスタイリングが必要な時もお願いしていて、あと、シンプルに飲み友です(笑)。
MOUNTAIN RESEARCH MT-48 コート











F:3点目はアウターですね。小林節正さんが手掛ける「マウンテンリサーチ(MOUNTAIN RESEARCH)」のモッズパーカ型のコート「MT-48」。
真鍋:少し前、三田さんに「アウターを探してる」と相談したら、10点も提案していただいて、その中でコレが良さそうだったので購入したら大正解でした。人に何かを紹介してもらうと、自分では選ばないものと出合えるのが良いですよね。程よく軍モノの雰囲気があって、フード部分にワイヤーが入っているから自由に形を作ることができるのが気に入っています。
F:安心の三田さんセレクトですね。ナイロン素材の機能性も高そうです。テック系のアウターは、真鍋さんのイメージにも合っているというか。
真鍋:扱いやすいものが良いし、やっぱり旅のことを考えると、どうしてもクシャッとできるものが多くなりますね。あと、犬の毛もつきにくい。
F:完全にパンデミック前の生活に戻った感じがしますし、モノを選ぶ時は移動や旅先でのことも考えるのでしょうか。
真鍋:昔と同じくらい旅するようになったので、その感覚は常にありますね。特に8〜10月は、ほぼ毎週末、海外に行っていたので。こっちのオレンジのブルゾンは、その頃に海外で買ったものです。





F:こんなに鮮やかなオレンジを選ぶなんて、ちょっと意外です。
真鍋:モントリーオールで行われていたMutekフェスティバルにいっていた時に街を徘徊していた際に発見したものです。お店もブランド名も、覚えてないですが(笑)。
F:調べてみたら、「ル カルテル(LE CARTEL)」というカナダ・モントリオールを拠点とするブランドのものですね。なぜ、この色を?

真鍋:普段だと裏方が多い仕事柄、黒ばかりなんですけど、気分転換に明るい色を買ってみようかなと思いまして。実際にこれを着るときは、普段とはちょっと心持ちが違うかもしれませんね。でも意外と、上に黒のアウターを重ねて羽織ると、差し色でいい感じになるなあと思ったり、発見がありました。
PALACE PORTER ウエストバッグ & RIMOWA バックパック

F:機能性といえば、バッグも重要ですよね。
真鍋:いまリアルに毎日使っているのが「パレス ポーター(PALACE PORTER)」のバッグです。斜めがけでボディバッグになるので、海外に行く時もこのタイプが便利ですね。パスポートを奥のポケットに入れたりできますし。





F:「ポーター(PORTER)」と「パレス スケートボード (PALACE SKATEBOARDS)」のコラボ。形はポーターの代表的なウエストバッグですね。使いやすさは間違いなさそうです。
真鍋:あと、パソコンなどは「リモワ(RIMOWA)」のバックパックに入れています。ここ何年か変えていなかったのを新調したんですけど、しっくりきましたね。これもかなりの頻度で海外に持っていきました。ちょっとおじさんぽいと言われたこともありますけど、どうなんでしょう(笑)。

F:いや、オールブラックでスマートなデザインですけどね。しっくりきたのは機能性ですか?
真鍋:はい。パソコン用のポケットがあって頑丈。何よりスーツケースにドッキングできるバッグが欲しかったんですよ。背面に幅広のゴムが付いているだけなんですが、これがスーツケースのハンドルに挿すのに便利で。正直、他のブランドさんにも真似してほしいくらいです。相澤さん(相澤陽介)の「ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)」とか、バッグに付けてくれないかな。


F:ちなみに、2019年のベストバイ企画に出ていただいた時に「物をよく無くす」という話がありましたが、まさか海外でも......?
真鍋:何度もありますよ(笑)。ショックなものだと、シュプリームと「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のコラボのポーチを長く使っていたんですが、ニューヨークのホテルのロビーで無くなりました。あの日はPerfumeの公演の準備で3日間くらい寝ていなかったんですよ。それで、ウトウトしているうちに。
F:海外慣れしている真鍋さんでも、やられるんですね。何か対策はしていますか?
真鍋:そんなにないですが、「アップル(Apple)」の「AirTag」が2021年に発売されてからは、全部の荷物とパスポートにつけています。あとはUSBドングルかな。去年も、Arcaの仕事でニューヨークにしばらくいたのですが、その時に「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」の財布をスられて、でもAirTagを辿ったら見つかったんですよ。現金だけ抜かれた状態で新聞ポストの中に捨てられていましたが、財布が戻ってきたので良かったです。
Iannis Xenakis 書籍とレコード








F:こちらの書籍やレコードは、すべて現代音楽作曲家・建築家ヤニス・クセナキス(Iannis Xenakis)の品々ですね。
真鍋:大学で数学を勉強していた時、偶然ヤニス・クセナキスの「音楽と建築」という本に出合ったんです。いわゆる、五線譜などの記譜法を使用せずに楽曲を視覚化した図形楽譜(図形譜)のパイオニアのひとりで、数学を駆使した作曲技法や音楽理論を確立したり、音と光を融合した没入型のインスタレーションを世界で初めて行ったり。それから、ル・コルビュジエ(Le Corbusier)の下で働いていたこともあって図形楽譜から発展させた建築を発表したりと、とにかく先見の明があった人ですね。

F:今年開催された真鍋さんの個展「Continuum Resonance: 連続する共鳴」でも、ヤニス・クセナキスについて言及されていましたが、なぜこのタイミングで?
真鍋:ある種、僕のルーツなんです。個展を開催する機会をいただき、キュレーターやアドバイザーの方と話し合ったところ、これまで音楽や数学にフォーカスされることが少なかったので、一度立ち返ることにしたんです。そして、過去と向き合った結果、まだやれることがあると思った中で行き着いたのが彼でした。








真鍋:僕が生まれる前に活躍していた人ですけど、当時は実現でき得なかったことが、今の技術では可能なことも多かったり、改めて研究したらやっぱり面白くて。これを機に、一通り集めたくなったんです。
F:見たところ、「音楽と建築」は何冊もお持ちのようですね。
真鍋:僕の人生に最も影響を与えた本なので、見つけるたびに買っています。人生のベストバイですね。
F:これらは、どのように集めたのでしょうか?
真鍋:クセナキスのレコードはまだコレクションの対象になっていないので、専門店で買えるものは一通り買って、あとはオンラインです。逆に本はなかなか見つからず、まずオンラインで探して、なかったらオークションで。今年だけで合計10〜20は増えたので、ほぼ買いそろえたと思います。今の時代、レコードを買わずともYouTubeで聴けますけど、手元にあると行為と結びついて記憶に残るし、一生モノですね。


F:真鍋さんはDJもされるので、このレコードもかけますか?
真鍋:かけません(笑)。ちょっと難解かもしれないから、DJには合わないかな。レコード自体は、ほかにもいろいろと買いましたけどね。
F:ちなみに、今年リリースの中でベストアルバムは何でしょう?
真鍋:タイラー・ザ・クリエイター(Tyler, The Creator)ですかね。8thアルバム「CHROMAKOPIA」はベストかも。僕はこれの元ネタも集めたりして楽しんでいます。彼はここ数年のアーティストの中では、一番の本物だと思いますね。

Speaker

F:次のベストバイも音楽つながりで、スピーカーです。
真鍋:坂本龍一さんが監修した「109シネマズプレミアム新宿」や「坂本龍一トリビュート展」などに携わっているサウンドデザイナーの佐藤博康さんという方がいらっしゃるのですが、僕の個展でもサウンドシステムのサポートをお願いしたんです。その時に使用していたスピーカーと全く同じモノを、新たにオーダーして作っていただきました。
F:それは相当、音が良さそうですね。どちらにあるのでしょうか?
真鍋:今年、都内に新しいスペースを作ったんです。ギャラリー兼アトリエスタジオのような場所で、そこに設置しています。名前は「フィル(fil)」で、フランス語で「糸」を意味するので、人やコミュニティーを紡ぐような場所になればと思っています。








真鍋:昔、西麻布に「スーパー・デラックス(SuperDeluxe)」というクラブがあったんですけど、いろいろなジャンルの実験的なライブやクラブイベントが開かれていて、あんな感じの場所になったらいいなぁと思っています。ここは非公開のプライベートスペースですが、よく海外のアーティストが僕を訪ねてきたりするので、東京の面白い場所としても使ってもらえたらなと。
F:そのスピーカーは、どんなスペックなんですか?
真鍋:1mを越すオーダーメイドで、低音8発と高音4発。DJモニターにも同じシステムで低音2発と高音2発。普通では考えられない低音域まで出せるので、聴いていると危機感を抱きます(笑)。金額的には相当投資したので、これは本当にベストバイにしないと(笑)。
ガジェット いろいろ

F:ラストはガジェットですね。エイブルトン(Ableton)の音楽制作ツール「ムーヴ(Move)」。ホームページには"直感的な音楽制作のためのポータブルなガジェット"と書かれています。
真鍋:これは本当に直感でイジれるのでおすすめです。充電式で、スピーカーが内蔵されているスタンドアロン型なのも良いですし、パソコンでガッツリ制作する前のスケッチにはぴったりですね。ちょっとやってみましょうか。こうやって、音を重ねていって......。


F:即興で音楽が作れるんですね! これは楽しそう。
真鍋:同じような感じで、こっちはシュプリームから出ていたシンセサイザー「JU-06A」とリズムコンポーザー「TR-08」。ローランド(Roland)という日本の電子楽器メーカーが作ったものです。
F:真鍋さんにぴったりなコラボじゃないですか。使い心地はどうですか?


真鍋:こちらはおもちゃ的に使っているので、今のところメイン機材として音楽制作することはなさそうですが、オリジナルが発売された1980年代当時は世界で主流だったプロ機材の一つなんですよ。なので機能は充実していて、しかも持ち運びできる。
F:最後にこちらは、アップルのゴーグル型ヘッドマウントディスプレイ「Apple Vision Pro」。今年ようやく日本に上陸しましたね。

真鍋:かなり性能が高くて、音質も良いんです。これでDJもできるので、やってみましょうか。

F:ヴァーチャルのDJブースでプレイできるんですね!
真鍋:今年、3D⾳響ソフトウェア「PolyNodes」のヴィジョン プロ版をリリースしたんですが、それもヤニス・クセナキスからインスピレーションを受けたものなんですよね。簡単に言えば、空間オーディオを活用したシンセサイザー。開発までに1年近く要していて、ヴィジョン プロのアプリの中では一番複雑かも。
PolyNodes:https://www.sonic-lab.com/polynodes/
今年の買い物を振り返って

F:今年のお買い物を振り返ってみて、いかがでしたか?
真鍋:やっぱり今年は個展を開いたことが大きくて、そのために機材やレコード、資料、書籍を買ったり、空間や音楽が動機の中心にありましたね。服については、好きなスタイルは基本変わらないので、また同じようなモノを買っていると言われがちなんですが(笑)。
F:戻ってきた旅の習慣もそうですし、パンデミック以降ではモノを購入する機会が増えた年だったのではないでしょうか。
真鍋:全般的にそうですね。旅を意識して買うことも多かったです。あとは、機材の当たり年だったので、財布に厳しい1年でした(笑)。
F:最後に、いま狙っているものや、2025年にやってみたいことは?
真鍋:「フィル」という場を作ったので、それに付随したインテリアや小物が増えそうですね。あとはお酒。僕は飲んでいるだけの立場でしたが、提供する側も興味があって、リサーチしています。オリジナルのビールとか、作ってみたいですね。
■真鍋大度
1976年東京生まれの真鍋大度は、音楽家の両親のもと、音楽とプログラミングに親しんで育つ。DJやジャズバンド活動を経て、東京理科大学で学んだ際にXenakisに影響を受け、音楽生成における数学的アプローチの研究を始め、これが後の創作活動の基盤となる。
2006年にライゾマティクスを設立。演出振付家MIKIKOと共にPerfumeとELEVENPLAYのコラボレーションを通じて、テクノロジーと身体表現の融合を探求し、リオ五輪閉会式のAR演出など革新的なプロジェクトへと発展。坂本龍一、Björk、Nosaj Thing、Squarepusher、Arca等との協働も多数行い、その独創的なAudio Visualパフォーマンスは、Sonar Barcelonaをはじめとする世界各地の国際フェスティバルで発表されている。近年は神経科学者との協働を通じて、培養神経細胞を用いたバイオフィードバックシステムなど、生命と機械を融合する作品を制作。現在はStudio Daito Manabeを主宰し、アート・テクノロジー・サイエンスを横断する表現を追求している。 DAITO MANABE:公式サイト
photography: Harumi Obama
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