今年のお買い物を振り返る「2024年ベストバイ」。10人目は、1994年にオープンした原宿の老舗ロカビリーショップ「ジャンピン ジャックス(Jumpin'Jacks)」でオーナーを務めるエロヴィス佐藤さんが初登場。1950年代のロカビリーカルチャーに造詣が深く、その幅広い知識を活かして復刻アイテムのディレクションなども行い、「ロカビリーは、自分の生き様」とまで話すエロヴィス佐藤さん。そんな彼が、今年買って良かったモノとは?
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SUGAR CANE DENIM 1955Z MODE
FASHIONSNAP(以下、F):1点目は、東洋エンタープライズが展開するデニムブランド「シュガーケーン(SUGAR CANE)」のデニム「1955Z モデル」です。
エロヴィス佐藤(以下、佐藤):これは、1950年代中期に発売されていた「リーバイス(Levi's®)」の「501ZXX」がベースだから、ボタンフライではなくジッパーフライなのが特徴だね。
F:今年買ったベストバイとして紹介していただいていますが、相当のアタリがありますね。
佐藤:毎年、年明けにリジットデニムを下ろすのがマイルールで、1年に1本のペースで育てているんだ。この状態にするには、毎日穿くことが大事。いや、朝から晩まで1日中だね。23時間くらい穿いていた日もあったよ。あと、洗わないことも重要で、これは半年間洗わなかったね。でも、味噌汁をこぼしちゃったから仕方なく洗ったんだ(笑)。ちなみに、今まで育ててきたやつは俺の人生の作品として保管しているよ。
F:ということは、夏場もデニムを?
佐藤:もちろん!俺には関係ないね。40年近く真夏でもデニム&ブーツのスタイルだからな。生活の一部というか体の一部。このデニムは、もう俺の下半身の分身みたいなものだよ。
F:佐藤さん的には、どのアタリが一番のポイントですか?
佐藤:やっぱり、デニムの顔とも言われるヒゲ(太腿上の色落ち)だね。あとは、このハチノス(膝裏の色落ち)は常人では出せないと思うよ。
F:同じようにデニムを育てたい場合、どうすればよいのでしょうか?
佐藤:とにかく、ジャストサイズのリジットデニムを選んで3ヶ月は穿き続けて洗わないこと。硬い状態で穿いてこそ、その人だけのシワができるから我慢だ。もし臭うようだったら、ファブリーズを使っても全然OK。洗う目安は、ヒゲ落ちが出始めたら。干すときは、日焼けしないように裏返すこと。俺の場合、裏返し状態だったら太陽にも当てちゃってる。今は、リジットデニムを洗ったら縮むことを知らない人が多いから、ウチではワンウォッシュしたものを用意して、それを試着してもらっているんだ。ワンウォッシュでジャストなサイズのリジッドデニムを買えば間違いないぜ!
1950s ヴィンテージ デビルドッグブルゾン
F:2点目は、1950年代のヴィンテージブルゾンですね。
佐藤:これは、スコーピオンとも呼ばれるアズテック柄(ネイティブアメリカンの伝統的な柄)のデビルドッグで、1950年代のブルゾンの中ではキング的な一着。ギャバジャン(ギャバジン素材のジャンパー)だとアーガイル柄が一番ポピュラーで、サンダーバードも人気があり、そこにデビルドッグを加えたのが3トップだ。そもそもデビルドッグを好きになったきっかけは、THE MODSの森山達也が1982年のライブ(通称:雨の野音)でグレー×ピンクのものを着ていたから。ただ、デビルドッグはヴィンテージ市場にはほとんど現れない。グレー×ピンクはたまに見かけたけど、ブラック×レッドの配色のものは30年以上この業界にいて、アメリカ全土を回ったこともある俺ですら、これで2つ目。それくらい希少なんだ。柄が縦位置のバージョンもあるんだけど、胸の高い部分に横位置でデザインされているところがポイントだね。
F:1つ目は、店内に飾られているものですか?
佐藤:そうそう。20年くらい前にアメリカで購入したやつで、新たにゲットしたから手放すことにしたんだ。どちらも70年近く経っているのに発色が素晴らしい。1950年代のアイテムは、今はない顔料を使っているからか発色が落ちず、生地が色焼けしてもプリントは色焼けがしにくいのさ。
F:今回のブルゾンは、どちらで手に入れたのでしょうか?
佐藤:夏ごろに池袋のヴィンテージショップ「ハンドレッド バイヤーズ(Hundred Buyers)」から入荷の連絡があって、すぐに飛んで行ったよ。3桁万円の大台だったけど、清水の舞台から飛び降りる気持ちで買ったね。
F:昨今、ヴィンテージ市場は価格が急騰していますよね。
佐藤:少し前までは、「値段が下がったら買おう」とか「もう少し様子を見よう」という買い方ができたけど、今は待っていられない。株価のように、ヴィンテージも毎秒価値が変動しているんだ。それでいて、ヴィンテージは株と違って基本的に価値が下がることはない。だから、投資家が超優良株としてヴィンテージに目を付けているんだよ。その中でも、リーバイスがNo.1かな。リーバイスの価値が下がることは、ヴィンテージ市場では絶対にありえないこと。仮に著しくブランドイメージが下がったとしても、ヴィンテージアイテムには影響がないからな。
F:ということは、デビルドッグのブルゾンも相当値上がりしてしまったと。
佐藤:1つ目と比較すると、10倍くらい上がったんじゃないかな。1990年代の時点で、サンダーバードでも600ドルとかだったよ。まぁ、365日デニムの俺からしたらデニムに合うアイテムも必須になってくるわけで、そういう意味ではブルゾンは相性が抜群だし着る機会も多いから最高だよ。
The Groovin High × Jumpin' Jack's 光龍シャツ
F:続いては、「ザ グルービン ハイ(The Groovin High)」と「ジャンピン ジャックス」のコラボレーションによるシャツですが、こちらはヴィンテージを復刻したアイテムだそうですね。
佐藤:これもモリヤン(THE MODSの森山達也)の影響だね。1996年にリリースされたアルバム「ZA MOZZ」のジャケットで彼がオリジナルの光龍シャツを着ているんだよ。それで、なんとかヴィンテージを数枚手に入れたはいいものの、着ているとどうしても傷んでしまう。それが嫌で、数年前にザ グルービン ハイとのダブルネームで同色の光龍シャツを復刻したんだけど、リピーターが多かったから今年も作ったんだ。自分が欲しいものは、自分で作って、自分で買う!
F:そもそも光龍とは一体?
佐藤:1950年代のアメリカは、和柄やチャイニーズ柄などのオリエンタルなアイテムがブームだったんだよ。おそらく、日本が戦争に負けて占領下だったから、日本産の生地が安く手に入ったりしたことが原因だと思うな。その過程でハワイアンシャツが生まれたし、スカジャンがスーベニアジャケットと呼ばれるのも、米兵がお土産で家族のために買って帰るから。そういうわけで、光龍は東洋の文化がアメリカに渡った中で生まれた柄のひとつってわけだ。そして、俺たちは東洋人だから、こういった柄に反応してしまう。特に光龍は、不思議と人を虜にしてしまう柄なんだよ。
F:噂では、運気が上がる柄と言われているそうですね。
佐藤:少なくともウチでは「金運が上がるシャツ」として売っている(笑)。光龍はシャイニングドラゴンだから、いわゆる龍神。着ていると文字が言霊となり、龍神様が降りてきて金運が爆上がりってワケ。アメリカには縁起を担ぐ文化があるから、「Lucky」や「Peace」、「Love」なんかデザインされた洋服が多いんだよ。ベトジャンの胸に「福」の文字が多いのも、「君に幸あれ」とか「ご武運を」的な意味が込められているから。やっぱり、幸せな言葉が書いてある洋服を着た方が、不思議と幸せが舞い込んでくる。声をかけたら植物が元気に育ったり、愛情を込めて作った料理が美味しくなるのと一緒だな!
F:なるほど!今後、復刻の予定は?
佐藤:大量生産をしてしまうと意味がないから、これは12枚限定で作ったんだけど、また来年違う配色で作るかも?お楽しみに!
STYLE EYES エルヴィスドット コーデュロイシャツ
F:4点目は、東洋エンタープライズが手掛ける「スタイル アイズ(STYLE EYES)」と佐藤さんが制作したコーデュロイシャツです。
佐藤:これは、俺が「エルヴィスドット」と名付けたオーバル柄を落とし込んだコーデュロイシャツで、その名の通りエルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)が関係しているんだ。
F:というと?
佐藤:これ、エルヴィスのデビューアルバムのレコードなんだけど、裏を見るとドット柄のシャツを着ているのが分かる。ただ、これ以外の写真はほとんどなくて、カラー写真もないから素材すら分からない。それでも必死に探し回る中で、同じものと思しきシャツが2つ出てきた。1つは、「タウンクラフト(TOWNCRAFT)」のオープンシャツで、もう1つは「キャンパス(CAMPUS)」のプルオーバー。そして、エルヴィスは前を開けて着ているし、プルオーバーは腕部がレーヨンで切り返しになっているから、エルヴィスが着たのはタウンクラフトのもので間違いない。それを何年もかけてスタイル アイズと完全復刻したんだ。
F:そんな背景があったんですね!
佐藤:エルヴィスドットのシャツは、2010年からスタイル アイズと作り始めて、これまで何度も発売してきたんだけど、今回のは一番最初に作ったピンクカラーを14年ぶりに手直ししたもの。ここまでエルヴィスドットにこだわっている人間は、世界中探しても俺以外いないはずだ!
F:やはり、こちらもヴィンテージは値上がりがすごそうですが。
佐藤:世界中の人が探しているからな。この間、7カラーがまとめて680万円で売られていたよ。だからこそ、復刻版を作る必要があると思っている。若い人が無理して1枚100万円で買ったり、買えないで辛い思いをするなら、オリジナルを持っている俺が高い再現度で復刻版を作れば良い。次は、2026年がエルヴィスのメジャーデビュー70周年だから、その時に発売する予定だ。
LONE WOLF ペコスブーツ
F:ラストも、東洋エンタープライズが展開する「ロン ウルフ(LONE WOLF)」のペコスブーツですね。
佐藤:もともとはエンジニアブーツが大好きだったんだけどね。普通に生活していると先に入ってる鉄板が重いし、バックルが結構邪魔でちぎれることもあるんだよ。その点、ペコスブーツは履きやすいし、どんなアイテムにも合わせやすいから、最近はペコスブーツばっかり。もちろん「レッドウィング(RED WING)」のペコスブーツも大好きだね。その中で、ロン ウルフのはエンジニアブーツのシルエットっぽくて良いんだよ。
F:どこで購入されたんですか?
佐藤:これは15年前のもので、偶然ネットで見つけたんだ。しかも、新品・箱付きのデッドストック。ロン ウルフはもうペコスブーツを生産していないんだけど、まさかこんなものがまだ眠っていたとはね。ちなみに、ロン ウルフのエンジニアブーツは古着でも何足か持っているよ。
F:先ほど、ほぼ1年ブーツを履いているとおっしゃっていましたね。
佐藤:表に出る時は、ブーツ一択。スニーカーで電車に乗ったことは、もう思い出せないね。スニーカーを履くのはランニングする時くらいだね。
今年の買い物を振り返って
F:5つのベストバイをご紹介いただきましたが、いかがでしたか?
佐藤:まず、デビルドッグは人生のベストバイでもあるからすぐに決まったね。他の4つは、今朝普段使っているワードローブの中を見て選んだよ。
F:佐藤さんがお好きな1950年代のアメリカというと、「チャンピオン(Champion)」のリバースウィーブに代表されるカジュアル系のアイテムも人気ですよね。
佐藤:俺は1950年代のロカビリースタイルに特化しているからな。自分の好きなもの以外、周りに置いておくことすらしないタイプなんだ。店を見てもらえれば分かるだろ?
F:最後に、2025年に狙っているアイテムがあれば教えてください。
佐藤:状態の良い軍モノを買い直したいかな。やっぱり軍モノってダメージがあるものが多くて、この間、久しぶりに自分の軍モノシリーズを整理していたら、状態がイマイチだと思ってしまってね。好きなのはB-15で、実はさっきまでG-1も着ていたんだよ。まぁ、昔はジャンクでも良かったんだけど、年を取ると綺麗なモノが欲しくなっちまうんだ(笑)。
■エロヴィス佐藤
ロカビリーショップ「ジャンピン ジャックス」オーナー。50sカルチャーを追求し続けて早40数年、原宿を中心に次世代へロカビリーとヴィンテージの魅力を繋ぐ伝道師としても活躍している。
ジャンピン ジャックス公式インスタグラム:@harajuku_jacks
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