2024年秋冬オートクチュールコレクション
Image by: (左より)FENDI、BALENIAGA、VALENTINO、CHANEL、DIOR
2024年秋冬シーズンのパリ・オートクチュールコレクションが7月3日から5日(現地時間)まで開催され、32ブランドがフィジカルなショーを発表した。神話のような世界を描いた「ディオール(DIOR)や、パリジェンヌの魅力にフォーカスした「シャネル(CHANEL)」をはじめ、伝説的モデルが登場した「バレンシアガ(BALENCIAGA)」、壮大な城を舞台にした「ヴァレンティノ(VALENTINO)」、ハイジュエリーを主役にした「フェンディ(FENDI)」など、見どころ満載の新作発表を振り返る。
「ディオール」神殿に現れた、現代の女神たち
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マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)が手掛ける「ディオール」のショー会場はロダン美術館。アーティストのマルタ・ロベルティ(Marta Roberti)が女神や動物たちの刺しゅうをタペストリーに装飾し、ランウェイをアートギャラリーへと一変させた。キウリはロベルティの言葉やアプローチにインスピレーションを得て、フェミニニティの強さと儚さを女神像に投映した。
ギリシャ・ローマ神話を再読する
ファーストルックは、ダブルフェイスの白いケープとドレス。ギリシャ・ローマ神話に登場する女神を現代的に再解釈した、クラシックなスタイルだ。今回のコレクションは紙のパターンを使用せず、スケッチを元に身体の特徴を捉えながらフォルムを作り上げているのも特徴。カラーにはホワイト、ベージュ、シルバー、ペールゴールが用いられ、女神の聖衣やサンダル、彫像や円柱の溝彫りを想起させるルックも登場した。
Image by: DIOR
刺しゅうにはパールがふんだんにあしらわれ、シルバーの糸に織り込まれることで虹色の輝きを演出。タイトに編み上げたヘアスタイルも絵画や彫刻で表現される女神像を彷彿とさせる。会場にはメゾンのアンバサダーを務めるナタリー・ポートマン(Natalie Portman)や女優のロザムンド・パイク(Rosamund Pike)らも来場し、神秘的な世界観を堪能した。
パリジェンヌの魅力を反映した「シャネル」
ヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)が手掛ける「シャネル」は、セーヌ川のほとりでショーを開催した。ティーザー映像にはヴァネッサ・パラディ(Vanessa Paradis)が、ファーストルックには、ブランドアンバサダーを務めるカロリーヌ・ド・メグレ(Caroline de Maigret)が登場するなど、フランスのアイコンたちを大きくフィーチャー。
今回のテーマは「パリジェンヌのアリュール」。ヴィルジニーは「(彼女たちは)感情を伝え、最も意外な要素を組み合わせ、自分らしくふるまい、ただ夢を見ている」とその魅力を語る。ラブラドールを連れたモデルも登場し、パリジェンヌの装いやライフスタイルを、パステルピンクに彩られた石畳のランウェイで再現した。
花いっぱいのバスケットを手に
モデルたちが手にしていた刺しゅう入りのフルーツバスケットは、1970年代のパリジェンヌが好んだ籐のバスケットへのオマージュ。花柄やグラフィックモチーフのヴィヴィッドな組み合わせや、ピンストライプのパンツやウエストコートといったメンズライクな要素も取り入れられた。フィナーレにはエルトン・ジョン(Elton John)とフランス・ギャル(France Gall)のデュエット曲が流れ、モデルたちが手を繋いだり、腕を組んだりしながらにこやかにパレードした。
Image by: CHANEL
レジェンドモデルを起用した「バレンシアガ」
「バレンシアガ」の会場は、ジョルジュ・サンク通り10番地のサロン。ここは創設者であるクリストバル・バレンシアガ(Cristóbal Balenciaga)が1937年にメゾンのクチュール店舗をオープンした場所だ。マリア・カラス(Maria Callas)のオペラに合わせてファーストルックで登場したのは、クリストバルが1964~1968年に好んだモデル、ダニエル・スラヴィック(Danielle Slavik)。着用していたドレスも、当時のデザインに再解釈を加えたものとなっている。
ほかにも、フランスを代表する国際派女優のイザベル・ユペール(Isabelle Huppert)、大御所モデルのイネス・ド・ラ・フレサンジュ(Inès de la Fressange)、ロシアの女優で映画監督のレナータ・リトビノワ(Renata Litvinova)など、レジェンド級の女性たちが次々と登場。テーマは「パーフェクションを追い求めることへの敬意」とコレクションノートには記されていた。
ダニエル・スラヴィック
Image by: Courtesy of Balenciaga
3Dプリントで作られた甲冑ドレス
だがメゾンのレガシーを振り返るだけでなく、デムナ(Demna)ならではのアバンギャルドなスタイルも提案された。特に目を引いたのは、風に吹かれた状態のまま固まったカシミアマフラーやアウター。これは丸2日をかけて彫刻されており、生地を補強する裏地が接着されているという。また、フィナーレに登場したジャンヌ・ダルク風の甲冑ドレスもインパクト大。3Dプリントされた鎧と亜鉛メッキ樹脂で作られ、内側には黒いフロックのコーティングが施されている。過去と現代の技術を融合した斬新なクリエイションが観客を驚かせた。
なお、セレクトされたショーピースをパリのクチュールストアと公式サイトで展開中。サイトでの問い合わせを受け付けるのは、ブランド初の試みとなる。
「ヴァレンティノ」のシンプルさと複雑性
「ヴァレンティノ」は「Un Château(ある城)」をテーマに、パリ郊外のシャンティイ城(Château de Chantilly)でコレクションを発表。モデルたちは騎士像のある階段から登場し、広大な庭園に設置された白いランウェイを一周した。コレクションノートには、彫刻家コンスタンティン・ブランクーシ(Constantin Brâncuşi)が遺した言葉「Simplicity Is Complexity Resolved(シンプルとは、複雑さを解消したものである)」が引用された。
ファーストルックでカイア・ガーバー(Kaia Gerber)が着用したのは、ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)が得意とするホワイトシャツ。合わせているのはヴィンテージの「リーバイス® 501」かと思いきや、実はインディゴブルーのビーズでデニムの質感を再現したものだ。ほかにも、巧みなカッティングやドレープで魅せるホワイトドレスのバリエーションなどが登場し、精緻な技術に裏打ちされたシンプリシティを表現した。
主張をプラスするアクセサリー
アクセサリーで印象的だったのは、大ぶりのシャンデリアピアス。メゾンのシグネチャーであるボウをあしらったフラットシューズや羽の装飾などもアクセントに。フィナーレではピッチョーリがアトリエのチームを引き連れて登場し、大きな拍手を受けた。会場には出産後初の公の場となったソン・イェジン(Son Yejin)の姿もあり、池畔に建つ城を背景に華麗なコレクションを堪能したようだ。
「フェンディ」は身体と宝石の戯れを表現
キム・ジョーンズ(Kim Jones)が手掛ける「フェンディ」は、パレ・ブロンニャール(Palais Brongniart)の名で知られる旧パリ証券取引所を会場にショーを開催した。白い空間に設けられた大理石のランウェイに、バロック音楽を取り入れたサウンドトラックが響き渡る。コレクションのテーマはジュエリー。フェンディ ジュエリー アーティスティック ディレクターのデルフィナ・デレトレズ・フェンディ(Delfina Delettrez Fendi)が手掛けるハイジュエリーからインスピレーションを得て、宝石の色合いや輝きを反映したイヴニングウェアを提案した。
流動的なフォルムと宝石のきらめき
モデルたちは宝石箱のようなミノディエールを胸元に掲げるようにして歩く。ドレスはいずれもなめらかで軽く、優美なドレープが彫刻のようなフォルムを作り出す。ジュエリーはフェンディの「FF」のモチーフを取り入れたデザインで、ホワイトとイエローのダイヤモンドを主役に、グリーン、オレンジ、ピンクのパパラチアサファイア、スピネルも用いられた。特に「フェンディ ウンダルム(FENDI Undarum)」セットに含まれるピンクスピネルは、40年がかりで集められた貴重なものだという。
会場にはジャパンブランドアンバサダーを務める川口春奈をはじめ、カーディ・B(Cardi B)、シャキーラ(Shakira)やカミラ・カベロ(Camila Cabello)らも来場し、オートクチュールならではの贅沢なコレクションを楽しんだ。
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