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【コラム】成長や学びを促すなら「コンフォートゾーン」からの脱出が不可避

【コラム】成長や学びを促すなら「コンフォートゾーン」からの脱出が不可避

在米28年のアメリカン流通コンサルタント
激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

■「コンフォートゾーン(comfort zone)」とは、精神的負荷やストレスがなく居心地の良い環境のことを意味する。

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comfortとは「快適」という意味を持ち、zoneは「領域」という意味であるため「快適領域」とも訳される。つまりその人にとって慣れ親しんだ快適な領域のことだ。

筆者が主催する流通視察は、このコンフォートゾーンから積極的に出ている。

直近の研修でいえばチェーンストア最大手のウォルマートでネットスーパー注文したり、視察先の移動にグーグル傘下のロボタクシー(自動運転車)を使ったり、ウォルマートのドローン宅配に挑戦したりすることだ。

他にも参加者の朝食やランチでモバイルオーダーし、サムズクラブのスマホレジであるスキャン&ゴーで買い物したり、AI搭載のスマートカートでの買い物も行う。

10年前の流通視察のような朝に講義し、その後は視察先の売り場を見て回り、移動中にはポイント解説、一部に店長インタビューをおこなうような内容とは大きく変化している。

言い換えればコンフォートゾーンから出ることは変化を意味するのだ。

しかし快適領域から出ることは、煩わしさや手間がかかる不快さを受け入れることになる。

具体的に言えば研修前からネットスーパー注文を繰り返し、自らロボタクシーに乗車し何度もリハーサルを行い、ドローン宅配ではひとりダラスに飛んで、ドローンオペレーターに話をつけておくことだ。

手数がかかる労力に多くの時間を使うだけでなく、自ら支出するような自腹をきることになる。

変わり続けるアメリカ流通業をフォローする視察研修を行うにはコンサルタント自らがコンフォートゾーンから抜けでる必要があるのだ。

コンフォートゾーンの外側にあるのは「フィアゾーン(fear zone)」と言われる領域だ。英語のfearとは「恐怖」を意味する。

コンフォートゾーンを抜けるには、居心地が悪い不快な「恐怖領域」を通らなければならない。

何か新しいことを始めるときは、不確定要素であるリスクをとることになるため誰もが不安になり「失敗するのでは?」という恐れを抱くのだ。

しかも実際に失敗は起きるし、何度も不愉快な失敗をすることにもなる。しかし恐怖領域にある不安定な感情と向き合いながらも失敗から多くを学ぶことになる。

つまり地道に一歩ずつ前に進むことを繰り返しながら恐怖領域を通りぬけるとそこには学びの領域となる「ラーニングゾーン(learning zone)」がある。

面白いことに初めは不安だったことも新しい学びや経験を得心することで、気づけばラーニングゾーンが新しいコンフォートゾーンに変わっているのだ。

コンフォートゾーンから不快なフィアゾーンを何度も通っていると成長領域を意味する「グロースゾーン(growth zone)」となる。

不安やストレスの耐性がつき、失敗やリスクも以前ほど不快でなくなり、自分の限界に果敢にチャレンジする力を身につけることになるのだ。

学びの領域に入っていると自然と変化することになる。アメリカ流通業はまさにグロースゾーンにある。

未知の領域である恐怖領域を通ることが習慣化し、何度も失敗しながらラーニングゾーンを反復して気づけばグロースゾーンだ。

激変するアメリカ流通業に呼応して当社の流通DXワークショップ研修も内容を大きく変化させているのだ。

 一方でアメリカから見れば、あまり大きく変化していないのが日本の流通業だ。先日、日本の大手ディスカウントスーパーのオーケーが関西出店を果たしたことが話題になっていた。

筆者は在米だがYouTubeにアップされたテレビ・ニュース等の「関西スーパー戦国時代」をいくつか視聴した。

しかしそこで感じたのは文字通りの戦国時代。つまり「いいものをより安く」の"いにしえ"の戦い方だ。

抽象化すれば、10年前にも流せるニュースだ。

これらのニュースを見ながらアメリカの自動車王として知られるヘンリー・フォード氏の「もし人々に何がほしいかと聞いたら、彼らはもっと速い馬がほしいと答えていただろう」という言葉を思い出した。

いいものをより安くという速い馬があてがわれているだけで、自動車というイノベーションがない。

したがってお客から「(とても安かったので)2万円も購入しました!」の声も「なんて不便な!」との印象を持ったのだ。

間違いなく関西スーパー戦国時代の渦中にいる現場の人は「一生懸命やっています」と言うだろう。しかし筆者には"一生懸命"馬を速く走らせているように映る。

 彼らがコンフォートゾーンを出るということは、当時の自動車である流通DXに挑戦するということになる。

いきなり何億にもなるデジタル化に着手せよというのではない。デジタル先進国のアメリカ流通業、すわなち先人から学べばいいのだ。

グロースゾーンにいるアメリカ小売業に触れていれば恐怖領域の見え方が変わる。誰もが流通DXを学んでいないなかでラーニングゾーンに入りやすくなるのだ。

トップ画像:テキサス州ダラス・フォートワース地区の流通視察では事前にダラスに行きレンタカーしてワークショップ研修用に準備を行った。講師役であるコンサルタントが煩わしさや手間を受け入れなければアメリカで流通DXの視察は不可能だ。

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