■チェーンストア最大手のウォルマートは3日、スマートテレビメーカーのビジオの買収を完了したことを発表した。
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2月に発表された23億ドル(約3,450億円)の買収により、ビジオのオペレーティング・システムを生かしながらウォルマートはリテール・メディア・ネットワーク(RMN)を強化し広告事業をさらに拡大する。
ビジオのスマートキャスト(SmartCast)オペレーティング・システムのアクティブ顧客数は1,900万人以上となっており、2018年からは400%成長している。
ビジオを傘下に収めたことでウォルマートが全米テレビ市場シェアの5分の1以上のシェアを獲得するだけでなく、ウォルマートの広告事業をRMNで飛躍的に拡大することにもなる。
ウォルマートの収益にとって、広告事業はますます重要なものになってきている。
ウォルマートのグローバル広告事業は直近の決算で過去最高となる前年比28%の成長を遂げた。ウォルマートの広告代理店事業「ウォルマート・コネクト(Walmart Connect)」は国内で26%の成長を果たしているのだ。
ウォルマートCFOのジョン・デビッド・レイニー氏は6月、バンク・オブ・アメリカの投資家向けイベントで「テレビなどのハードウェアの利益率は現在、一般的にいってかなり低い」と語っていた。
同時に「そこで稼がれている利益の多くはソフトウェアの部分」と話していたのだ。
実際ビジオの広告事業である「プラットフォーム・プラス(Plathorm+)」はビジオのほとんどの利益を占めている。
しかも同氏は第3四半期の決算声明で広告から得られた利益はウォルマートの総営業利益67億ドルのほぼ3分の1まで成長したと説明。ウォルマート・コネクトを立ち上げてわずか3年という短い期間で達成している。
ビジオ事業を統合したことで広告から得られる利益は数年先、全世界に展開する実店舗の利益を上回るのだ。
なおリテール・メディアとは大手チェーンストアなど小売店が保有する商品の販売データや消費者の顧客データなどを活用し、実店舗からECサイトまで広告を配信する仕組みの総称を指す。
オムニチャネル・リテーラーとなったウォルマートがリテール・メディアを手掛けながらテレビ・メーカーまで手中に収めたことで、ウォルマートのリテール・メディア網がさらに強化されることになる。
今後、ビジオを介してテレビ番組を見る人が増えれば増えるほど、同社は多くの商品を売ることができるようになる。なぜなら視聴習慣やショッピングの好みに関する顧客データに直接アクセスできるようになるからだ。
収集された情報は広告のカスタマイズ、製品提供の強化、パーソナライズされたショッピング体験の作成に使用可能となる。
確実に言えるのはビジオのテレビが安くなる分、ウォルマート広告が大量に表示される可能性は否定できない。それでもウォルマートは広告メディアに対しては慎重にならざる得ない。
常に社会の矢面に立たされてきたウォルマートは消費者からの声に神経を研ぎ澄ましているからだ。大量に広告が表示されても不快にならないものになる。
例えばウォルマートの直近のコマーシャルだ。
2000年~2007年まで放送された人気テレビドラマ「ギルモア・ガールズ(Gilmore Girls)」の出演者を集めたコンテンツになっている。他にも黒人たちの恋愛模様を描いた1996年の映画「ラブジョーンズ(Love Jones)」の出演者を起用したものもある。
日本のテレビドラマで例えるなら大手小売チェーンが「不適切にもほどがある!」の出演者を集めたコマーシャルになるだろう。
阿部サダヲや仲里依紗等の登場人物が例の喫茶店で「令和における不適切な表現について注意喚起する注釈テロップ」を入れながらも会話するだけの内容になるかもしれない。
ドラマ内ではお約束となったミュージカルシーンもあれば「懐かしい!」と思われるだろう。
筆者の場合なら、松雪泰子主演の「マザー」で成人した芦田愛菜と一緒にでてくるシーンならコマーシャルとわかっていても画面に釘付けになりそうだ。
木村拓哉と山口智子の名作ドラマ「ロングバケーション」でも「あれから30年」と入れて二人の何気ない日常風景を映せばコマーシャルらしくなくなる。
武田鉄矢の遺影の前で両手を合わせる浅野温子でもいいかもしれない。彼女に「ウソつき!」と言わせるだけでも、トラックを止めた名シーンを思い出して視聴者は涙するかもしれない。
ただし当面の間、ウォルマートとビジオは別々に運営される予定という。ウォルマートが本気を出せばテレビ視聴も大きく変わりそうだ。
人気テレビドラマ「ギルモア・ガールズ(Gilmore Girls)」の主演者を起用したウォルマートのコマーシャル。ギルモア・ガールズのファンにとっては嬉しいリユニオンだ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。制作者側はあまり嬉しくないでしょうが人気ドラマの主演者らがリユニオンするコマーシャルはファンにとっては嬉しいでしょう。例えば1993年の「ひとつ屋根の下」。白衣の福山雅治が振り返りながら、江口洋介に「あんちゃん、ちょっと血圧が高いよ」と言わせるだけでも多くのファンはニンマリです。福山雅治の「ところで小雪は?」で江口洋介の苦笑いのアップを映すだけでもいいかもしれません。「ロングバケーション」なら山口智子がキッチンで何かしながらも、リビングでキムタクがピアノを弾いているシーンだけでもいいですね。「マザー」なら松雪泰子と芦田愛菜が旅行しているのもいいかもです。当時のシーンを挿入しなくてもいいのです。二人だけ幸せそうにしていれば視聴者は喜びます。コマーシャルで使えそうな名作ドラマの"匂わせ"手法です。2003年の「白い巨塔」に出ていたその後の東貞蔵(石坂浩二)と妻(高畑淳子)も見たいですね。病床にある石坂浩二にぶつくさとおしゃべりを続ける高畑淳子ならわかる人ならわかります。
「やまとなでしこ」の松嶋菜々子が客室乗務員を続けながらも現在も合コンを仕切っていたら...もみてみたいですね。
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