■筆者がアメリカに留学した1985年、レストランにアイスコーヒーはなかった。40年近く前でも昨日のように覚えているのがファミリーレストランでアイスコーヒーを頼んだときだ。
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ウェイトレスが怪訝な表情をしながら"アイスコーヒー"の注文を受けて、ソーサーとコーヒーカップを持って戻ってきた。
「ホットコーヒーなんて頼んでいないのに」と思いながら覗き込むとコーヒーの中に大きなアイスが浮かんでいた。
飲んでみると案の定、生ぬるい。ホットコーヒーにアイスを入れただけの代物だった。1985年の当時、アイスコーヒーはアメリカにはなかったのだ。
コーヒーチェーン最大手のスターバックスもまだワシントン州シアトルに数店舗のみ営業していたときだ。
しかし今やコールドコーヒーは急成長しているどころか、アメリカのドリンク市場を席巻している勢いになっている。
米国のコールドコーヒー市場は2016年は85億ドルだったが2023年には177億ドルとおよそ2倍となる108%も成長しているのだ。
一方で大きな市場となっているホットコーヒー市場は同時期に20%の成長にとどまっている(586億ドル→702億ドル)。
したがってダンキンドーナツなどは広告にアイスコーヒーで訴求する。
アウト・オブ・ホーム(家庭外)コーヒー市場規模は2023年、880億ドルになっておりその中でコールドコーヒーは20%も占めている。2016年の13%からシェアを大きく伸ばしているのだ。
これはコーヒーショップ市場の26.5%(調査会社IBISワールドの2023年のデータ)のシェアとなるスターバックスにも大きな影響を与えている。
2013年にスターバックスのコールドドリンクは飲み物全体の37%のシェアしかなかったのだが2015年からコールドコーヒーのメニューを拡大したのちに2019年には50%を占めるにいたった。
さらに2021年にはコールドコーヒーを含む冷たい飲み物は全体の75%まで占めるようになったのだ。
米国西部を中心に1,000か所近くを展開するドライブスルーのコーヒーチェーン「ダッチブロス(Dutch Bros)」ではドリンク売上の89%はコールドドリンクであり、47%はコールドコーヒーという。
コールドコーヒーを牽引するのは若い世代だ。
「ここ数日間でコールドコーヒーを飲みましたか?」という問いに18~24歳のZ世代は45%がイエスと答え、25~39歳のミレニアム世代は30%がイエスとの回答となった。
彼らは季節に関係なくコールドコーヒーを好んでいるが、彼らより上の世代となるX世代やベビーブーマーは寒い時期は控える傾向が顕著となる。
若い世代がホットコーヒーよりコールドコーヒーが人気になるのは様々なフレーバーやクリーム等のトッピングでカスタマイズが可能だからだ。
また透明な容器でカラフルに見えるコールドコーヒーはインスタ映えしやすいこともある。トッピングの(フレーバー)カラーが溶け出してミックスする様子も面白い。
このコールドコーヒー市場に本格的に乗り出そうとしているのが外食チェーン最大手のマクドナルドだ。
マクドナルドは1年前、イリノイ州シカゴ郊外に冷たい飲み物をコンセプトにした「コズミクス(CosMc's)」1号店をオープンした。
マクドナルドのスピンオフ・ブランド名は1980年代後半から1990年代前半のマクドナルドの広告に登場した宇宙人キャラクター「コズミクス(CosMc)」が由来だ。
カスタマイズ可能なスペシャルティ・ビバレッジや新感覚のアイス・コーヒー等をメニューの中心に据えたファストドリンク業態だ。
コズミクスは現在までにテキサス州に6店舗をオープンしており、シカゴ郊外の1号店を含め全体で7店舗の展開となっている。
巨大なホットコーヒー市場に比べるとコールドコーヒーは若い分、伸びしろがある。アメリカには日本にあるような長い歴史や強い伝統がないからこそ新たなトレンドが生まれやすい市場だ。
コールドコーヒー好きな若い世代が消費の中核になる頃、コールドコーヒーにも思いがけない新トレンドが生まれているかもしれない。
トップ画像:コールドコーヒーを含めコールドドリンクをメニューの中心においたマクドナルドの新業態店「コズミクス」。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。先日のダラス・フォートワース&ロサンゼルス流通視察ではランチだけでなく朝食もモバイルオーダーでのワークショップを行いました。ネットスーパー体験もそうですが、米国流通視察ではいまやアプリを介した買い物体験が必須です。米国の買い物はパーソナライゼーションを抜きに語れないからです。飲食の注文もアプリを介してのパーソナライズ化が主流。エントリー記事にあるようにコールドコーヒー市場が急成長していますが、背景にはモバイルオーダーの一般化もあります。アプリでコールドコーヒーも好きなようにカスタマイズできるから若い世代を中心に人気が出ているのです。アメリカのアプリを介したモバイル注文は日本のフードサービス業者は絶対に見逃してはならない潮流なのです。なぜなら容易なカスタマイズやフレーバーにトッピング等のアレンジで客単価が上昇するからです。今後は生成AIがアプリの搭載されるようになるとさらにパーソナライズ化が進みます。お客様独自のメニューが作れない飲食店はハジかれるかもです。
視察時のランチでは参加者が「アイ・ラブ・オータニ・ピザ(I-Love-Ohtani Pizza)」と名付けたカスマイズピザを食べました。パーソナライゼーションとは付加価値です。つまり"価値の創造"であり「顧客の創造」なんですね。
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