ユーザーリサーチとはUXデザインを行う際に必要となるユーザーのニーズ、行動、好み、課題を明らかにするための調査のこと。最近では「UXリサーチ」とも呼ばれている。
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UXデザインプロセスの一部であり、ユーザー体験を向上させるために必要不可欠なプロセスとなっている。
ユーザーのニーズや課題などを間違えて捉えてしまったり、十分に理解ができていない場合は、製品やサービスの失敗につながる可能性があるため、ユーザーリサーチは非常に重要な存在なのだ。
ユーザーリサーチの概要やなぜ必要なのかについては下記の記事で詳しく話している。ぜひそちらも合わせてチェックいただきたい。
近年、ユーザーリサーチやUXリサーチという言葉が日本でも少しずつ浸透し始めているものの、ユーザーリサーチの手法がたくさんあって何をすればいいかわからないという相談をよく受ける。そこで今回は『19種類のUXリサーチメソッドのメリット、デメリットと活用場面』について解説していく。
どんなユーザーリサーチメソッドがあるの?
まずはこのマトリクスの見方について解説していく。縦軸が意識調査(Attitudinal)か行動観察(Behavioral)で別れていて、横軸が質的調査(Qualitative)と量的調査(Quantitative)に別れている。
- 意識調査(Attitudinal):ユーザーが「どう思っているか」や「何を感じているか」を聞いて理解する
- 行動観察(Behavioral):ユーザーが「実際に何をしているか」を観察して把握する
- 質的調査(Qualitative):少数のユーザーから詳細情報を集めて「なぜ」「どのように」を深く理解する
- 量的調査(Quantitative):多くのユーザーから数字で表せる情報を集めて傾向を把握する
4種類のマークのそれぞれの意味
🟢自然な製品使用 (Natural use of product):ユーザーが普段どおりに製品を使う様子を観察する
🔴脚本化された製品使用 (Scripted use of product):決められたタスクやシナリオに沿って製品を使ってもらい、その様子を観察する
🟡脱文脈化 (Decontextualized – not using product):製品を直接使用せずに、ユーザーの意見、態度、または知識を調査する
🔵限定的使用 (Limited use of a limited form of the product):製品の一部や簡易版を使って、特定の側面だけを調査する
マトリクスの見方がわかると、それぞれのメソッドがどのような目的でどのような方法で行われるかが大まかに理解できるようになる。
それぞれのユーザーリサーチメソッドの解説
それではここからマトリクスにあるリサーチメソッドについて解説していく。
1 🟡インタビュー (Interviews)
一対一で詳細な質問を行い、ユーザーの意見や経験を深く掘り下げる手法
- メリット: 詳細な情報が得られる、柔軟な質問が可能 (追加質問ができる)
- デメリット: 時間がかかる、サンプル数が限られる
- 活用場面: 新製品の開発初期段階、ユーザーの行動や動機の深い理解が必要な時
2 🟡フォーカスグループ (Focus Groups)
少人数のグループでディスカッションを行い、意見や反応を収集する手法
- メリット: 多様な意見が一度に得られる、参加者同士の相互作用を観察できる (意見の一致や対立、アイディアの発展過程など)
- デメリット: 特定の意見に引っ張られる可能性がある、個人の深い洞察が得にくい
- 活用場面: 新しいコンセプトの初期評価、製品の改善点を探る時
3 🟡アンケート (Surveys)
多数のユーザーから定量的なデータを収集する手法
- メリット: 大規模なデータ収集が可能、統計的分析に適している
- デメリット: 深い洞察が得にくい、質問の設計が結果の質に大きく影響する
- 活用場面: 顧客満足度調査、市場動向の把握、大規模な意見収集が必要な時
4 🔵参加型デザイン (Participatory Design)
ユーザーを設計プロセスに直接参加させる手法 (デザイナーやエンジニアと一緒に、ユーザーがアイデア出しや試作品の作成に関わる)
- メリット: ユーザーのニーズを直接反映できる、革新的なアイデアが生まれやすい
- デメリット: 時間とリソースがかかる、ユーザーの意見と専門家の知識のバランスを取るのが難しい場合がある
- 活用場面: 新しいサービスの開発、既存製品の大幅な改善を行う時
5 🔵魅力度調査 (Desirability Studies)
複数のデザイン案をユーザーに提示し、好みや印象(魅力度)を評価してもらう手法
- メリット: ユーザーの感情的な反応を把握できる、競合製品との比較が可能
- デメリット: 主観的な評価になりがち、機能性の評価には適さない
- 活用場面: 複数のデザイン案の中から最適なものを選ぶ時、ブランドイメージの評価をしたい時
6 🔵カードソーティング (Card Sorting)
ユーザーに情報やカテゴリーをグループ分けしてもらう手法
- メリット: 情報構造の最適化に役立つ、ユーザーの思考プロセスを理解できる
- デメリット: 結果の解釈に時間がかかる、コンテキストが失われる可能性がある
- 活用場面: ウェブサイトの情報設計、アプリのメニュー構造の設計をする時
7 🔵ツリーテスト (Tree Testing)
ユーザーにサイトの階層構造から特定の情報を探してもらい、サイト構造の分かりやすさを評価する手法
- メリット: ナビゲーション構造の問題点を特定できる、定量的なデータが得られる
- デメリット: 実際のデザインを考慮していない、コンテキストが限定的 (テキストの階層構造は、実際のレイアウトや色、アイコンなどの情報が欠如している)
- 活用場面: ウェブサイトのリニューアル前後の構造評価、大規模サイトの構造最適化をしたい時
8 🔵コンセプトテスト (Concept Testing)
新しい製品やサービスのアイデアをユーザーに評価してもらう手法
- メリット: 早期段階でフィードバックが得られるため、リスクを軽減できる
- デメリット: 実際の製品やサービスを使用時に生じるフィードバックとは異なる可能性がある(アイディアや簡易的なプロトタイプでテストするため)
- 活用場面: 新製品開発の初期段階、複数のアイデアから最適なものを選ぶ時
9 🟢顧客フィードバック (Customer Feedback)
既存の顧客から直接フィードバックを収集する手法
- メリット: 実際のユーザー体験に基づいた情報が得られる、継続的な改善に役立つ
- デメリット: ネガティブな意見が多くなる傾向がある、回答者の属性が偏る可能性がある
- 活用場面: 製品やサービスの継続的改善、顧客満足度の向上をしたい時
10 🟢日記調査 (Daily Studies)
ユーザーに一定期間、体験や行動を記録してもらう手法
- メリット: 長期的な使用パターンが把握できる、ユーザーにとって自然な環境でデータが得られる
- デメリット: データ分析に時間がかかる、参加者の継続的な協力が必要
- 活用場面: 長期的な製品使用パターンの理解、ユーザーの日常生活との関係性把握する時
11 🟢コンテキスト調査 (Contextual Inquiry)
特定のタスクや作業プロセスに焦点を当て、ユーザーの実際の環境で観察とインタビューを行う手法
- メリット: リアルな製品やサービスの使用状況が把握できる、潜在的なニーズを発見しやすい
- デメリット: 時間とコストがかかる、観察者の存在が行動に影響を与える可能性がある
- 活用場面: 業務用ソフトウェアの改善、複雑な作業プロセスの理解をしたい時
12 🟢フィールドスタディ (Field Studies)
特定の行動だけでなく、日常生活全般の行動を理解するために、ユーザーの自然な環境で行動を観察する手法
- メリット: 実際の製品やサービスの使用状況を把握できる、予想外の洞察が得られやすい
- デメリット: 時間と労力がかかる、データの解釈が難しい場合がある
- 活用場面: モバイルアプリの使用状況調査、公共空間でのユーザー行動研究をしたい時
13 🟢A/Bテスト (A/B Testing)
2つのバージョンを比較してパフォーマンスを測定する手法
- メリット: 定量的な結果が得られる、小さな変更の効果を測定できる
- デメリット: 一度に1つの要素しかテストできない、結果の解釈に注意が必要
- 活用場面: ウェブサイトのコンバージョン率改善、UIデザインの最適化
14 🟢クリックストリーム/アナリティクス (Clickstream / Analytics)
ウェブサイトやアプリ上でのユーザーの行動を自動的に記録し、分析する手法
- メリット: 大規模でリアルタイムなデータが得られる、ユーザーの実際の行動パターンを把握できる
- デメリット: データの解釈に専門知識が必要、プライバシーの懸念がある
- 活用場面: ウェブサイトの利用状況分析、ユーザーの行動パターン把握をしたい時
15 🟢🔴アイトラッキング (Eye tracking)
ユーザーの視線の動きを追跡する手法
- メリット: 視覚的注目度を客観的に測定できる、インターフェースの改善に役立つ
- デメリット: 特殊な機器が必要、データの解釈に専門知識が必要
- 活用場面: 広告効果の測定、ウェブサイトのレイアウト最適化をしたい時
16 🔴ユーザビリティテスト (Usability Testing)
ユーザーにタスクベースで製品やサービスを使ってもらい、使いやすさを評価する手法
- メリット: 具体的な問題点が特定できる、ユーザーの行動と思考を直接観察できる
- デメリット: テスト環境が人工的、多くのユーザーをテストするのは時間がかかる
- 活用場面: 新製品のリリース前の最終チェック、既存製品の改善点の特定をしたい時
17 🔴非モデレートテスト (Unmoderated Testing)
モデレーターなしでユーザーが自由にタスクベースに製品/サービスのテストを行う手法 (通常オンライン上でテストを実施)
- メリット: 多くのユーザーを同時にテストできる、コストが比較的低い
- デメリット: 詳細な観察や質問ができない、タスクの解釈に差が出る可能性がある
- 活用場面: 大規模なユーザビリティテスト、簡単なタスクの評価をしたい時
18 🔴リモートモデレートテスト (Remote Moderated Testing)
オンラインでモデレーターが立ち会いながら製品/サービスのテストを行う手法
- メリット: 地理的制約がない、自然な環境でのテストが可能
- デメリット: 技術的な問題が発生する可能性がある、細かい表情の変化や目の動き、ジェスチャーなどの観察が難しい
- 活用場面: 地理的に分散したユーザーのテスト、対面テストが難しい時
19 🔴ユーザビリティベンチマーキング (Usability Benchmarking)
製品やサービスのユーザビリティを定量的に (タスク完了率、エラー率、操作時間など)を測定し、以前のバージョンや競合製品と比較する手法
- メリット: 客観的な比較が可能、長期的な改善を追跡できる
- デメリット: コンテキストや質的な側面が無視される可能性がある、適切な指標の設定に時間がかかる
- 活用場面: 競合製品との比較、長期的な製品改善の効果測定をしたい時
最後に
それぞれのメソッドにはメリット・デメリットがあり、プロジェクトのフェーズや調査の目的によって使い分ける必要がある。効果的なユーザーリサーチを行うためには、以下の点を考慮することが重要だ。
- 手法の正しい理解
- 目的に応じた手法の選択
- 複数手法の組み合わせ
- リソースと制約の考慮
- 倫理的配慮とプライバシー保護
ユーザーリサーチは、単なるデータ収集ではない。手法を正しく選択し、適切に実施することで、ユーザーについての深い洞察を得ることができる。この理解こそが、真に価値のある、ユーザー中心の製品やサービスを生み出す鍵となる。
市場やユーザーのニーズは常に変化しているため、ユーザーリサーチは継続的なプロセスである。定期的にリサーチを行い、その結果を製品開発に反映させることで、長期的な成功を実現することができるだろう。
ビートラックス(btrax)ではユーザーの理解および価値のある体験デザインに向けて、ユーザーリサーチ/デザインのプロによる伴走支援およびワークショップ形式でのサポートを行っている。
弊社の提供するサービスに関してより詳細を知りたい方は是非、ビートラックスサービスページをご覧いただきたい。
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