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高価格帯路線でブランド価値向上を目指す アシックスが絶好調の「スポーツスタイル」の新戦略発表

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高価格帯路線でブランド価値向上を目指す アシックスが絶好調の「スポーツスタイル」の新戦略発表

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 アシックスが、上方修正した「中期経営計画2026」の詳細を発表した。2024年の通期連結業績予想では営業利益が大台となる1000億円を突破する見込みで、当初掲げていた800億円以上という目標を2年前倒しで達成できる見通しが立ったと公表しており、これに伴い中期経営計画を上方修正。営業利益を1300億円以上、営業利益率を17%以上の“業界No. 1の収益性実現“に向け成長を加速させるという。

「ブランド力」強化で目指す収益性向上

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 上方修正に至った理由には、日米欧を中心とした売り上げの拡大、高価格帯商品への注力やディスカウント販売の抑制などによる粗利率大幅改善の2点が挙げられる。

 増益には「アシックス スポーツスタイル(ASICS SportStyle)」と「オニツカタイガー(Onitsuka Tiger)」の躍進が寄与。主力の「パフォーマンスランニング(以下、PRUN)」も堅調に推移した。スポーツスタイルは、主力のPRUNが築いた認知を波及させる形で欧州や北米、中華圏を中心に成長。オニツカタイガーは、インバウンド需要の取り込みを含めて売り上げを拡大している日本をはじめ、中華圏、韓国、東南アジアで伸長し、“ラグジュアリーブランド”としてのイメージ強化が奏功したことで、欧州でも勢いを増している。このほか、北米では直営店の採算の見直し、エントリーモデルの絞り込みによる収益性向上に加え、スポーツスタイルの人気も後押ししたという。

 2024年までは、低収益事業の見直しによる収益性向上を図ってきたアシックスだが、2026年に向けて取り組むのは「ブランド力の強化」による収益性向上。注力するのはPRUN、コアパフォーマンススポーツ、スポーツスタイル、オニツカタイガーの計4カテゴリーだ。中でも、多数のフットウェア企業が参入する「スポーツ・ライフスタイル」領域で「アシックスの新たな成長ドライバー」として同社が期待を寄せるスポーツスタイルの成長戦略を見ていく。

「トレンド創出型」の商品展開で人気維持を目指す

 スポーツスタイルは、2019年に発足。アクティブなライフスタイルを送る顧客層をターゲットに展開するアシックスのライフスタイルカテゴリーで、アーカイヴアイテムから現在までのテクノロジーやデザインをライフスタイルに落とし込んだアイテムを展開している。2020年から順調に推移し、同部門の2023年の売上高は618億円。2026年には1550億円を見込む。同社は、「スポーツライフスタイルフットウェア」市場規模は、2023年から2024年で9.5兆円から10兆円に成長し、うち同社のシェアは1%から1.6%になると予測。対して、「90ドル(約1万3850円)以上のスポーツライフスタイルフットウェア」の市場規模は同2.7兆円から2.9兆円の成長を想定し、現在2.8%の同社のシェアは4.3%に拡大すると見込んでいる。ライフスタイルフットウェア領域は競合が多数参入する巨大市場だが、米小売大手のフットロッカー(Foot Locker)や中国のECサイト「JD.com」といった大手流通企業との取り組みを強化することも視野に、90ドル以上の中〜高価格帯商品に注力することで売上拡大を狙う。

◆コラボ先にも変化

 ブランド価値向上戦略の一環として取り組むのは、商品のプレミアム化に加え、コラボレーションなどによる差別化やアパレルコレクションを活用したスタイリング提案に伴う「ライフスタイルブランド」としての発信、販売チャネルやイベントを通じたブランド体験の強化がある。コラボパートナーはこれまで、ハイファッションやストリート領域を中心に選定してきたが、近年ではサステナビリティやサブカルチャー、タレント、アスリート、ミュージシャン、ライフスタイルといった多分野・多業種へ拡大。幅広い顧客層へのリーチを狙う方針にシフトしており、今年11月にはYOASOBIとのコラボプロジェクトを発表した。

◆トレンドは後追いせず、創出する

 スポーツスタイルでは現在「ヴィジュアルテック」「モダン」「ヴィンテージテック」「クラシックス」の4つのライフスタイルシューズとスケートシューズの計5ラインを展開。中でも、2000年代モデルのアーカイヴを揃える「ヴィンテージテック」が2021年以降高い人気を見せている。同ラインの商品数は、2021年は全体の13%だったのに対して、2024年には全体の約44%にまで拡充した。

 ヴィンテージテックの人気の背景には、アシックスの「トレンド創出フロー」があると執行役員でスポーツスタイル部門の統括部長 鈴木豪氏は説明する。同社は、グローバル水準の多様性のあるトレンドを掴むため、神戸と東京に加えて、アムステルダム(欧州)、カルフォルニア(北米)、ボストン(北米)、上海(中華圏)に本社機能を備え、世界各地に地域統括MD拠点を設けている。ヴィンテージテックの人気にも、こうした世界各地のMDチームとの情報共有によって、マクロトレンドや顧客の価値観の変化を捉え、そこにブランドの強みを活かしたアプローチで提案していくという「トレンド創出フロー」に則った取り組みが寄与していると分析。トレンドを後追いする形で商品供給を増やしていた時期はトレンドの消耗を早めてしまう傾向にあったとし、商品のフレッシュさや勢いを長く高い水準でキープするためのプロダクトライフサイクルや需給管理も徹底しているという。このほか、現在のトレンドの終息も見据え、ヴィンテージテック以外のプロダクト開発といったポートフォリオの拡大を並行して進める。

◆顧客セグメントごとにレイヤーを分けた卸売を強化

 スポーツスタイルが販売チャネルの中で特に重視するのは卸売。卸売の2024年度累計売上は前年比78%増を見込み、チャネル全体の73%を占めるいう。ラグジュアリーブランドを目指すオニツカタイガーが直営店を中心にブランドの世界観表現に注力しているのに対し、スポーツスタイルではターゲット顧客や商品MDと連動した流通の階層分けを実施。上位顧客層にフォーカスした取り込みを強化していく。

 廣田康人代表取締役会長CEOは、「今後は現状のような急成長とはいかずとも、毎年10%以上の成長は実現していくだろう。現在もまだ通過点。本来我々が競争しなくてはいけない、世界の大きなブランドへの挑戦権をようやく得たと思っている」と話している。

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