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タビオに見る、マス商品を求めつつそれ以外の商品も求めてしまう消費者心理

タビオに見る、マス商品を求めつつそれ以外の商品も求めてしまう消費者心理

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー
南 充浩

洋服というものは、全身を覆っているので身に着けると一目で色・柄・デザイン、ブランド名などが判別されやすい。

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そして、全身を覆っているから他の雑貨類や家電製品、家具などと違ってやっかいである。

あまりにも突拍子もない服装だと「浮いて」しまってびっくりされるが、逆にみんなが同じような服装になると「没個性」「被り」だと言われてしまう。

この辺りのバランスのとり方が消費者としても、販売・供給側としても難しいので、不安定なビジネスになってしまうのではないかと思われる。

アイテムごとに「トレンド」傾向は異なるが、レッグウェアではベージュのタイツが昨年秋冬からマストレンド化しているようで、ベーシックな黒と合わせて「黒、ベージュが2大人気カラー」になっていると言われている。

昨年秋冬にベージュのタイツを懸命に拡販していたのが「靴下屋」で有名なタビオなのだが、女心など微塵も理解できない当方からすると、わざわざベージュのタイツを履く理由が分からなかった。ベージュのパンストでも似たようなものだろうし、なんなら履かなくてもよほど近くで見ない限りはわかりにくい。

買って履くメリットが防寒という一点以外には思いつかない。

しかし、タビオの中の人に聞くと「パンストと違って生地が分厚いので、膝をすりむいた傷跡などが隠せるんです」という。なるほど、これはオッサンたる当方には思いつかないメリットだった。

オッサンたる当方も今夏はたっぷり3カ月間半ズボンしか穿かずに生活をした。

当然、膝から下はむき出しである。当方の膝にも20何年前に転んですりむいた傷跡がまだうっすらと残っている。しかし、オッサンの脚に少々傷跡があったところで誰も気にしないし、当方とて気にしない。

しかし、女性になるとそういうわけには行きづらいことくらいは当方とて理解している。

このメリットをアピールできたタビオではベージュのタイツと定番品である黒タイツが好調だったというが、同業他社は今秋冬に向けて黒タイツとベージュタイツを強化してきた。どの売り場も黒・ベージュの陳列面積が広く取られている。

もちろん、各社ともに少しずつ価格帯も異なれば、微妙に糸使いや生地感は異なる。

だが、生地の厚さやストレッチ性など一定の基準を満たしていれば、消費者としては最も安い商品か、最も割安感のある商品を買えば良いということになる。

そうなると、いわゆる「コスパ」に優れたブランドが有利ということになりやすい。

ご存知のようにタビオの商品は店頭ワゴンの3足1000円の商品を除くと決して低価格ではない。かと言ってびっくりするほどの高価格でもない。そうなるとコスパブランドには負けやすい。

多分、ベージュと黒だけで競争をしていたら、コスパブランドに圧倒的に負けることになるだろう。繊維・衣料品でよくあるのが、「製造や加工方法を強烈にアピールする」という手法である。いわくナンタラ綿をナンタラした特別な加工法だとか、伝統のナンタラ工場でナンタラした編地をどうのこうのした逸品だとか、そういう手法である。

もちろん、それが響く層もいるだろうが、繊維や衣料品にあまり興味の無い人にはそこまで響かない。とりわけ女性には響くことが少ない。これはタイツや靴下に限らずだ。

例えば「ナンタラウールをどうのこうのして〇番手の糸をナンタラ編みで編んだセーター」なんていうものは女性にそんなに響くモノではない。

そこで今秋冬はタビオは「カラータイツ」をアピールしているのだという。ウェブ通販では40色展開だ。

【NEW・40色】60デニール プレミアムタイツ ( 011900061 ) | 靴下屋公式通販 Tabio オンラインストア

黒・ベージュ以外の明るいカラフルな無地カラータイツの拡販に努めている。消費者側としても黒・ベージュのタイツは今やどこでも買えるからタビオである必要も無い。また周囲が黒・ベージュを履いた人で溢れているとそれこそ「没個性」や「お揃い」になってしまうので、たまには違う色も履きたいという願望も芽生える。

ちょうど黒い服ばかりだとたまにはブルーや赤の服も着てみたいと当方が思うのと同じである。

そして、タイツというアイテム自体には昨年秋冬の販促と今秋冬の他社の販促で消費者に耐性が出来上がっている。

となると、黒・ベージュ以外の明るいカラータイツも受け入れる土壌自体は出来上がっているということになる。

現在のところSNSも含めたウェブで理屈を説明したカラーコーディネイトを見せることでカラータイツの拡販に努めており、かなり好調に推移しているという。取り立てて好調なカラーというのはなく、満遍なく売れているという。

他社が黒・ベージュにほぼ特化している中で、あえて違うカラーをアクセント商品としてアピールするという手法はタイツ以外でも使えそうな手法だといえる。それとともに、タビオの企業規模がこのやり方にちょうど良い規模だといえる。

タビオの24年2月期連結決算は
売上高 162億2000万円(対前期比6・3%増)
営業利益 5億9800万円 (同17・9%増)
経常利益 6億2100万円 (同17・4%増)
当期利益 4億6900万円 (同102・0%増)

となっており、162億円という売上高は決して小規模ではないが、大手企業でもない。そこそこの資金力がある割にはマイナー感も少しある。

ユニクロやジーユーなどの超マスブランドが「目立ちやすいカラー」をアピールすると「ユニ被り」とか「ジーユー被り」となって嫌気を誘ってしまう可能性が低くないが、この規模ならそこまで被らない。

ともすると、マス人気アイテムに特化しがちなのが繊維・衣料品業界だが、少しズラした視点での企画や、それを理屈立てて説明するという販促手法は、カラータイツだけでなく他のアイテムにも生かせるのではないかと思っているがどうだろうか?

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