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ブランドの色展開が減少傾向? 価格競争に対抗するアクセントカラーの必要性

ブランドの色展開が減少傾向? 価格競争に対抗するアクセントカラーの必要性

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー
南 充浩

一昨年くらいから、黒い服ばかり購入していて、すっかり「黒」ばかりになってしまった。

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理由は、各ブランドの色展開が少なくなっており、黒・グレー(グレージュの場合も)・ベージュくらいの3色展開ばかりだと感じる。たまには他の色も買いたい(着たい)と思うのだが、売っていない物は買えないのである

特に顕著なのがジーユーで、黒、グレー、ベージュ、白、オリーブ、ネイビーの6色の中から3~4色選んで全型で展開している。

そのため必然的に「黒」ばかりを買うことになってしまう。

これは他の企業でも同様で、アダストリア、アーバンリサーチともに黒、オリーブ、グレージュあたりの3色展開アイテムばかりである。

こちらで買っても必然的に黒が増えてしまう。

一方、アダストリアやアーバンリサーチよりも高い定価の商品が多いベイクルーズストアには違う色の商品や変なデザイン商品もあるから、ザックリと分析すると低価格~中価格くらいは黒を基調とした3~4色展開で、それ以外の色物や変なデザイン服が欲しければ、中価格帯以上のブランドを選べということになる。

低価格である程度、色数を揃えているマスブランドはいまやユニクロくらいではないだろうか。品番によってはジーユーよりも色展開が多い物もある。そのユニクロでさえ、往年の色数展開に比べるとだいぶと絞り込んで展開している。

これはとりもなおさず、良く言えば「各社が販売効率をより高めるため」といえる。何せ、ユニクロの実店舗を見ていても、アンドエスティやアーバンリサーチネット通販を見ていても、高い確率で残っているのはベーシックではない色物商品である。

となると、売る側とすれば「明るい色や派手な色のアイテムは危険」だと考えるようになる。また買う側も「珍しい色物は買っても似合うかどうかわからない」とか「コーディネイトが難しそう」とかそんなふうに考えがちで、黒などの定番色を買ってしまいやすい。

実際のところ、当方とて「このミントグリーンは合わせにくそう」と考えて黒やネイビーを買ってしまうことも多くある。

昔触ったPOSデータでも、最も枚数が売れた商品は黒無地とか白無地のベーシック色品番だったということが多かった。恐らく今のPOSデータでも似たような実績が記録されているのではないかと思う。

2010年代後半から特に利益率の向上が各社ともに課題となっている中で、値引き販売を減らすには「売れにくそうな色物」を減らす、もしくは無くすことが最も効率的だと考えられるのも当然といえる。

だが、その結果、全ブランドがほぼ同質化してしまい、ブランドごとの区別ができにくくなるという現象も起きており、その傾向は年代が進むごとに強くなっていると感じる。

先日、このブログで月に一度寄稿してもらっているUS君が、都心ファッションビルを視察した。ファッションビルには1階の外向きの壁面にいくつかのブランドの商品を横並びでディスプレイするショーウインドーがだいたい設置されている。

そのショーウインドーを視察していたらしいのだが、「横並びで展示されているとどのブランドも同じように見えて、ブランドの下げ札が無かったら区別ができなかった」と言っていた。

実際、当方もショーウインドーをよく目にするのだが、90年代・2000年代と比べると、2010年代後半からはショーウインドーには1種類のブランドしか飾られていないように見えてしまうことが増えた。

だが、こうなるとより価格競争が激化する可能性が高い。

なぜなら、例えば黒無地の長袖Tシャツがあったとして、パッと見た瞬間はどのブランドでもほぼ同じに見えてしまうと、一番安い物、もしくは割安感が高い物を選ぶ消費者は増えやすい。

理由はパッと見た瞬間の価格差が分かりにくいからだ。当方のテリトリーならジーユーかワークマンかユニクロということになる。

ここらの大手になると生産ロット数の多さによって使用素材は店頭販売価格の割にマシな物が使われている場合が多いから、着用サイズ感さえ納得できればそれらで良いということになる。

たしかに触ってみれば素材感が違うとか、試着してみれば着用感やサイズ感が違うというブランドはある。だが、触ってみるとか試着してみるとか、というアクションを起こすのはかなり興味を惹かれた人に限られる。アイドマの法則ではないが、最初に注意を喚起するのは「色」「柄」「形」なのである。

一見して違いを認識するからこそ、触ってみたり、試着してみたりという行動につながる。大して興味も持っていないのに「とりあえず生地を触ってみる」とか「とりあえず試着してみる」なんていう行動は、店頭リサーチ中の同業者か生地関係のオッサンくらいしかとらない。

当方が若い頃の90年代・2000年代は多くのブランドが独自の色・柄・形を発信していた。2002年頃に冬のバーゲンが終わるころに「ボナジョルナータ」で70%オフに値下げされていたウールメルトン素材の赤いPコートを買った。2010年代半ば以降、メンズブランドでこんなに鮮やかな赤いPコートを売っているマスブランドはまず見かけない。せいぜい茶色と区別がつきにくいレンガみたいなくすんだオレンジ色くらいまでである。

たしかに70%オフされてしまうほどに売れ残ったという危険性はあるものの、仕入れ・製造の数量さえ間違えなければ店頭のディスプレイとしては鮮やかな赤は注意を惹きつけるアクセントカラーになりやすい。

各社ともに「余裕がない」からベーシックカラーに特化しがちなのだろうが、ジーユーがベーシックカラーに特化してしまった現在、価格競争に呑み込まれないためには、数量を間違えない程度のアクセントカラーの商品の必要性は高まっているのではないかと思っている。

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