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ストリートファションの定番、フーディーをスタンドカラーにリメイクしてみた

ストリートファションの定番、フーディーをスタンドカラーにリメイクしてみた

クリエイティブディレクター
HAKATA NEWYORK PARIS

 今から15年くらい前だったか。カジュアルファッションは、急激なグローバル化とナチュラルモードに振れ、それまでのジーンズ主体のスタイルが急激に凋落していった。回復する兆しは一向に見えない。ジーンズカジュアル店のライトオンがワールド系の投資会社の傘下入りしたしたが、抜本的な改善策は見通せず、経営再建が容易ではないことを象徴する。代わって台頭しているのが、アップルのスティーブ・ジョブスが着こなした「ノームコア」とスウェットパンツなどをタウンに着用する「アスレジャー」だ。

 中でもアスレジャーは、アーバンスポーツウェアというカテゴライズでも伸びており、スポーティーなテイストはアメカジを駆逐してすっかりマーケットを形成したように感じる。主力アイテムの一つがスウェットの「パーカ」だ。2010年代以降は、ラグジュアリーブランドがストリートファッションとの融合で高級素材を使ったものを売り出したり、カジュアルSPAからファストファッションまでが定番アイテムに仕立てたりと、市場に溢れている。

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 今やストリートファッションの定番アイテムとなったスウェット素材のパーカは、正しく「フード付きのスウェットシャツ」を意味する。フランス語ではCapuche(女:カピュッシュ)、またはCapuchon(男:カピュション)と表記。最近ではフーディ(Hooded Sweatshirt、フーデッドスウェットシャツを省略したもの)とも呼ばれる方が多くなった。だから、当コラムでもフーディという表記で統一する。

 暖冬が続いているので、正式には本格的な防寒着を指すパーカ(毛皮を用いるようなもの)は、九州のような南国では求められない。逆にスウェットのフーディは少し肌寒くなった日からレザージャケットを重ね着すれば真冬、コートのインナーアイテムとして春先までほぼスリーシーズン着ることができる。そのためか、生地は初夏でもいける8オンス台のものから12オンス以上のヘビータイプまでと様々だ。素材もポリエステルやポリウレタンなどの合繊、吸湿性を重視した綿混紡、裏側がパイルや起毛、ボアを貼ったものまである。

 スウェットのフーディはトレンドに左右されない。身幅や着丈を伸ばして、ややオーバーサイズ化される程度だ。デザインはプルオーバーからジップアップ、ポケットは手を温めるカンガルーの他、物を入れても落とさない片玉縁のスラッシュ仕様もある。ブランド力とディテールで多少の変化をつければ売れ筋になると、各社が企画している。ただ、ユニクロがデザイナーとコラボしたUNIQLO : CやヨウジヤマモトのGround Yまで企画している点を見ると、他にアイデアはないのかと思ってしまう。もうお腹いっぱいって感じだ。

 今から48年前に公開された映画「ロッキー」。主人公のボクサーを演じたシルベスター・スターローンがロードワークの時に着ていたのは、少し薄手に見えるスウェットのフーディとパンツだった。アスリートがスポーツウェアとして着ると様になるのだが、アスレジャーだと他のアイテムの組み合わせ方次第で、カッコよくもダサくもなる。例えば、米国映画に出てくるデリを襲ってカネを盗む強盗は、決まってフーディやキャップ、レザージャケットといった出たちだ。まあ、日々の生活に困って強盗をする輩がおしゃれをする余裕はないはずだが、それがなおさら陳腐に見えて同じ着こなしは嫌になってくる。

 いい加減にフーディ一辺倒からモデルチェンジしてもいいのでと思うが、どのブランドともデザインを変える様子はない。今シーズンも同じ仕様のものが各ブランドでラインナップされている。ならば、自分でやるしかないと、久々にリ・デザインをしてみた。筆者の場合、フーディはタウンユースだけでなく、ジムでのトレーニングや街中でのランニングでも着ているので、10オンス以上の厚手を数着持っている。そこで、フード部分を「スタンドカラー」にしてはどうかと、一番古いものをベースに試作をしてみた。

 デザインイメージはフード部分を半分程度の位置でカットし、高めの襟にするもの。加えて、フードのカットで残った生地を利用しトレンチコートのような「チンウォーマー」を作る。左右の襟にボタン留めにすれば、襟が倒れない。これならランニング時の風除けはもちろん、トレーニング時にマットに寝転がってストレッチする時にも後ろ首に負担がかからない。デザイン的には陳腐なアスレジャーを脱してミリタリー風になるので、多少はカッコよく見えるだろう。寒くなれば上にアウターを着てもいい。ボンバー、テーラー、チェスターフィールドと、いろんな上着との相性もいいのではないかと思う。

試作でイメージを固め、仮縫いで微調整する

 試作のリメイク手順は以下の通りになる。

 1.フード部分の半分やや下に立ち襟の出来上がり線を引く

 2.出来上がり線よりやや上(見返し部分)をカット

 3.フードの重ね布を開いて芯を入れ、アイロンで接着する

 4.立ち襟を合わせてミシンで縫い合わせる

 5.余った布でチンウォーマーを作る

 6.ウォーマーの左右にボタンホールをつける

 7.襟にボタンを縫い付け、チンウォーマーを固定

 あくまで手持ちのフーディを利用した試作なので、正確なサイズを割り出した型紙などはない。通販で購入し20年ほど着古したもので仮縫いし、大まかなサイズを割り出すためだ。まず、襟の高さを決める。スタンドカラーで風除けを考えると、タートルネックより高い位置、顎より上の唇が隠れるくらいの高さ。それを出来上がりの線にしようと考えた。前襟は身頃の縫い合わせから14cm、後ろ襟は10cmと決めた。前襟は前に落ち開き気味になることを予測して高めの設定とした。それに見返し部分2cm程度を加えた線で、フードをカットする。

 カットした状態で立ち襟の高さを仮縫いする。前後左右と見返し部分をピンで止め、立ち襟の形を組み立てた。前襟分の高さはほぼいいが、後ろ襟が多少高すぎたので7cm程度に修正する。これならトレーニングマットに転がってストレッチする時も襟がもたつくことはないだろう。フード部分は初めから生地が二重になっている。そこでカットした後の襟部分にはこしを出して立ちやすいようにするため、内側に芯を入れてアイロンで接着する仕様にした。

 ただ、襟部分に芯を入れても、それだけで立ち襟状態が維持されることはない。そこで、トレンチコートに付属するチンウォーマーを取り付ける。これなら襟の倒れや開きを防止でき、防寒機能も果たせる。フード部分をカットした残布をそのまま使い、ヘキサゴン状にカットし、これにも内側に芯を入れた。トレンチコートと同じように左右のえりにボタンで留めるようにボタンホールを切り込んだ。元のフードは被った時に頭巾状に絞るための紐が入っている。チンウォーマーはその左右の穴が隠れるような位置に取り付けた。リデザイン、リメイクは前の仕様をいかに消し去るかの工夫も必要だ。

今回のリ・デザインに行き着いたのは、12オンス程度で厚手のスウェットシャツにはフーディか、プレーンなトレーナーしかないのがきっかけだった。差別化と言っても、胸元か背面のプリントくらいだから、個人的にはすっかり陳腐化している。着こなしもフーディのプルオーバーはそのまま被るので、インナーにシャツを着たところで襟元くらいしか見えない。フード部分が強調される着こなしは、やはり上に着るアウター次第となる。逆にジップアップは前空き状態ではインナーを見せることになり、それがおしゃれかどうかは、着る人間によっても変わってくる。見方によってはだらしなくもある。

 厚手のスウェットシャツでフルジップが登場しないかと待っていたが、あるのはスポーツ用のジャージばかりで、しかも薄手だ。スウェットシャツで毎シーズンにローンチされるデザインものは、フーディしかない。最初はジップアップのフードをカットして、立ち襟の上部端まで新たなファスナーに切り替えることも考えた。しかし、その仕様では新たにファスナーを注文し、付け替えなければならない。元のファスナーは不要になって、SDGsの流れに逆行する。できるだけ、利用できる部分は利用し、新たな材料も手持ちのものを再利用したい。そこで、プルオーバーのフードをカットして、立ち襟にするデザインを考えた。

 これならカットして残った生地は、チンウォーマーに再利用できる。芯は余っているものを使った。チンウォーマーを取り付けるボタンは、ジャケットについている予備のものがいくらでもある。過去に購入したジャケットはほとんどが黒なので、ボタンの色もほぼ黒。白系もいくつかある。袖口用は四つ穴で、デザインもほぼ似通っている。見た目で多少の色違いはわからない。リメイクなのだから十分に許容範囲内だ。完成したのは、スタンドカラースェットシャツとでも呼ぼうか。略してスタンディ。

 リ・デザイン、リメイクなので、クリエイティブワークなんて声高に叫ぶつもりはない。ただ、市場にはあまりにフーディばかりが溢れているので、それに代わるものを作ってみたかっただけだ。無いものを作るのは楽しいし、試作は自分なりにはよくできたと思う。フーディは他にもトレーニング用が何着か持っている。また、モードっぽいフードブルゾンもある。

 これらも同じ仕様で立ち襟にリメイクしてみた。気温はまだまだ高い状態が続いている。よほど低温にならない限り、屋外でのランニングはスウェットで十分だし、薄手のブルゾンもこれから重宝すると思う。この秋冬に活躍しそうなアイテムがまた増えた。

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