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ベネトン日本撤退に見る アパレルの「フランチャイズ経営」の弊害

ベネトン日本撤退に見る アパレルの「フランチャイズ経営」の弊害

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー
南 充浩

ベネトンの日本撤退が報道されて、中高年層の間ではSNS上で話題となったが、実際にベネトンの服を2024年まで毎年買い続けていたという人はほとんど見たことが無い。

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2010年代後半に日本国内に実店舗が無くなって以降は、実際に買い続けていたという人はほとんどいなかっただろう。そういう意味では今回の撤退は、中高年層にとってはノスタルジーを感じさせるだろうが、実のところ、経済的にも市場的にもほとんど何の影響も無いという話である。

80年代から90年代前半にかけてが世界的にも日本市場でもベネトンの最盛期だったといえる。2000年代後半以降は世界的にも日本市場でもベネトンの売上高も存在感も低下し続けたということは前回にも書いた。

当方が業界紙記者になったのは97年なのだが、このころ2000年前後、ベネトンはパラパラと30坪から40坪程度の店舗を新規出店していた。大阪にも出店があったので、何度かオープン内覧会に伺ったのだが、その際に店舗運営会社の人と名刺交換したのだが、明らかにベネトンジャパンとは違っていて、違和感があったので先輩記者に聞くと店舗運営はフランチャイズで経営されているということだった。

ただ、この2000年頃というのはユニクロがフリースブームで台頭を果たし、ワールドがオゾックの成功によって直営店展開を広げていた時期だったから、SPAとか直営店体制が拡充されつつあった時代だった。この2社以外にも例えばコムサとかイネドなんかも直営店形式で店舗数を拡大し続けていたし、SPA方式のGAPが本格的に日本に上陸していた。

高校生時代とか大学生時代に衣料品に興味を持たなかった当方には、予備知識も予断もなかったため「現在の業界はSPA方式や直営店方式が主流なのだ」と認識したのだが、それに対してフランチャイズ形式で運営しているベネトンの体制には「変わったやり方だが大丈夫なのだろうか?」と感じていた。もちろん、その当時の懸念には何の根拠もなかったのだが。

その数年後、ユニクロが出店ラッシュを続け、上陸したGAPもユニクロほどではないが出店ラッシュを続ける中、ベネトンの出店速度は極度に遅かった。

それも今から思えば、フランチャイズ形式の弊害でもあったのだろう。当時業界素人だった当方でも分かるほどに他のSPAブランド・直営店ブランドとは出店速度が大きく異なっていた。

もちろん、出店ラッシュを続けることが必ずしも企業経営にはプラスに働かない部分はあるが、消費者側とすれば注目度や認知度は高まりやすい。出店が少ないとなかなか認知度は高まりにくい。

外野たる当方からすれば、これによって消費者から選ばれにくくなった部分があったと感じている。

このベネトンのフランチャイズ体制について言及している記事は知る限りではほとんどない。その辺りの解説にこそ記事の需要があると思うのだが。

そんな中、小島健輔氏がフェイスブックでこのベネトンフランチャイズについて言及されており、非常に勉強になったので引用させていただく。

ベネトンは買い取りのFC店から受注をまとめて計画生産するメーカーであり、FC 店は補給用商品も含めて半年分の在庫を抱えて売り減らす古典的な欧州型FC方式でしたから、人気が落ちてくると在庫負担が見合わなくなって解約するFC店が増えていき、急速に凋落していきました。ピークは80年代で、今世紀に入ってはユニクロなどのSPAに圧されて凋落の一途でした。期中の消化動向に応じオンデマンドに補給生産する仕組みがなくカラー展開も維持できなかったので、FC方式のSPAとも言えないでしょう。

とのことである。

いわゆる「記事」ではなくフェイスブックへの書き込みなのでめちゃくちゃ詳しくはないが、価値のある情報だといえる。面識があるわけではないが、たしか年齢が当方よりも20歳くらい上のはずなので、当方が30歳そこそこの駆け出し記者の時代にすでに50歳前後のベテランだったので、その当時の内容は鮮明に覚えてられるはずである。

フランチャイズ形式の弊害は出店速度だけではなく、商品の供給と在庫保管にも及ぶ。ここでも触れられているように基本的にフランチャイズ店の仕入れはフランチャイズ店を経営する企業が支払うので、フランチャイズ店には大きな負担となる。また、品切れに対する追加補充もまたスムーズには行かない。ある商品がFC店で完売になったとすると、店舗からの要請がない限りはメーカーとしては生産するわけにもいかない。仮にメーカーが気を利かせて製造したとして、店頭の動きを見てからでは遅すぎて店頭納入するころには販売時期は終わっている。また製造された物を仕入れるか仕入れないかの決定権はフランチャイズにあるから、売り残しを恐れてフランチャイズが仕入れないという可能性もかなり高い。

フランチャイズ体制のままで店舗網を大規模に拡大できたファッションブランドが少ない理由はここにある。

そして体制の欠点とともに触れられているが「売れなくなると在庫負担に耐え切れずにフランチャイズを解約する」ということになるのだが、明らかに2000年代半ば以降はカラフルな色の組み合わせのセーター類の人気が落ちてベネトンはマストレンドから外れてしまった。例えば2000年代にベネトンメガストア心斎橋店がオープンしたが、平日はもちろんのこと夏冬のバーゲン時期でもガラガラで閑古鳥が鳴いていた。ただ、当方は穴場として3900円に値下がりしたセーターとか2900円に値下がりしたポロシャツなどを買っていた。そしてこの心斎橋店も2011年で閉店してしまった。

このように見てみるとベネトンの失速・凋落は、世界的にマストレンドから外れてしまったこと、そしてフランチャイズ体制を長らく維持したため、店舗網の拡大によって攻勢をたたみかけることができなかったこと、が大きな理由だといえるだろう。

蛇足だが、今回のフランチャイズへの指摘を見ていて、これはそのままワークマンにも当てはまるのではないかと思ってしまったことは内緒である。

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