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ライトオンとマックハウスの買収に見る、ジーンズカジュアル専門店の今

ライトオンとマックハウスの買収に見る、ジーンズカジュアル専門店の今

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー
南 充浩

ライトオン、マックハウスと立て続けにジーンズカジュアル専門店のトップ2が買収されて、当方としては感慨が深いのだが、この感慨には年代によって大きな差があると感じた。

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ライトオンの買収が発表されてから某ウェブメディアの担当者から電話があり、かいつまんで解説をしたのだが、その担当者はピンと来ていない様子だった。

尋ねてみると、その担当者は34歳男性で、当方のちょうど20歳年少だった。ちなみに当方の息子2人も20代後半になっており、担当者と息子たちは年代が近い。

この34歳担当者によると「ライトオンなんて高校生の時以来買ったことがないです」とのことだったので、かれこれ15年以上買っていないということになる。

20代後半になった当方の息子2人からもユニクロやジーユー、アダストリアという言葉を聞くことはあるが、ライトオンで買ったという話は聞いたことがない。

とすると、恐らくは今の30代、20代にとってライトオン、マックハウスというのは「買ったことがない」「あまり身近に存在しない」という店舗なのではないかと思う。

もちろん、生まれ育った土地によっては、近所のショッピングセンターで親しんでいたというその年代の方もおられるだろうが、少なくとも社会人になってからはあまり利用しないという人がその年代でもほとんどではないかと推測される。

ちなみに当方のフェイスブックはオッサン・オバハンが多いので、ライトオンやマックハウスの話題にはそこそこ反応が多い。

ライトオン、マックハウスに反応する下限年齢はどの辺りかと考えてみたのだが、40代前半なのではないかと当方は推測した。

当方は1970年生まれの54歳である。担当者は恐らくは1990年生まれの34歳だろう。

98年にユニクロのフリースブームが起きた時、当方は28歳だったが、担当者は8歳だった。当方からするとユニクロというのは「新参者」でしかないが、担当者からすると「子供のころから存在している大手」ということになる。

ジーユーがリニューアルした2010年に当方は40歳だが、担当者は20歳である。

となると、この年代の人はユニクロ、ジーユ―で買うのが当たり前という購買行動となっている。この間、ライトオン、マックハウスは減収し続け店舗数も減らし続けてきたので、ますます疎遠になるというわけである。

そして、恐らく、現在44歳くらいがライトオン、マックハウスにそこそこの愛着?思い出?を持っている最後の世代ではないかと当方は推測している。

現在の44歳は98年当時18歳である。高校3年生か卒業したばかりで、恐らく大学生時代にはライトオンで買うこともあっただろうから、それなりに愛着はあるだろう。

ジーユーがリニューアルした2010年には30歳だから、どちらかというと「新参者」という感じを今でも持っていることだろう。

だから、当方の見聞きする範囲においては、30代・20代から「あのライトオンとマックハウスが!」なんていう感想は一切聞こえてこない。そういう感想があるのは40歳以上の中高年ばかりだ。

さて、ジーンズカジュアル専門店が提供してきたのは、ジーンズを基本としたカジュアルスタイルで、アメカジ、ミリタリー、ワークテイストがメインだったといえ、そこに時々スポーツが差し込まれた感じである。

2005年にクールビズが始まるまでは、カジュアルフライデーなんていう運動もあったものの特にメンズはビジネスとカジュアルがはっきりと別れていた。ビジカジなんていう言葉が市民権を得たのは2005年以降のことである。カジュアルフライデーなんて今の若い人が見たら驚くかもしれないが、全然カジュアルじゃなかった。

余談だが、カジュアルフライデーの際、まだ若かった当方はジーンズにシャツジャケットみたいのを着て行ったところ、当時の役員の人(当時60代)から「それはカジュアルフライデーではない」と手ひどくお叱りを受けた。彼らのいうカジュアルはスーツではなく、ジャケスラスタイルでもちろんネクタイを締めるのである。手っ取り早く想像してもらうとしたらチノパンと紺ブレにカジュアルっぽいシャツを着てネクタイを締めるスタイルである。

いや、そんなもん、ちゃんと言ってくれないとわからねえよ。

閑話休題。

その後、ビジカジが浸透し、完全にフリーカジュアルになったとはいえないが、ある程度はビジネスとカジュアルは融合してしまった。現在だとユニクロ、ジーユ―は両方売っているし、ビームスやユナイテッドアローズなどの大手セレクトショップも両方を扱っている。

言ってみればジーンズカジュアルは総合的なファッション衣料の一つに完全に組み込まれたということになる。

またジーンズというアイテム自体もこれまで何度も書いて来たように、元来は製造段階から特殊な集団だったのが、OBや独立組が増えたことによって、ジーンズ専門ブランドでなくてもその製造ルートを使えるようになった。そうなると、タケオキクチだろうがポールスミスだろうが、コムサだろうがジーンズを扱うようになる。ビームスもUAもジーンズを販売するようになる。

そして、ビンテージブームで培われた「やっぱりスラブ糸を使って織られた凹凸感のあるデニム生地でないと、タテ落ちしないからダサい」みたいな「謎のこだわり」もブームが去ることで徐々に薄れて行き、ストレッチデニム素材が基本となったスキニーブームの到来で一気に過去の遺物へと成り下がってしまう。スキニージーンズで重視されたのは如何に伸縮率が高いかで、スラブ糸の凹凸感なんてどうでもよくなった。

スキニージーンズブームが終了するとルーズシルエットの復活で、ジーンズは80年代調ののっぺりとした表面感が好まれるようになる。こうなるとますます、ジーンズは専門ブランドでなくともよくなってしまう。

もちろん根強いジーンズファンが消えたわけではないが、彼らはマスでもなくなり、そういうファンは桃太郎ジーンズやシュガーケーン、アイアンハート、ジョンブルなどのこだわりブランドに流れ、割安感を求めるマス層はユニクロ、ジーユ―、しまむら、などに流れてしまう。中間価格帯はグローバルワークや無印良品などのSPAブランドに流れてしまい、ジーンズカジュアル専門店はその存在意義すらほとんど失うことになった。

恐らくは10代後半~30代はこのような購買意識で生活しているのではないかと思う。

トップ企業として最後までマス層向けのジーンズカジュアル専門店であり続けようとしたライトオンとマックハウスの自力再建断念はこれらの経緯を象徴していると感じられる。

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