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「解けないと着られない」 “謎解きアパレル”誕生の背景

「解けないと着られない」 “謎解きアパレル”誕生の背景

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「トキキル」というアパレルブランドをご存知だろうか。洋服に隠された「暗号(謎)」を解かなければ購入できない、「解けないと着れない」をコンセプトにしたミステリアスなアパレルブランドだ。これまでになかった新しい体験が話題となり、謎解き愛好家やファッション好きの若者を中心にブームとなっている。しかし、トキキルに関する情報はインターネット上に限られており、多くの人がより詳しくブランドについて知りたいと感じているのではないだろうか。そこで今回は、トキキル代表の長島くるみさんに、ブランド立ち上げの背景や特徴、今後の展望について話を伺った。

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PROFILE|プロフィール
長島 くるみ(ながしま くるみ)
トキキル代表
大学在学中に謎解きと出会い、謎解きイベント制作歴は12年目。これまで数々のイベントを企画・運営してきた。 テーマパークや百貨店で10年以上学んだ接客・販売力を活かし、2022年10月にトキキルとしての活動をスタート。

「解ける服を作りたい」から着想

トキキルには実店舗は存在せず、定期的にポップアップストアが開催されている。ストアへの入店にはチケットが必要で、制限時間も設けられている。その時間内に、気になった洋服のデザインに隠された謎を解かなければ、購入ができないという仕組みだ。

他のブランドとは一線を画しているが、どのようなきっかけで誕生し、そこにはどのような想いがあるのだろうか。長島さんは次のように語った。「きっかけは、街中を歩いていると、時々解けそうな服を着ている人がいるのが気になっていて、実際に解ける服があったらいいなと思ったことです。特別な購入体験を通じて、服への愛着をより強く持ってもらいたいという想いがあります。謎解きが初めての方でも楽しめるように、全てのデザイン(謎)に対してスタッフがヒントを出せるようにしています。お客様にはスタッフとのコミュニケーションも楽しんでいただいていますね」

トキキルの謎解きには難易度が設定されており、服のサイズになぞらえてSが簡単、Lに向かって難しくなるように設定されている(服のサイズ自体はXLのワンサイズ)

また、ブランドの核心である「謎解き」は、謎解き界隈で活躍するクリエイターをはじめ、さまざまな分野の著名人も制作に参加しているとのことだ。このように、謎解きが得意・不得意に関わらず顧客が満足できるような配慮が見て取れるが、長島さんは代表として、トキキルをどのように楽しんでもらいたいのだろうか。「普段の日常生活に謎解きを溶け込ませることができる『服』という媒体を使い、ファッションと並行して謎解きを楽しんでいただきたいです。服を買って終わりではなく、それを着て周りの人に出題をする側になる、というところまでを体験として楽しんでいただきたいと思っています」この言葉から、ブランド内で完結するのではなく、ブランドを超えて顧客同士や顧客のコミュニティでも楽しめるところが、トキキルの魅力のひとつといえるだろう。

ブランドを軸に独自の謎解きコミュニティが形成

トキキルは、前述の通りポップアップストアでのみ展開している。「欲しいときにいつでも買えるわけではない」という状態を意図的に作るため、現時点では常設店舗を持つ予定はないとのことだ。

この戦略は効果を発揮しており、トキキルの入店チケットはすぐに売り切れてしまう人気ぶりである。

「トキキルのチケットはありがたいことにすぐ売り切れてしまうので、まず『チケットを買えた』というところから、すでに達成感を得る体験が始まっています。また、入店しても、制限時間内に店内全ての服の謎を解くのはほぼ不可能なため、『また来たい』と思っていただけるような、継続して来店を促す体験も設計しています」

チケット獲得の難しさが体験の一部となり、同時に1度の来店では全てを体験できないという設計が、顧客の再訪意欲を高めている。

しかし、実際のお客様の声はどのようなものなのだろうか。SNSでは、「服には普段、無頓着だけれど初めて行った!描かれた謎を解くと買えるという企画自体が面白いなと思いました」「スタッフさんと気軽に話せる空間がすごく良かったです」「解けないと、着れない。超楽しいお買い物体験だった!」のようなポジティブな声があがっており、新たな体験を楽しんでいるのが見て取れる。口コミを見てみると、洋服だけでなくスタッフへの評判が非常に良い。スタッフとお客様とのコミュニケーションを重視しているトキキルだが、どのように接客の質を担保しているのだろうか。「私以外の運営メンバーが5名ほどおり、店舗スタッフは20名、さらに協力者やタイアップしたクリエイターを合わせると100人以上の協力者がいます。また、店舗のスタッフは、普段謎解き公演・体験型イベントでスタッフ・キャストをしている人を採用しています。その他にも、どのようなヒント出しが適しているかなど、お客様満足の向上のために常に話し合っています」お客様との印象的なエピソードについても伺ってみた。

「お客様と着ているTシャツがかぶることがあり、普通の服だと恥ずかしかったりしますが、トキキルでは『お揃いですね!』と喜びあっています。あとは、最初はお客様としてご来店いただいていた方の中にも、現在ではクリエイターとして参加してくださっている方々がいます。スタッフ自身も謎解きイベントへ遊びにいくので、遊びにいった先でトキキルを着ている方と会うとうれしいですね」

これらのエピソードから、トキキルを中心とした独自の謎解きコミュニティが形成されていることがうかがえる。単なる洋服ブランドを超えて、共通の興味や体験を持つ人々をつなぐプラットフォームとしての役割を果たしているようだ。

ファッション×謎解きで新たなチャレンジを

トキキルは、インターネットでいつでも洋服が購入できるデジタルの時代において、なぜ実店舗での体験にこだわるのか。 長島さんは次のように説明する。

「いつでも好きなものがワンクリックで買える時代に、わざわざ開催情報を調べ、チケットを購入し、ドキドキしながら店舗へ向かう。店舗へ入ると、普段の服屋とは違った異様な雰囲気・非日常空間が広がっています。 難しい暗号へのチャレンジにはスタッフとのコミュニケーションを交え、ひらめいた瞬間は一緒に喜びます。

無事に服を買って、外へ出るとそこは日常。ただ手元には謎の服が。体験はお店だけで終わりではありません。 服を見るだけで体験したときのことを思い出し、服を着ることで次は誰かに出題をする。暗号が仕込まれた服を着ることで『世界に謎を仕掛けている』一部になることができるのです。 こういった一連の流れ全てをひとつの『体験価値』として捉えています」

しかし、トキキルも時代の変化に対応している。

「これまでは実店舗にこだわっていましたが、現在では答えを入力しないと購入ページに辿り着けないオンラインショップを独自開発し、オープンしています。 ただ、こちらもいつでも買えるというわけではなく『300秒限定販売』など、入り口の体験は新しいものに常にチャレンジしています」

最後に、長島さんに今後のトキキルの展開について伺うと、展示会やファッションショーにもチャレンジしてみたいと考えていると教えてくれた。

トキキルは、単なる洋服の販売にとどまらず、購入プロセス全体を通じて独自の体験価値を提供している。実店舗での体験を重視しつつも、オンラインでの新たな挑戦も始めており、ファッションと謎解きの融合という独自のコンセプトをさらに拡大させようとしている。

ファッション業界にイノベーションを起こすトキキルの挑戦は、まだ始まったばかりだ。その革新的なアプローチが、どのように進化し、業界全体にどのような影響を与えていくのか、引き続き注視していきたい。

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