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ショーを創り出すクリエイターの仕事とは 「ピリングス」25年春夏ショーの裏側

ショーを創り出すクリエイターの仕事とは 「ピリングス」25年春夏ショーの裏側

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9月2日(月)から7日(土)まで開催した「Rakuten Fashion Week TOKYO 2025S/S」。ショー前後のバックステージで、デザイナーをはじめ、ショーに携わるクリエイターにインタビューを敢行した。ショーに込めた想いや開催までの過程など、ここでしか読めないリアルな声をおとどけする。今回は、薄いレースカーテンに自分の身体と外部の間を隔てる衣服という存在を重ねた<pillings(ピリングス)>。フォトグラファー千葉海斗がクリエーターの情熱が交わり合う舞台裏を撮り下ろした。

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バックステージレポート

自分の身体と外界を繋ぐ衣服という存在は、時に着る人自身を表すものであり、時に自分を守る武装装置にもなりうる。部屋の中と外を隔てる薄いレースカーテンに、自分の身体と外部の間を隔てる唯一の存在である衣服を重ねた。

<pillings(ピリングス)>といえば2014春夏コレクションでデビューして以来、デザイナー村上亮太と村上の母による自転車操業でコレクションを発表。その後、2018春夏コレクションからは村上亮太が単独でデザインを担当し、2023年にはサザビーリーグと事業譲渡契約を締結したことで、型数の増加や自動機によるニット類のバリエーションが期待されていた。ふっくらとした人の手の温もりを感じる手編みのニットが代表的な<pillings>は、2024秋冬シーズンでブランド初となるレザーのコートが登場し、新たな素材への挑戦と表現における探究心が垣間見えた。

続く、2025春夏コレクションは千代田区北の丸公園内に位置する科学技術館で発表された。大きなグレーのカーテンに覆われた窓、ツルツルとしたフローリングタイルが広がる会場にどこか冷たさを感じながらも日常的に見慣れた公民館や病院の待ち合い所を想起させた。今回のコレクションについて「過剰じゃない静かな風景に目を向けたかった」と語る村上。カチッカチッと規則的なメトロノームの振り子の音に合わせてモデルたちが歩くというシンプルな演出に、自然と意識は衣服へと集中した。

ファーストルックはヌーディーなベージュカラーのニットトップスにスッキリとしたスティックパンツがシルエットを強調。続く、ルックも一貫してスキンカラーをベースに、胸元に皺をよせたシャツやポケットの裏地が透けて露わになったパンツ、光沢感のあるナイロン生地で仕立てた半袖シャツ等、布帛が多数登場した。自動編み機で製作されたハイゲージのニット類はトップスとカーディガンがドッキングされたデザインに淡い色合いがコレクションに軽快さを生む。中盤にかけて多数登場したシャツやニットに重ねられたカーディガンのスタイリングでは袖を通さず、垂れ下がる様子に社会と折り合いのつかない女性像が重なった。

後半にかけて漂うロマンチックさと奇妙さは、スタイリングによってレイヤードしているかのようにみえるボリュームのニットドレスと独特のテクスチャーで単調なリズムを崩すハリ感のあるドレスが演出した。2枚目のルックは今回のコレクションの着想源の1つでもあるレースカーテン柄で編んだニットを樹脂のコーティングで一つ一つ手で固めたのものだという。

村上は2025春夏コレクションの出発点に70年代前後に台頭した「内向の世代」を代表する作家の1人、古井由吉の作品「杳子(ようこ)」にブランドが掲げる「社会と折り合いのつかない女性像」を重ね合わせた。村上は「ただ空がきれいだな、とかなんか花がきれいだなとか何気ない日常の一部分を見る目が、どんどん失われているなと。そういう視点をもっと持つことは大事だと思うし、今そういうものを持つっていうのが僕にとっては一番幸福なことなんじゃないかなと思って。今回のコレクションでも、起伏が激しい過剰なことはしないでおこうと決めていた。」と話した。決して華美ではない演出は、<pillings>が掲げる女性像を体現するモデルの表情やヘアからも伺えた。どこか虚げな表情に儚さを感じる一方で、無造作ヘアの一部が細く垂れ下がる様子は不憫さを孕みながら妙に艶かしく観客の心を引き寄せる。

これまでの<pillings>では、ブランドが掲げる女性像に毒々しさとじめっとした湿度を感じてきた筆者だったが、2025春夏コレクションでは社会と折り合いのつかない人物像を微細なディテールや演出で重ね合わせながら、心に生まれた余白のようにも感じ取れた軽快さが成熟した精神性を表現していた。素朴で優しい眼差しで見つめる喜びは、<pillings>をまた新たな価値観と美学の探究へと導くのだろうと感じた。

デザイナー 村上 亮太  インタビュー

― 今回のショーで伝えたかったことを教えてください。

あまり過剰じゃない演出や静かな風景みたいなものに目を向けました。派手な広告や数字に捉われる日常の中で、「今日の空はいつもより雲が多いな」とか「木漏れ日が綺麗だな」とかそういった視点を持つことが、今の僕にとって大事だと感じたんです。

スタイリスト Ai Takahashi インタビュー

― 村上さんとのショーの準備を進めるにあたって印象に残っているエピソードを教えてください。

今回のコレクションは、「日常の中にある小さな起伏、何かはっきりと言い表せない曖昧なものについて言及したい」というムードがありました。なので、アイデアを実際のシェイプにしていく最初の段階では、なるべく直接的なリファレンスを挙げるのを避けました。彼の頭にあるムードや人間像をなるべく純度の高いまま感じ取りたかったからです。思い描いているものが何なのかを言い切らず、感覚的に納得できる境地をお互いに探っていく作業は刺激的でした。彼は毎シーズンテーマの本質を掘り下げる事を妥協しませんが、今シーズンはそれを特に強く感じました。

― ショーのコンセプトや世界観をスタイリングではどのように落とし込みましたか?

今回のコレクションは、「ありふれた日常の中の気怠い情感」や「自己と外の世界がぼんやりと交わる感覚」など、日々の生活で見落としがちな感情にフォーカスしていました。そこでベーシックなアイテムの組み合わせの中で、何枚ものトップスやカーディガンなどの重なりとずれによって感情の機微を見せようとしました。

キャスティングディレクター Kosuke Kuroyanagi インタビュー

― 村上さんとのショーの準備を進めるにあたって印象に残っているエピソードを教えてください。

今回、初めて<pillings>のショーキャスティングのご相談を頂き、村上さんとお打ち合わせした時のことをよく覚えています。インスパイアされた作品やモデルのイメージをお伺いした際には、繊細でわかりやすい説明によってすぐに自分の中でもモデルさんのイメージができて、年齢幅を広げてみることを提案しました。今回表現したいことを踏まえて、村上さんとスタイリストのAiさんと何度もディスカッションをしたことがとても良い思い出で、楽しかったです。

― ショーのコンセプトや世界観をキャスティングではどのように落とし込みましたか?

モデルさんのポテンシャルももちろん大事ですが、内面的な部分にも注目してキャスティングを行いました。当日はウォーキングがとても重要だったのでモデルさん1人1人に伝えながら何度も調整を行いました。

メイクアップアーティスト Rumiko Ikeda Harris(M・A・C) インタビュー

― 村上さんとのショーの準備を進めるにあたって印象に残っているエピソードを教えてください

毎シーズンテーマが分かりやすい!心の内面を大事にした内容で、自分自身考えさせられる興味深いストーリーに感動して泣きそうになりました。

― ショーのコンセプトや世界観をメイクアップではどのように落とし込みましたか?

特にこだわったのは質感です。心の内面を表現する為に、内側からじわっと滲み出るように仕上げました。具体的には<M・A・C>のスタジオラディアンス24ルミナスコンシーラーで、肌をカバーし過ぎずツヤのある仕上がりに、更にマキシマルスリークサテンリップスティックの透明カラー(インザクリア)で頬の高い位置に繊細なツヤを足して内面から滲み出る心の動きを表現しました。

ヘアスタイリスト Hidetoshi Saiga(TONI&GUY)インタビュー

― 村上さんとのショーの準備を進めるにあたって印象に残っているエピソードを教えてください

デザインが生まれるまでの一連のルーティーンがいつもすごいなと思っています。村上さんは毎シーズン、コレクションのデザイン源を求めて五所川原の民宿に籠るそうなのですが、結局何も浮かばずに絶望して帰京。そこからまたふとした時にアイデアが生まれる、というエピソードが印象に残っています。

― ショーのコンセプトや世界観をヘアではどのように落とし込みましたか?

日常の中にある見落としがちな何気ない美しさを丁寧に描くことを意識しました。トップスの透け感が引き立つように、モデル1人1人に合わせておくれ毛を胸元まで長くして少し違和感を出しています。シンプルでなんでもないスタイルだけど、心に残るスタイルになったら良いなと思いながら創り込みました。

pillings

2014年春夏、村上亮太と母・村上千明によって<RYOTAMURAKAMI>をスタート。2018年春夏にはデザインを村上亮太が手がける形となり、2021年春夏からブランド名を<pillings>に変更する。

pillings 2025SS COLLECTION はこちら
@pillings_

Photograph:Kaito Chiba
Edit:Miwa Sato (QUI)

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