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目指すのは“メンズカジュアルファッション”の拡大 「ワークマン」が抱える課題

目指すのは“メンズカジュアルファッション”の拡大 「ワークマン」が抱える課題

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー
南 充浩

世の中にはあらゆる分野において、状況によっては「今までの強みが弱みに変わる」瞬間がある。

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それまでの成長エンジンだったシステムが、一定の規模に達すると却ってそれが成長の足かせになるということは多々ある。

その際、新たに根幹システムを構築しなくてはならないが、実際はなかなか胆力が必要になる。新たに構築した根幹システムが上手く作用するかどうかはわからないし、システム自体が正しくても運用する人間によって左右されることもある。世の中に確実な事物など一つもないのである。

なので、実際に当方が実務を担当したとしても大いに躊躇することになるだろう。

ワークマンがかねてからの予告通りに「ワークマン女子」においてメンズ大人カジュアルの拡充を具体的に発表した。

「#ワークマン女子」が男性衣料を拡大 「大人カジュアル」提案 (fashionsnap.com)

女性向け衣料品店「#ワークマン女子」が、男性向けウェアを大量導入し、1年後には店頭に並ぶ男性ウェアの半数を#ワークマン女子独自のシンプルなデザインに刷新する。
アクティブウェアのアイテム比率を下げ、#ワークマン女子独自の男性向けウェアを段階的に増やしていくとした。具体的には、#ワークマン女子における男性衣料の製品構成は、専売品の比率を、今秋に30%、2025年の3月に40%、9月に50%まで拡大する見込み。なおアクティブウェアは、ワークマンとワークマン プラスの既存店に集中させるという。

とのことである。

実はプレスリリースは当方へも直接送られてきている。この辺りの対応はワークマンへ感謝するほかない。それを読むともっといろいろなことが書かれてあるのだがそれを加味しても、今回の取り組みが成功するのは難しいのではないかと個人的には見ている。

商品の一例をリリースからこちらに貼り付ける。お分かりだろうか?この商品は何を目指しているのか?答えは「ユニクロ」である。

リリースにははっきりと「定価は業界最大手の半額に設定します。」と書かれてある。これはとりもなおさずユニクロを指していると推測される。画像の商品もユニクロと同テイストである。ユニクロのメンズカジュアルはアメカジベースでアメリカ東海岸寄りのアイビーテイストが基調となっている。今回の4例はいずれもそのテイストに合致する。上のセットアップ2点は感動ジャケット+感動パンツだろう。

商品の価格設定からも「業界最大手」がユニクロを指していることは明白で、例えばオックスフォードシャツが1500円となっているが、ユニクロのオックスフォードボタンダウンシャツの現在の定価は2990円である。ちょうど半額になっていることがわかる。

ちなみに記事中にある「アクティブウェア」というのは、従来型の派手な色柄のスポーツ、アウトドア、作業服を指している。

たしかに従来型のアクティブウェアに「派手過ぎる」という声があがるというのは理解できる。やはり作業服・スポーツ服・アウトドア服らしい色・柄・切り替えがあるので、これをデイリーカジュアルやカジュアルファッションに取り入れるのはなかなか難しい。

しかし、以前にも書いたようにそれこそがワークマンの強みだったのではないのか。作業服・アウトドア服・スポーツ服を一部カジュアルとして共有化できていたからこそ、2~3年という長い販売期間を設定でき、ほぼ値下げセールをすることなく売り切ることができた。一般的なカジュアルファッション衣料は必ず売れ残り品が発生するから値下げ処分セールは避けられない。そして商品デザインも最低でも年に4回(春夏秋冬)は変えなくてはならない。

2~3年という長い期間で、商品デザインを変えなくても済むという強みを自ら放棄していることになる。

さらにいえば、ワークマン女子の店舗面積は決して小規模ではないが、驚くほど広くもない。だいたい中型である。ざっくり40~100坪くらいだろう。今よりもメンズ比率を高めるということはその分、主要商品であるレディース服の陳列比率が減ることになる。

もしかしたらメンズの売上高は増えるかもしれないが、レディースの売上高は減る可能性も決して低くない。現在の主力品の売上高が減ることは決して得策とは思えない。

さらにいえば、何度も書いているようにメンズ、レディースともに本格的なカジュアルファッションに参戦するのであれば、95%弱もある高すぎるフランチャイズ体制を廃止して、直営店主体の体制に切り替えることが求められる。現在のカジュアルファッション市場は素早いMD対応が求められる。不振品番は一早く値下げして売り切り、好調品番は素早く追加補充を行う。また小刻みに新規商品を投入し、アタリを見ると同時に拡充するのか見切り処分をするのかを決定する、と言った対応が求められる。

このような対応がそれぞれのオーナーが経営者であり本部が意思統一できないフランチャイズ体制で構築できるという可能性は限りなく低い。

また、好調品番を追加補充する際にも、それぞれのフランチャイズオーナーが自腹で仕入れるという形を取るのであれば、できるだけリスクにならないように少なめに発注することになる。当方がオーナーでも「確実に売り切れると思われる数量」しか仕入れない。場合によっては好調品番でも追加仕入れしないというオーナーが出て来ても不思議ではない。

高いフランチャイズ比率こそがこれまでのワークマンの成長エンジンの一つだったが、カジュアルファッションを本格的に拡大するにおいては、高すぎるフランチャイズ体制は足かせにしかならない。しかし、根幹のシステムを破壊し再構築することは大きなリスクも伴う。

そして付け加えるなら「ワークマン女子」という店名も今回の施策には全く不向きである。ワークマン女子に一部メンズ商品が入っていることはある程度は知られていると思うが「女子」という店名の店にわざわざメンズ衣料品を探しに入ろうかという男性客はそんなに多くない。むしろ少数派だろう。

メンズ衣料を50%にまで高めたいのであれば「女子」という店名を廃止して、例えば「ワークマンファミリー」とかそういう店名に変えた方が有効だと当方は考える。

高すぎるフランチャイズ店比率、ワークマン女子という店名、いずれもワークマンがこれまで成長エンジン、話題性確保のアドバルーンとして有効に働いてきたものだが、メンズカジュアルファッションの拡大には不向きである。ただ、繰り返すように根幹システムを破壊し再構築するのは大きなリスクが伴うので難しい問題だが、これらを温存させたままでメンズカジュアルファッションの売上高を大幅に伸ばすことはほぼ不可能に近いと考えられる。ワークマンは今、大きな決断を迫られているといえるだろう。

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