1994年にコレクションデビューし、2024年で30周年を迎える丸山敬太。独立後、フリーランスの衣装デザイナーからキャリアをスタートさせ、生活雑貨やスポーツウェア、制服まで手掛ける活躍ぶりは、ファッション業界の中で異彩を放っています。30周年にまつわる全ての「コト」を100の景色に見立てた展覧会『丸山百景』をはじめ、さまざまな企画でアニバーサリーイヤーを駆け抜ける丸山。今回はデザイナーとしての足跡や、伝統美をルーツに持つ彼のデザインの世界観について紹介します。
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【目次】
丸山敬太とは
中学生でファッションに開花した丸山は文化服装学院でアパレルデザインを学び、在学中からさまざまなコンテストに入賞。卒業後は髙田賢三のもとで働くことを希望してパリまで面接に訪れますが諸々の事情で叶わず、BIGIグループのキャトルセゾンで「アツキ・オオニシ」の企画デザイナーを務めます。
1990年にフリーランスのデザイナーとして独立。DREAMS COME TRUEをはじめ、数多くのミュージシャン、タレントの衣装を手掛けたことで注目を集め、1992年に自身のブランドを設立します。1994年には東京コレクションでデビューを果たし、そこからわずか3年でパリコレクションに進出。以後も通常のメンズ・レディースだけでなく、着物やウエディングドレス、ゴルフウェアの制作、さまざまなブランドとのコラボレーションを行うなど積極的な活動を展開しています。「晴れの日に着る服・心を満たす服」をコンセプトにしたデザインでは日本の四季や伝統の要素をふんだんに取り入れ、ショーでも歌舞伎や太鼓の実演が行われるなど、和を感じさせる表現でポエティックな世界観を演出しています。
コンセプトは「晴れの日に着る服・心を満たす服」
丸山の手掛ける洋服は、ビジネスやスポーツなどで「用を満たす服」とは対象的に、「着るだけで心を高揚させる=ハレの日に着る服」であることをコンセプトに作られ、「誰かの大切な瞬間に少しでも関われたら」という想いがアイテムの一つ一つに込められています。このコンセプトは丸山が服飾の道を志したときから変わらず、「ひたすら楽しみながら服を作っていた」という学生時代の初心が現在も受け継がれています。
デザインには四季の移ろいや花など日本の伝統美が散りばめられ、繊細かつエレガント、時に妖艶なテイストを漂わせることで装うことの喜びを表現しています。
「デビュー当時はモードの世界で相手にされなかった」という丸山ですが、自身の信念と向き合いながら服作りを続けことでミュージシャンや俳優の晴れの舞台を彩り、その魅力が一般の人々にも伝播するという結果を生み出しています。
パッチワークとテキスタイルの魅力
丸山の洋服に見られるオリジナルのテキスタイルやパッチワークは、学生時代にそのスタイルを確立。テキスタイルで頻繁に使用される花や動物といったモチーフは幼少時代から描き続けているほど愛着があるもので、そこに日本の着物文化や和洋折衷の要素を加えることでブランドの個性を打ち出しています。さまざまな文化がミックスされた絵柄は見ているだけで心をワクワクさせてくれます。
パッチワークは、まだオリジナルの生地で服を作ることができなかった時代に、「既存の生地1種類だけでは個性を打ち出せない」と考えた末に編み出した技法。手作りによって2つと同じアイテムが存在しないことが大きな魅力となっています。
ミュージシャンや二次元とのコラボレーションも
丸山が独立直後に取り組んでいたミュージシャンやタレントの衣装デザインは、後のキャリアを形成するうえで重要な役割を果たしています。DREAMS COME TRUEにおいては1990年代初期からステージ衣装のデザインを担当。「史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND(ドリカムワンダーランド)」やNHK紅白歌合戦などで鮮やかな衣装を制作し、共に時代を築き上げてきました。
人気ゲーム『うたの☆プリンスさまっ♪』では、キャラクターが着用する衣装をデザインし、ラフォーレミュージアム原宿で開催された展示イベントでは、実物の衣装が登場。MA-1 ブルゾンやスウェットパーカーなどのコラボレーションアイテムも販売されました。近年ではきせかえアプリ『ポケコロ』の衣装デザインと監修を担当。株式会社BALとのコラボレートでバーチャル浴衣を販売するなど、デジタル、2.5次元での活動にも精力的に取り組んでいます。
世界観はインテリアやスイーツ缶に
丸山の圧倒的な個性は洋服だけにとどまらず、生活にかかわるさまざまなアイテムで発揮されています。
自身のファブリックを使用したホームコレクションやヴィンテージの工芸品などを取り扱うブランド「CASA KEITA」では、オリジナルの傘やキャンドル、お守り袋などのアイテムを購入できます。キッチン関連の商品もあり、爽やかなストライプ柄にフルーツ柄のワンポイント刺繍が映えるエプロンはインスタライブで寄せられたリクエストから商品化されました。ほぐし桜の柄が美しいランチョンマットなどもラインナップされ、料理や食事の時間を楽しくさせてくれます。
2021年に発足した色に関連するプロジェクト「KEITA MARUYAMA “OMOTASE” PROJECT」では、料理家・渡辺千尋がレシピを監修したクッキーをリリース。美しいデザインの缶箱と併せて大切な人への贈り物にしたい一品となっています。他にもハマナスの花から香りを抽出したローズウォーターやお茶といったアイテムにも丸山のこだわりが息づいています。
これらの商品は2016年、南青山にオープンしたコンセプト型ショップ「丸山邸」で販売されており、店内を見て回ることで丸山のクリエイティヴィティの根幹に触れることができます。
2024年に30周年を迎える
2024年は、丸山が自身のブランドでコレクションデビューしてから30年目にあたります。4月から30周年記念プロジェクト「丸山百景」がスタートし、コラボレート企画では「エンフォルド」「リリーブラウン」「メゾンミハラヤスヒロ」など100を超えるパートナーとの協業を展開しています。9月14日からは表参道ヒルズとラフォーレ原宿で、それぞれコンセプトの異なる展覧会を開催。表参道ヒルズでは、初公開となる1000種類以上のテキスタイルの原画やデザインスケッチや刺繍作品の展示が予定されています。ラフォーレ原宿では衣装デザインに焦点を当て、DREAMS COME TRUEや浜崎あゆみ、演劇の舞台やバレエなどで担当した衣装を見ることができます。30周年記念アイテムの受注販売も開始され、今後もファッションショーや丸山をモチーフとした少女漫画の連載も予定されており、今後もその動向から目が離せません。
丸山百景 「ケイタマルヤマ遊覧会」
表参道ヒルズ 本館B3F スペース オー -Fashion-
2024年9月14日(土)~9月23日(月)
ラフォーレ原宿6F ラフォーレミュージアム原宿-Costume-
2024年9月14日(土)~10月6日(日)
キュレーターに藪前知子氏を迎え、30周年を記念した展覧会を2ヵ所の会場で同時期に開催予定。
表参道ヒルズではファッションをテーマに、初公開となる1000種類以上のテキスタイルの原画やクリエーションの変遷が垣間見えるデザインスケッチ、アート性の高い刺繍作品の数々を展示。
ラフォーレ原宿ではコスチュームをテーマに、丸山の手掛けた500点以上に及ぶDREAMS COME TRUEや浜崎あゆみ氏、『うたの☆プリンスさまっ♪』、また演劇の舞台やバレエの衣装など見応えのある作品をセレクトして展示。
特設サイト:https://www.keitamaruyama.com/30th_anniversary
TEXT:伊東孝晃
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