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■ネット通販最大手のアマゾンは12日、生成AIを利用したチャットボットが米国内のすべての買い物客に利用が可能になったことを発表した。
生成型AIチャットボットの「ルーファス(Rufus)」は、パーソナライズされたショッピングツールだ。
ルーファスはオープンAI(OpenAI)の「チャットGPT(ChatGPT)」に対話形式で問うように買い物について質問を入力すると回答してくれるというもの。
テキストを介して利用者と対話を続けることでパーソナライズされた情報を提供することになる。
ルーファスはアマゾンの商品カタログやカスタマーレビュー、商品・製品に対するQ&A、インターネット上で提供されている情報をディープラーニングしていき、洗練された情報を提供できるのだ。
リリース時に公開されたルーファスPR動画では例えば「ドリップ式コーヒーメーカーとプアオーバー式(ハンドドリップ式)コーヒーメーカーを比較して(Compare drip and pour-over coffee makers)」と入力するとドリップ式とプアオーバー式の違いを説明している。
各方式のコーヒーメーカーの検索結果を表示するのだ。
さらに動画では「洗いやすいのはどっちですか(Whick is easy to clean)」の質問を入力するとルーファスが理由をつけて「ドロップ式の方が洗いやすい」と教えてくれている。
ユーザーが質問を考えなくても、商品名などの検索を入力するだけでルーファスは質問文を提示してくれる。
例えば検索窓に「コーヒーメーカー」と入力するだけで、検索候補の下部に質問候補がいくつも表示されるのだ。質問候補を選んでタップするだけでルーファスが回答するのだ。
ルーファスはランディングページにある検索画面だけでなく商品ページでも使用可能となっており、「このピックルボール・パドルは初心者向けですか?(Is this pickleball paddle good for beginners?」や「このジャケットは洗濯可能ですか?(Is this jacket machine washable?」「このコードレスドリルは持ちやすいですか?(Is this cordless drill easy to hold?」といった質問にもスペックやレビュー、カスタマーQ&Aを参考にして回答する。
なおルーファスは初期アマゾンの社員であったご夫婦の飼い犬から命名された。ウェルシュコーギーのルーファス(2009年に亡くなっている)はシアトルにある本社ビルの一棟にもつけられている。
買い物ツールとして生成型AIを導入する事例はすでにチェーンストア最大手のウォルマートの「テキスト・ツー・ショップ(Text to shop)」がある。
アプリの検索窓に例えば「ランチ(Lunch)」とキーワードを入力することで「ランチは何を食べようか?(What should I have for lunch?)」に「昼食の安い選択肢は?(What are some affordable lunch options?)」とキーワードが入った検索されやすい質問が自動的に生成される。
他にも「調理がかんたんな昼食は?(What are some easy to make lunch ideas?)」「子供たちのための栄養価の高いランチは何ですか?(What’s a nutritious lunch for my kids?)」「フィッシュタコスを作るには何が必要ですか?(What do I need to make fish tacos?)」等、様々な会話型の質問にも対応できるのだ。
ウォルマートでは事例として顧客が"子ども用にユニコーンをテーマにした誕生日パーティー"と検索することで、ペーパープレートやストリーマー(デコレーション用のカラーテープ)、パーティー用のお土産などの検索を個別で行う必要がなくなる。
ただ会話型AIを検索に埋め込むのは買い物支援ツールとしてはまだ序の口になる。ウォルマートではAR(拡張現実)と生成型AIを合体させた買い物支援ツールを視野に入れているのだ。
最近ではインホームデリバリーにAIを導入することを発表した。開発中として明かされたのはパーソナライズされた補充システム。
「インホーム・リプレニッシュメント(InHome Replenishment)」は顧客の注文データから購入パターンをAIが分析し、注文する可能性が高い商品をショッピングカートに自動的にのせる仕組みだ。
各家庭には牛乳や卵など定期的に購入している生鮮品等がある。これまでの注文から消費パターンをアルゴリズムで割り出して牛乳や卵など適宜にカートに乗せるのだ。
若干気味の悪さを感じるが、自分の消費行動をわかっている自分の分身がカートに商品を乗せるようなものだろうか。
注文のし忘れがなくなり、毎日の食生活や買い物の安心感につながる。直近の購入履歴のデータからAIがリアルタイムでアップデートしカートの商品内容を調整するとしている。
現段階でウォルマートは詳細を語ってはいないが、同社のサブスクリプション「ウォルマート・プラス(Walmart +)」にアドオンとして統合したインホーム・デリバリーに組み込まれる計画だ。
冷蔵・冷凍が必要な食品も留守時に配達するインホーム・デリバリーは配達員が冷蔵庫に直接入れることで利便性を高めるサービスだ。
ウォルマートは現場スタッフ以外の本社等で働く従業員5万人に向けて生成AIアシスタントを提供する計画も発表している。
ウォルマート従業員には大きく分けて2つのアプリがある。
一つはフィールド・アソシエイツ、つまり店で働く現場スタッフに向けた「ミー@ウォルマート(Me@Walmart)」だ。もう一つは本社スタッフに向けた「ミー@キャンパス(Me@Campus)」アプリだ。
ウォルマートはミー@キャンパス・アプリに生成AI機能「マイ・アシスタント(My Assistant)」を搭載させる。
生成AIを本社スタッフ用のアプリに組み込むことで、骨の折れる定型化された業務から開放し、従業員の能力の拡張を図るのが目的となる。
例えば長い文章の要約や分析、レポートやメールの作成等でマイ・アシスタントを使ってもらうようになる。
煩わしい業務をAI支援で行わせることで、企業環境におけるクリエィティブな問題解決から迅速な意思決定まで人の能力の向上が見込まれるのだ。
大規模導入の有効性が精査され、現場スタッフ用のミー@ウォルマート・アプリにも導入が間違いなく拡大されるだろう。
生成AIが買い物の場面に積極的に導入され、洗練もしている。近い将来、ユーザーの質問傾向から質問せずとも回答を提示してくれる機能も拡充するはずだ。
トップ動画:リース時に公開されたルーファスPR動画。例えば「ドリップ式コーヒーメーカーとプアオーバー式(ハンドドリップ式)コーヒーメーカーを比べて(Compare drip and pour-over coffee makers)」と入力するとドリップ式とプアオーバー式の違いを説明してくれる。他にも商品名を入力するだけで質問候補を表示したりする。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。ウォルマート・アプリのネットスーパーで「リオーダーオール(Reorder All)」機能があります。履歴から遡って以前に購入した注文分を一括して購入することができるのです。先月末、この便利な機能によりTikTokで大きな物議を呼んでいました。ウォルマート利用者のTikTokユーザー(@sewerlidd)が2年前に購入した商品の合計が、いまや4倍近くになっているとの動画をアップしたのです。45品目になる合計金額は2年前は126.67ドルでしたが、リオーダーオールで商品をカートに乗せたところ今や414.39ドルになってしまったと。で、値上がりに大きなショックを受けているとの動画です。3日間で100万回近くも再生された動画には8,000件近くもコメントが寄せられました。ある意味"あるある"ですけど、例えばアマゾンの場合ならAIチャットボットのルーファスに聞けば以前の価格がわかります。例えば「最後にXXXXを注文したときはいくらでしたか?(How much was the last time I ordered XXXX?)」と入力すればいいのです。
最も値上がりした購入品をAIに尋ねることもできるでしょう。これもパーソナライゼーションということです。
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