■日本では3日、1,000円札に5,000円札、そして1万円札の新紙幣の流通が始まった。20年ぶりとなる新紙幣は完全キャッシュレス化に向けて「最後のお札」になる可能性も指摘されている。
ADVERTISING
経済産業省の最新のデータによると2023年のキャッシュレス決済比率は39.3%だった。国が掲げてきた「2025年までに4割程度」という政府目標は前倒しで達成されたようだ。
今後もキャッシュレス化が進み将来的には世界最高水準の80%を目指すとしている。
一方で、フィンテック先進国であるアメリカでは当然のようにキャッシュレス化は進んでおり、リサーチ企業によって異なるものの概ね8割となるキャッシュレス比率となる。
特にミレニアル世代やZ世代など若い人たちのキャッシュレス化が進んでいることは想像に難しくないだろう。
これからの消費を担う若い世代がエンターテイメントで行く場所といえばディズニーランド。カリフォルニア・ディズニーランド・リゾートでは園内への入場も専用のアプリからチケットを購入する。
無論、ペーパーチケットではなくアプリに表示されたQRコードをスキャンして入場することになる。
ユニバーサル・スタジオ・ハリウッドも入場は専用アプリから購入するキャッシュレス&ペーパーチケットレス。
超円安になってもロサンゼルスで日本人が訪れるのがドジャース・スタジアム。大谷選手の活躍を見るにもネットを介したキャッシュレス購入が一般的なのだ。
日本の流通業界より5年~10年進む米国流通でもいたるところでキャッシュレスを確認できる。キャッシュレスが進んでいるというより流通DXが進化しているのだ。
分かりやすい事例はチェーンストア最大手のウォルマート。週客数が1.4億人以上となるウォルマートではアプリを介して生鮮品などを購入するネットスーパーが熱狂している。
ネットスーパーを含むウォルマートのEC売上高前年同期比率は2022年5月~7月期の第2四半期の12%増から、16%増、17%増と推移。2023年の第1四半期の27%増から24%増、24%増、17%増となり直近の今年第1四半期の22%増まで8四半期の平均伸長率は20%となっているのだ。
直近ではデリバリーコストも抑えられていることで「2年以内での(EC事業の)黒字化の目処がついたと思う」と明かしているほどだ。
ネットスーパーが熱狂する理由としてウォルマート・アプリの使いやすさがある。ナビゲーションのしやすさはアマゾン・アプリと比肩するか、それ以上となっているのだ。
ウォルマート・アプリのバーチャルな売り場に入った途端、フロア構成から棚の配置までその顧客に合わせて一瞬に変えてしまう。
他のお客が入っていれば0.1秒もかからず、そのお客に合わせてアプリにある棚の配置が最適化されてしまうのだ。
一人ひとりのお客に合わせて、その人の購入履歴から好みそうな商品からセール品まで勧めたりする。このようにネットスーパー注文ではいつも購入する商品が買いやすく並ぶ。
ウォルマートにはネットスーパー注文に強力な便利機能「リオーダーオール(Reorder All)」がある。
消費者は毎日の食品購入で多くの場合購入するものは同じになる。8割以上は購入する食品は同じになる。したがって過去の購入履歴からさかのぼり、同じ注文を一括して購入することもあるのだ。
ウォルマートではそれを"すべて再注文"機能で対応している。
店内の買い物でもアプリを使わせることで"キャッシュレス化"というより決済の利便性が進む。
ウォルマートCEOのダグ・マクミラン氏も「お客様には常に店内でアプリを開いてもらいたい」と胸を張る。
マクミラン氏自身もウォルマートでみんなと同じようにストアアプリをつかっている。
同氏は「先日、お店でコマンド・フック(壁を傷つけない、貼ってはがせる粘着タイプのフック製品)が見つからないのでストアアプリを使用したところ、すぐに売り場がわかりありがたかったです」とユーザー体験をシェアしている。
マクミラン氏は「アプリであらゆる種類のことを行うことができるよう(買い物に便利な)機能を追加し続けます」と語っているのだ。
アプリを使った買い物が売り場で増えることで会計時にもアプリを使って決済を行うのだ。
ウォルマート以外でもキャッシュレス化の体験はできる。たとえばサムズクラブのスキャン&ゴーもアプリ上で決済が可能だ。
手のひらで決済するアマゾン・ワン(Amazon One)もホールフーズ・マーケットやアマゾン・フレッシュで利用できアプリさえ起動する必要がない。
キャッシュレス比率8割の未来を見るなら、アメリカで大手小売チェーンによるアプリ体験をすべきなのだ。
トップ画像:ターゲットのセルフレジでアプリのQRコードをスキャンし、ペーパークーポンレス&キャッシュレス体験をするワークショップ研修参加者。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。1ドル161円という超円安時代にアメリカに来る人達は限られています。したがってアメリカへの団体旅行は減少傾向にあると思います。悲鳴を上げているのは旅行社で特に団体ツアーを取り扱うエージェントは厳しいと思います。先日も某旅行社から流通視察のコーディネーター依頼の打診が当社にありました。ただね、今の流通研修は店を見て回るようなものではなくなっています。それよりストアアプリをつかってネットスーパー注文したり、お店の売り場でも便利な買い物機能をつかって実際に決済したりするのが主流です。20人以上のグループでアプリ画面を共有したり、セルフレジに集まってフィンテックを体験するためには研修参加人数を少数にしなければなりません。超円安時代に加えて少人数制となれば流通視察を主催する旅行社に利益が出にくくなります。言い方を変えれば米国流通視察は高額化します。米国研修はかなり敷居が高くなり財政的に催行できる企業は限られることで健全化すると思っています。物見遊山が減るからです。
アメリカでキャッシュレス化の現状を視察する場合、ストアアプリ体験が必須になります。日本の小売チェーンでキャッシュレス化が進むことはストアアプリが便利に進化することを意味するのですよ。
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ】の過去記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境