■先日、ラーメン店で火災が発生したにもかかわらず、お客が避難せずに食事を続ける様子がニュースで公開され大きな話題を呼んだ。
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東京新宿歌舞伎町にある「ラーメン二郎」で先月28日、火災が発生したにもかかわらず、お客が待避せずに食事をし続ける映像が公開されたのだ。
火災現場にいた人が撮影した動画では、炎がほとんど天井まで上がり煙が店内に充満しているにもかかわらず、カウンターにいるお客はそのままラーメンを食べ続けている様子が映しだされていた。
問題になったのは、明らかに火事だとわかっていても店員がお客に向けて何もしていなかったことだ。
店員が避難を指示したのは、炎がさらに大きくなった直後だったという。幸いけが人はいなかったが消防車17台が出動するほどの火事になったのだ。
煙が充満する中でお客がラーメンをすすり続ける姿は狂っているように見えるが問題は店員の初動対応だ。
火事のような緊急時に店員がどのように行動するのかが問われる。それをイノベーションで解決しようとする米国のチェーンストアがある。
ターゲットは20日、スタッフ用に生成AIチャットボット「ストア・コンパニオン(Store Companion)」を全店に展開すると発表した。
ストア・コンパニオンは従業員に貸与する携帯端末用アプリ。
8月までに2,000店近くのターゲットに導入される生成AIチャットボットはスタッフからの作業プロセス等の質問に対応するものだ。
大手チェーンストアには作業プロセス・ハンドブック等のマニュアルや研修等があるものの、売り場で働く店員全てがタスク等を熟知しているかといえば疑問がのこる。
ターゲットでは例えばお客がサークルカードのサインアップについて質問された際、ストア・コンパニオンを参照することで対応できるとしている。
他の人に聞く手間や時間を省ける他、アメリカの現場でよくあるスタッフからの「それは私の仕事ではありません(なので知りません)」を回避できるというわけだ。
またハリケーン等の災害時に停電した場合、冷蔵庫の管理についてもストア・コンパニオンに聞けば冷蔵庫にシートを掛ける等の作業をステップ・バイ・ステップで参照できる。
停電後のレジの再開についても生成AIのチャットボットでチェック可能となる。分厚いマニュアルや本社に確認することなく緊急時に対応できるようになる。
音声入力もできるAIアプリにより「火事発生」というワードにも即座に反応してまず最初にやるべきことが提示されるのだ。
スタッフ用に生成AIを導入するのはターゲットだけではない。
チェーンストア最大手のウォルマートは昨年10月、本社スタッフに向けたアプリ「ミー@キャンパス(Me@Campus)」に生成AI機能「マイ・アシスタント(My Assistant)」を搭載させた。
生成AIを本社スタッフ用のアプリに組み込むことで、骨の折れる定型化された業務から開放し、従業員の能力の拡張を図るのが目的となるのだ。
例えば長い文章の要約や分析、レポートやメールの作成等でマイ・アシスタントを使ってもらうようになる。
煩わしい業務をAI支援で行わせることで、企業環境におけるクリエィティブな問題解決から迅速な意思決定まで人の能力の向上が見込まれるのだ。
スマートフォンを使いこないし生成AIにも慣れたZ世代が今後、職場にどんどん入ってくる。大手チェーンストアといえども職場環境を向上するためにもイノベーションを取り入れていかなければならなくなる。
いつまでも「よくわからない」「失敗したら」など静観していたらさらなる人手不足を招くことになるのだ。
トップ画像:現場スタッフに貸与している携帯端末とアプリの「ストア・コンパニオン」。生成AIチャットボットだ。緊急時の初動プロセスなどを聞くのに頼りになりそうだ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。後藤もラーメンが大好きです。煙が立ち込める店内でラーメンをすすり続けるお客には、どこか共感を覚えます。笑ってはいけませんが、火事現場で誰も逃げ出さずにみんな並んでラーメンを食べる後ろ姿はシュール。幸い怪我人がいませんでしたが、対応が遅れたりすれば大惨事になりかねません。万が一、ガス漏れを起こしていたらと考えるとゾッとします。爆発かなにかで、麺を口から垂らしながら吹き飛ばされるオッサンはアニメだけにしてもらいたいです。こういった火事のように、もしもの際の手順がわかっていなかったのが問題。平常時に「地震が起きたときの初動プロセスは?」も分厚い防災マニュアルを参照するようでは、そもそも重いハンドブックに手が伸びません。災害時の細かいプロシージャもいちいち覚えてられませんし。災害時の人命や施設の被害を最小限にするための行動方針や役割分担を明確化も、理想的にはスタッフ全員が知識共有できていないといけませんが、難しいところ。だからこその生成AIチャットボットなのです。
厨房に大きな炎が立ち上がる中、ラーメンをすする客を前にして、タバコ片手の店員が生成AIに「火事だけど」と入力するのもシュールですけどね。
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