様々な事柄は受け手によって感想が異なるが、当方はワークマンが迷走しているように見えて仕方が無い。
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幸いにしてワークマンは寛大な企業だから、当方にも逐一プレスリリースを送付してくださっており、感謝に堪えない。昨日、いただいたリリースだが、正直なところ読んでいて意味があまりわからなかった。
そして早速記事化されていたわけだがこれである。
ワークマンが、女性向け衣料品店「#ワークマン女子(以下、女子店)」で取り扱う専売品に、男性向けの商品を初めて導入する。その中で、家族で買い物する際、#ワークマン女子に男性向けの専売品がないことが既存店に流出する原因となっていたため、来店した男性客に購入機会を与えるため男性用専売製品を30アイテム投入することを決めた。ゆくゆくは男性の売場の15%を専売PBにし、バッグや帽子などの専売製品をさらに増やす予定。ワークマンの他業態では取り扱わない、#ワークマン女子全体の専売製品比率を2年間で6割まで高め、差別化を図るという。
とある。
実はプレスリリースに書いてあることはほとんどこの記事と同様で、文面の意味は理解しやすいが、腹落ちしない感とかこれじゃない感しか当方には感じられない。
最近、ワークマン自身が決算発表で「既存店に顧客が定着しにくい」という悩みを吐露していたことは以前のブログでも紹介した。
既存店に顧客が定着しない理由は様々あるだろうが、ワークマン女子に男性向け専売品が無いことだとはちょっと考えづらい。
ワークマン女子は当方もなんばシティ、天王寺MIOで時々買い物をするが、専売品かどうかは不明だが男性向け衣料、靴は存在しているしそれを何度か買っている。当方の感覚からすると「すでに男性向け商品があるのに、それが足りないという認識は疑問だし、さらに新商品を投入するの?」というものでしかない。
本当にワークマンはこの認識なのだろうか?
そもそも「女性向け店舗ワークマン女子」という位置付けすら怪しくて、なんばシティも天王寺MIOも男性向け製品が並列されている。となると、「女性向け」という肩書も疑問だし、男性専売品がないから既存客が定着しにくいという分析も疑問でしかない。
そもそも男性臭しかしない「ワークマン」という店舗に、違和感極まる「女子」をくっつけたという時点で個人的には疑問だった。すでに屋号自体に当初から矛盾を感じた。
衣料品業界において女性の購買数量は、ざっくり言って男性の2倍~3倍あり売上高もそれくらい異なる。だから女性に焦点を当てるというのはマスを狙うブランドなら定石である。かつてメンズ比率の方が高かったユニクロも必死で女性客を増やして今に至っている。
だから「女子」というのもわからなくはない。しかし、その「女子」に今度は男性専売品を置くというのは、矛盾にさらに矛盾を重ねているようにしか見えない。「ワークマンプラス」という屋号はわかるが、「ワークマン女子」という屋号は当初から賛成できなかった。
既存店に顧客が定着しにくい理由を実はワークマンの本社側は把握しきれていないのではないかと、個人的に勝手に推測している。
外野から眺めている人間が感じるチェーン店としてのワークマンの弱点を挙げてみたい。
1、標準店という概念が薄そう(もしくはあまり無い)
2、各店舗の顧客データをほとんど把握できていないのではないか?
という2点が大きいのではないかと思う。
好調なチェーン店には必ず「標準店」という基準が存在する。もちろん基準は各企業ごとに異なるが、例えば「20坪で取扱品番は200」とかそんな具合に設定されている。
この「標準店」を基準として、それよりも大きい店はどうするのか、小さい店を出店する場合どのようにするのか、ということを決めておくことがチェーン店には必要不可欠になる。また都心店なら〇〇とか田舎のロードサイド店なら〇〇とかそんな基準も必要になる。品揃えに関しても「最低でも全店共通商品は〇〇」という基準もブランドとしては必要である。
次に顧客データに関しては全くの想像だが、例えばワークマン女子に男性専売品が無いから家族連れの男性客が定着しないという分析は果たして正しいのか?である。
大阪市の都心ターミナルという立地にあるなんばシティ、天王寺MIOを見ていると、家族連れ客も間違いなくいるが、それ以上に若い独身女性客というのも多い。となると、なんばシティ、天王寺MIOに関しては男性専売品が無いから顧客が定着しないというのはあまり当てはまらないということになる。
ついでに言うと、すでに散々ワークマン女子で男性衣料品を買った身からすると、今更「男性専売品」と発表されたところでサプライズも期待も無い。むしろ「???」と思うくらいである。
で、この2点というのはチェーンストアオペレーションには必要不可欠なのだが、自分は現時点のワークマンにこれが不十分だと感じる最大の要因は何度も書いているように「フランチャイズ店95%という体制」にあるのではないかと考えている。
この2点を全店徹底させるには、ハッキリいうと直営店の方がやりやすい。本社主導ですべて従わせられることができる。しかし、フランチャイズ店だと各店舗はオーナーによる経営だからそれは難しい。なにせ商品の仕入れもオーナーがリスクを背負ってやっているわけだし、店舗物件の条件もそれぞれ大きく異なる。
標準店の概念も品揃えの統一も直営店よりはやりにくいし不徹底ということにもなりやすい。
さらにいうと、顧客データの管理も直営店の方がやりやすい。フランチャイズ店がどこまでの精度で顧客データを取っているのかもわからないし、店舗ごとにもバラつきが大きいと予想される。
ユニクロの場合、2023年11月末の時点で国内フランチャイズ店はわずか10店舗しかない。ユニクロに限らず大規模衣料品チェーン店はほとんどが直営店経営となっている。
このことを踏まえて以前から、フランチャイズ店の比率がワークマンは高すぎると当方は指摘してきたのだが、ここに来てそのひずみが顕在化しているように思えてならない。
あと蛇足かもしれないが、既存店に固定客が定着しない理由として
1、店頭で品切れになっている場合が多い
2、何がいつ、入荷されてくるのか情報が少ない(メルマガがない、アプリもない)
3、ネット通販で品切れになってしまっている物が多い(ネット通販用の在庫が少ない?)
などが挙げられるのではないかと思っている。
1に関していうと、店舗に行ってみて品切れになっている物が多いと覗く頻度が減りやすい。そしてこれは2と連動するのだが、新商品の入荷情報が全くないという点がさらに輪をかけている。
2に関していうと、当方も公式通販サイトに登録しているがメルマガがほとんど送られた来たことが無い。これをユニクロ、ジーユ―に比較するとその不利は明らかで、ユニクロ、ジーユ―からは「新商品〇〇販売開始」というメルマガが逐一送られてくる。それを見ると、また販売開始日に店舗へ足を運ぶという動きにつながる。
さらに続けると、ワークマンは通販サイトのアプリが無い。これも致命的だろう。
ユニクロ、ジーユ―はメルマガを取得していなくてもアプリからも「新商品〇〇販売開始」のお知らせがある。だから足を運ぶが、ワークマンはこのアクションが皆無である。
顧客もそれぞれ仕事に学校に忙しい。いつどんなものが入荷するのかもわからないし、新商品が入っていたところですぐに品切れになるワークマン店舗に逐一足を運んで確認する人なんていないだろう。
そして、3のネット通販は店頭以上に品切れになる品番が多い。店舗在庫検索機能はあっても、店舗在庫も品切れならわざわざ店に足を運ばない。
この3点ともに多すぎるフランチャイズ体制の弊害だろう。
まず、1に関しては、仕入れは店オーナーのリスクだから売り切れても商品を仕入れない可能性は低くない。これが直営店なら売り切れればその都度在庫を無条件で配送できて、機会損失が緩和される。
2と3は連動していて、ネット通販の管轄は本社だから、フランチャイズ店が多すぎる手前、フランチャイズ店の売上高を食わないようにネット通販を強化しづらい。むやみに強化してしまうとフランチャイズ店が不利益を被るのでネット通販を運営する本社との軋轢が強まってしまう。
これまでは、カジュアルにも使用できる服も置いている作業服店だったため、フランチャイズ体制が上手く行っていたが、企業規模の拡大を目的として大々的にカジュアル服・ファッション服店への変貌を選んでしまったため、これまで上手く行っていたフランチャイズ体制がワークマンの足かせになりつつあるというのが現状だろう。そしてネット通販の強化もままならない。
以前から何度も書いているように、カジュアルチェーン店・ファッションチェーン店各社がなぜ直営店主体の体制を採り続けているのかということである。それはそうでないと運営が成り立ちにくいからで、それなりの理由があったからである。
考え方を変えて2倍売れたワークマンだが、もしかすると、フランチャイズ体制に固執したままだと中長期的に今度は、考え方を変えずに業績が厳しくなったワークマンという事態になりかねないと当方は思いながら眺めている。
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