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俳優、そして写真家 安藤政信を駆り立てるもの

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QUI

俳優、そして写真家としても精力的に活動する安藤政信が、写真展「MARC JACOBS THE FUTURE FLORAL憂鬱な楽園」を渋谷パルコにて開催。安藤にとって2度目となるMARC JACOBSとの取り組みで、自身の死生観を込めた花の写真作品を撮り下ろした。

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QUIでは、写真展の開催初日を迎えた安藤にインタビュー。作品に込めた死生観、写真にかける思いに迫った。

無痛と苦痛の感情がひとつになって生きている

― QUIでは2021年に、安藤さんが監督された映画『さくら、』についてインタビューさせていただきました。

先日、『さくら、』で脚本を担当してくださった木舩(理紗子)さんに、ぜひ写真展を観に来てほしいと連絡したら、安藤さんの死生観は当時から一貫していますねと言ってもらえて。俺は映像でも写真でも、人間が生きていくこと、死んでいくこと、その記憶や時間、光、そういうものがすごく好きなので、今回の作品も花の朽ちていく時間と人間の感情を重ね合わせながら作っていきました。

― 『さくら、』のキービジュアルもそうでしたが、今回も赤い花を撮った作品が目を引きました。

俺は赤という色をすごく大切にしていて。赤が表すのは血であり、生に対するバイタリティであり、死や終焉でもあるから。

― 確かに、ポジティブにもネガティブにも捉えられる強烈な色です。

青が好きな人もいれば緑が好きな人もいて、人それぞれ大切にしている色を持っていると思うんだけど、俺にとってそれが赤なんです。

― 近年、安藤さんが写真作品を発表する際には一貫して、本展と同名の「憂鬱な楽園」というタイトルをつけられています。矛盾を孕んだ言葉ですよね。

そうそう。人は無痛と苦痛、両方の感情がひとつになって生きているんじゃないかと思っているので。いつもそういうことを考えながら写真を撮っています。

― 本展のリリースでは「エロス」と「タナトス」というキーワードも挙げられていましたが、安藤さんの物事の捉え方ってアンビバレントなんですよね。異なるものが同居しているからこその強さをすごく感じます。

物事をいろんな角度から見て、ひとつの作品に落とし込んでいくことは、役者として台本を読んで、自分が発するセリフにどういう意味合いがあるのか、その裏側まで探っていくことと似ているような気がしています。

― 確かに。悪役を演じるにしても、その人なりの正義を持っていることもありますからね。

そう。あとは(写真家として)関わった人を、本当にきれいに撮ってあげたい。

― そこは絶対?

その気持ちはずっとぶれていません。対象を茶化す方向でマウントを取るようなクリエイティブもあると思うんだけど、そういうことは絶対に嫌で。写真でも、映画でも、役者でも、音楽でも、俺が関わるなら称えてあげたいと思う。

小さいころからずっと死を近くに感じる

― 本展の作品には安藤さんの死生観が込めているとのことですが、若いときから死というものに対して強い関心があったのでしょうか?

俺はバイオレンスな生き方をしてきたわけじゃないけど、小学校のときに大ケガをして自分の体から大量の血が流れて、そのときの血の味や暖かさの感覚は残っていて。そこに対しての恐怖感が、赤という色への興味につながっているのかも。

― そんな原体験が。

あとは友人や親戚の自死や、家族の老いや大病など、小さいころからずっと死を近くに感じることはありました。だから死生観についてはすごく考え続けていて。

― いわゆるメメント・モリのような。その死生観が作品に色濃く影響を与えていると。

ドラマ『コード・ブルー』で脳外科医の役をやったときには、事前に脳の手術のビデオが送られてきたんです。でも俺は実際の手術を見ておきたくて。承諾をいただき、脳の手術を見せてもらいました。

頭蓋骨にドリルで穴を開けてあらわになる骨の白や血の赤、骨と血が混ざってピンクになる。そうやって自分が経験した色味や質感や匂いを、花にたとえて写し出している部分もあります。

― 安藤さんの花の写真は、外側じゃなくて内側というか。たとえばアーヴィング・ペンやロバート・メープルソープは花からにじみ出る生命力や造形的な美しさを表現していましたが、安藤さんは花の内面的な美しさ、そして恐ろしさを写し出しているように感じました。

そうだね。きっと子供のときに観た、ホラー映画の影響もあるなと。川崎の銀柳街に国際劇場という映画館があって、小3ぐらいのときにアニメの『北斗の拳』が上映するというので、俺と弟とお父さんと3人で観に行って。

― めっちゃいい思い出じゃないですか。

でもそのときに流れた予告が、ジョージ・A・ロメロ監督の『死霊のえじき』だったの。今だと考えられないんだけど。

― まさかのゾンビ映画……僕は子供のころは怖くて観られませんでした。

俺は小学校の5、6年ぐらいからホラーは結構観ていて。おかげで三池崇史さんや塚本晋也さんたちともすごく話が合いました。

今回もゾンビの造形などを手掛けている特殊メイクアップ・アーティストの藤原カクセイさんに、俺はどうしても人間が死んで土に還るまでの経過、九相図を撮りたいから造形をしてほしいと伝えて。今回はその予告として1点を展示しています。

― 九相図ということは今後、全9点の作品が作られる?

ちゃんと美しい造形を作れる予算や機会があれば。でもあんまりストレートにやりすぎると殺人現場みたいになっちゃうので(笑)。今回は死んだ人の表情の造形を撮って、そこに花の写真のレイヤーを重ねていきました。花をひとつの時間や感情だと捉えて、人生の幸福や傷などを重ねて1枚で表現したかったんです。

― 安藤さんはいま49歳ですよね。人生100年時代でまだまだ老け込む年齢ではないと思いますが、若いころとは死に対する感覚にも変化があるのではないでしょうか?

そうだよね。40過ぎると大病を患う人も少なくないし、そうでなくてもちょっと体調が悪いなってことは絶対にあって。体や心にガタが出てきたときにこそ生きたいという気持ちが出てくる。

だから俺は若いときよりも、今どういうふうにちゃんと生きようかということへの思いが強くなっている気がするな。

― 歳を重ねて死に近づくほど、より生に意識が向いていく。

だんだんそういうふうになるんじゃないかな。だって、たとえばガンに対しても40代だと現実的に考えられるし、それイコール死につながる。あとガンになった方のドキュメンタリー作品などで苦しんでいる姿を観ていると、俺にはそんな経験を受け入れる勇気はないから。だったらちゃんと生きるしかないですよね。

― 単刀直入に、自分自身の死は怖いですか?

俺は絶対怖いと思う。

― 長生きしたい?

長生きしたいかとなると難しいね。やっぱり、生きることはめちゃくちゃつらいから、これをあと50年続けるのかなと思うとしんどい。生きるのも死ぬのも両方きついから、その気持ちを写真で昇華してるんじゃないかな。

だからとにかくもっと撮りたくてしょうがない。撮るということ、表現するということが毎月ないと、自分の中でのバランスが崩れるから。

写真はこれからもずっとおもしろい

― MARC JACOBSの服をまとったモデル(Sen Zhao)のカットで写されている花は桜でしょうか?

桜の時期にタイミングを合わせて撮ったから、納期も遅くなっちゃったんだけど。

― 夜の風景ですね。

どうしても夜の多摩川の土手で撮りたくて。自分が若いときからずっと見ていた桜だったので。モデルさんも、彼女が19歳ぐらいのころからプライベートで撮らせてもらっていた人なんです。やっぱり普段撮らせてくれる人に、こういう形で恩返しするのも写真のクリエイティブでできることだと思うから。

― 今回はロケーションもモデルも自分のルーツにつながっていることが重要だったんでしょうね。

俺は洋服には詳しくないけど、自分の頭の中に美意識はあるから、洋服のコンセプトだけ聞けばそれを自分なりの解釈できれいに撮るということは絶対できる。要は役者として台本を読み込んで、その役に落とし込むのと同じことで。

― 写真表現の可能性についてはどのように考えていますか?

誰でも写真が気軽に撮れる時代だからこそ、自分の感性だけが必要とされているというか。写真はこれからもずっとおもしろいんじゃないかな。

― そう言い切れる強さを感じます。

俺は本当に写真が好きなんだよ。今回は作品を購入できるので、たくさんの人に手にとってもらいたいですね。好きな活動を続けていくにはやっぱりお金も必要だから。

― 日本にもアートを所有する文化が根づいてくるといいですよね。

今まで自分が参加している写真展に行くことはあまりなかったんだけど、やっぱり自分がちゃんと在廊して、作品を手にとってもらうということもすごく大切だなと思って。今回はなるべく在廊するつもりです。

― お客さんのナマの反応も、続けていくためのモチベーションになりそうです。

そうですよね。やり続けないと。俺はもっとやりたいし、写真にはもっとできることがあると思っているから。

― 近年はヒップホップシーンのライブを多く撮っていますよね。

ライブのリハーサル、楽屋の中、本番、本番後のアーティストの表情をずっと見ているのがすごく好きで。ワンマンライブだと本番前にすげえナーバスになっているのもわかるし、ライブが終わったあとの解放感も伝わってくる。それを近い距離感で撮らせてくれるって、本当に感動する。

― それこそLIVEって「生きる」ですから。

本当にそのとおりだと思う。お客さんの顔がすごくいきいきしていて、見ているとグッとくるもん。

― きっと安藤さんはお芝居や写真を通して、そういう生きる力のようなものをお客さんに届けているんでしょうね。

自分の表現でそういうことを受け取ってくれる人がいるんだったらすごくうれしいです。

Profile _ 安藤政信(あんどう・まさのぶ)
1975年5月19日生まれ、神奈川県出身。1996年に映画『キッズ・リターン』で俳優デビューし、日本アカデミー賞新人賞など多数の映画賞を受賞。映画『バトル・ロワイヤル』(00)、『サトラレ』(01)、『69 sixty nine』(04)、『亡国のイージス』(05)などに出演の後、2008年にチェン・カイコー監督の『花の生涯 梅蘭芳』で海外進出を果たし、その後も中国、台湾の作品に参加。ドラマでは「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- THE THIRD SEASON」(17)など、話題作に出演。写真家としても精力的に活躍の場を広げている。
Information安藤政信写真展
「MARC JACOBS THE FUTURE FLORAL憂鬱な楽園」
会期:2024年5月18日(土)〜6月2日(日)
会場:渋谷パルコ3F MARC JACOBS EVENT SPACE
東京都渋谷区宇田川町15-1 ( 080-7313-5083 )

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