■上にある画像を眺めてもらいたい。各棒には割合を示す単位である%の表示が見える。
左側から37%、6%、8%、1%、1%、12%、16%、17%、27%、24%、24%、17%、22%とある。
ADVERTISING
なにかの棒グラフとわかるものの、水平ラインのX軸には単位が隠れている。
流通業界に関係するグラフなのだが、この時点で何のグラフか分かったなら相当な研究熱心な人と言えるだろう。
ここでヒントをひとつ。実は隠れているX軸は時間軸となる。つまりある市場の成長を示した棒グラフになるのだ。
時系列に並べた棒グラフは多くの場合、1年前と比較しているもの。右端の22%の棒グラフは直近ということは直感的に理解できるはず。
また再考してもらいたいのだが、自分の思いつく回りに20%前後で成長している市場はあるだろうか?
「20%」という数字だけで思いつくのは"年利20%"の高配当をうたう違法な社債を販売し、1,300人から80億円を集めた詐欺事件かもしれない。
年利20%の高配当など普通はありえない。騙される人たちはあとをたたない。
しかし上のグラフにある数字はニセモノではなくホンモノだ。しかもネット通販最大手のアマゾンさえ逆立ちしても太刀打ちできないほどホットな成長を遂げている。
むしろアマゾンとの距離をどんどん広げているのだ。アマゾンを持ち出してきたところで電子商取引関連の棒グラフというヒントが浮き上がってきたと思う。
アメリカのネット通販でこんなにも凄いサービスがあるのに日本のメディアはほとんどスルーしている。
流通メディアはサービスの詳細を分析するような特集を組んでもいいはずなのに無視だ。専門家さえ見て見ぬ振りをしているかのようにも思える。
ここでひとつ種明かしをするとX軸の単位は3ヶ月毎になる四半期ベース。つまり直近となる右端の棒グラフは直近の2月~4月期であり、前年同期比22%の増加を意味する。
すると連続8四半期となる2年間ずっと二桁成長していることがわかるはずだ。
日本の流通業界で8四半期連続して成長を維持しているサービスがあるだろうか?平均伸長率は20%だ。
ところで左端の棒グラフ(37%増)から急激に1%増まで落ち込んでいる理由はもうわかるかもしれない。コロナ禍で凄まじい伸びをした後の反動だ。
さらにヒントを明かせば左端の棒グラフは2021年の2月~4月期となる。直近となる右端は2024年、つまり今年の2月~4月期となる。
しかし二桁成長を2年間しているものの単体では黒字化できていない。この時点で「ダメだこりゃ」と思ったらあなたのビジネス脳は死んでいると思ったほうがいい。
これはネットワーク外部性を利用したもので必ずしも黒字化にする必要はないものだ。
ネットワーク外部性とはネットワーク的な性質を持ったサービスや製品における経済的特性のひとつであり、利用者が増えれば増えるほど、そのサービスや製品の利用者全体の利益・利便性が向上していくという特性のこと。
利用者数が増えて一気にナンバー1になるとネットワーク外部性が働きさらに顧客数が増えるという好循環を生み出す。
利用者が増加し続けることでネットワーク効果が働いて、そこから派生していくような多くの収益源をもつことになるのだ。
言い換えれば「Amazonフライホイール効果」だ。
まずは低コストのビジネスの仕組み「LOWER COST STRUCTURE」を作ることで、顧客に低価格「LOWER PRICES」で商品を提供する。
商品を安く提供すると、顧客に高い満足度「CUSTOMER EXPERIENCE」を与えることになる。これに満足した顧客は再び買い物をしながら新たな顧客も増え商品全体の取引量「TRAFFIC」が増加する。
取引量が増加すると、さらに販売企業「SELLERS」が参入する。販売企業が多く参入すると、商品の品揃え「Selection」も増える。
そして品揃えが豊富なことで、さらに顧客満足度は高く新たな顧客を獲得する、というようにサイクルが持続しAmazonの成長「GROWTH」は加速し続ける。
仮に顧客から利益をあげていなくても販売企業から出品料や広告料を徴収すれば黒字化も容易に可能だ。
当社のワークショップ研修ではこの"ホット"なサービスをじっくり体験する。クライアントは口を揃えて「凄い!」と感動する。
無論、感嘆な声をあげるだけでなく「なぜこれほどまでに熱く成長しているのか?」「我社で同サービスをやるならどこを参考にすべきなのか?」「フライホイール効果の生みの親であるアマゾンはなぜ真似できないのか?」などそれぞれ考えてもらうのだ。
さて、ここで棒グラフの正解を発表しよう。チェーンストア最大手のEコマース売上高の推移だ。
「なーんだ」と思うかもしれないが、世界一の小売チェーンが二桁で成長しているサービスを持っているということに意義がある。
ECといってもウォルマートの場合、売上のほとんどがネットスーパーになる。直近でカーブサイド・ピックアップや宅配サービス、マーケットプレイスが牽引し前年同期比で22%の増加となっているのだ。
言い換えればアメリカに流通視察に来てこれほど活況を呈しているサービスに何もしないのはありえないとも言える。ウォルマートのネットスーパーは必ず体験しなければならない"ホット"なサービスなのだ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。たまにはクイズもいいよね、ということで出題してみました。ウォルマートのネットスーパーは8四半期連続して二桁成長を維持しているのですよ。しかも8四半期の平均伸長率は19.9%!20%成長している"超ホット"なサービスは日本にありますか?当社のワークショップでは必ず参加者にアプリを介してネットスーパーを体験してもらっています。ウォルマートのネットスーパーは利用者の生活文脈にしっかり収まっていることまで体感してもらいます。なぜならアプリを起動した途端に売り場が即座にパーソナライズされるから。例えるなら、いつも購入している野菜や果物・お肉などの生鮮品が整然と「バーチャルアイル」の売り場に並んでいるということです。座った途端にその人の身体や癖に合わせてフィットするように微調整するカーシートのようなものでしょう。こんなにも凄い成長しているのに、米国のスーパーで商品構成グラフをつくる作業とはアホでしょう。「縦軸に商品の陳列量(フェース数)、横軸に売価のグラフ」より出題したグラフを見てヨ!
米国流通業には新たな凄いファクトがあるのに、どうしてバカのように同じことを繰り返すのでしょうか?しかも高いコストをかけて。情報弱者って、ある意味無敵ですな...
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ】の過去記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境