チェーンストアが継続的な店舗閉鎖 デスティネーション・ストアは死語に
1924年の創業から100年となった楽器販売のサム・アッシュ・ミュージック。節目の年に全店閉鎖となり長い歴史に幕を閉じるのだ。
1924年の創業から100年となった楽器販売のサム・アッシュ・ミュージック。節目の年に全店閉鎖となり長い歴史に幕を閉じるのだ。
チェーンストアが継続的な店舗閉鎖 デスティネーション・ストアは死語に
1924年の創業から100年となった楽器販売のサム・アッシュ・ミュージック。節目の年に全店閉鎖となり長い歴史に幕を閉じるのだ。
■今年に入ってもチェーンストアの破綻や大量の店舗閉鎖のニュースが続いている。
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アパレルチェーンのエクスプレスが先月22日、連邦破産法の適用を申請しエクスプレス全530店のうち95店舗と傘下のアップウエスト(UpWest)の全12店舗の閉鎖を発表した。
先月5日には4州に371店を展開する百均チェーンの99セント・オンリー・ストアが企業精算を発表している。
老舗デパートメントストアのメイシーズは3月、向こう3年間で不採算店となる約150店を閉鎖することを発表した。サンフランシスコ市ユニオンスクエアにある旗艦店など50店を今年中にも閉鎖するのだ。
同じ月にはダラーツリーが傘下のファミリーダラー1,000店近くの閉鎖を発表している。
自然派化粧品で知られるザ・ボディショップが2月、本部のある英国で破綻したことを受け米国とカナダでも3月1日に破産を申請し米国内の全店舗(約60店)にカナダにある数十店舗も閉鎖することになったのだ。
3月には手工芸品の布地等を販売するチェーンのジョアン(Joann)が破綻申請している。物価高が影響し趣味への支出を大幅に減らしたのが要因だ。
ただジョアンは新たなファイナンスを得たことなどから破産状態から即座に脱却できたことで、クラフトショップ全815店はそのまま営業できている。
直近での破綻のニュースといえばティーン向けアパレルチェーンのルー21(Rue 21)だ。
ルー21は2日、3度目となる連邦破産法11条を申請。再建できたこれまでの破綻とは異なり全543店舗を閉鎖する。
2002年当時、ペンシルヴェニア・ファッション(Pennsylvania Fashion)としてチェーン展開していたが破綻したため翌年にルー21に改名した経緯がある。
一時期はショッピングモールなど1,000店以上を展開していたルー21は2017年にも400店を閉鎖して倒産していたのだ。
今回の破綻では全店を閉鎖することで1970年からの歴史に幕を閉じることになるのだ。
長い歴史といえば今年でちょうど創業から100周年を迎えたチェーンが終了する。
1924年創業の楽器販売チェーンのサム・アッシュ・ミュージックが2日、7月末までに残っている全42店を閉鎖すると発表した。
家族経営のサム・アッシュは3月にもニューヨークにあるフラッグシップストアを含め18店舗の閉鎖を発表していたのだ。
破綻したチェーンストアを含め続々と店舗閉鎖を決めているのは消費者の購買行動が大きく変化しているからだ。
チェーンストア最大手のウォルマートの動向からもわかるように消費者はオンラインで購入してしまう。
オンライン売上が全体の20%以下であっても消費者は便利なストアアプリを使って店の売り場に行く前に買い物を終えてしまう。
なお週客数が1.5億人にもなるウォルマートも2019年から現在までに150店以上も店舗数を減少させているのだ。
アマゾンの台頭で多くのチェーンストアが粛清されたことで、家電や玩具など特定分野で圧倒的な品揃えと低価格で勝負する大型店舗を意味する「カテゴリーキラー(Category Killer)」が死語となった。
現在は特定の商品の最終購買地として消費者が来店する店舗をさす「デスティネーションストア(Destination Store)」が死語になりつつある。
お客が「そこに行けば必ず欲しいものが見つかる」という期待を持ってそのお店だけを目的に行くのだが、そもそも今のお客は買い物で外出したがらない。
店の売り場まで行くのがストレスであり、パーソナライズに慣れた消費者にとってタイパが悪いのだ。
これまでは実際に弾いてみて確認しなければならなかった楽器でさえ、オンラインで購入してしまうのだ。
むしろ盗難にあうリスクから店舗運営はこれまで以上に難しい舵取りとなっているのかもしれない。
見方を変えればお客を売り場まで連れてくるというデスティネーションストアは商人の奢ったアイディアだ。
現代人のライフスタイルは個人の嗜好によりどんどんパーソナライズが進んでいるのに、最大公約数的な売り場では勝ち目がないのだ。
トップ画像:1924年の創業から100年となった楽器販売のサム・アッシュ・ミュージック。節目の年に全店閉鎖となり長い歴史に幕を閉じるのだ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。後藤はよく「日本の小売チェーンはテレビリモコンのないテレビだ」と喩えています。大手チェーンストアのなかにはいまでも「ウチはデスティネーションストアになりたい」と宣っている経営者もいます。言い換えれば「テレビのチャンネルを変えたり、ボリュームの上げ下げ、スイッチのオンオフのコントロールすべては、テレビのところまで来てやりなさい」ということです。こんな不便をお客に強いていることを、チェーンストア大手のトップは気づいていません。なぜなら彼らの多くが年老いて自分の価値観を刷新しようとしないから。買い物は人々の生活に応じて変わっていくものです。人間は進化するのに、そこに「原理・原則」を用いていたのが前世代の流通コンサルタントでした。彼らから多くを学んだ、現在の高齢経営者は「買い物はお店(売り場)でするもの」から脱却できていないのです。デスティネーションストアがいかに不便であるかを今も認識できずにいるのです。老齢だから目がスマホに合っていないこともありますね。
お店や売り場しか見ていないと、そのしわ寄せが必ず次の世代の若い経営者に行くことになります。強調しますが、手のひらで買い物できるお客にとって、売り場まで来させるデスティネーションストア(Destination Store)はストレスフルです。
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