世界全体のユニコーン企業数は、リサーチ会社CB Insightsによると現在約1200社。そして、インドメディア「INC42」によると、2024年3月時点でインド国内ユニコーン企業数は114社。よって、インドは世界のユニコーン企業の10%近くを占めていることになる。
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INC42は2022年を「インドにおけるスタートアップの歴史において大きな節目」に位置づけている。というのも、その年にインド発のユニコーン企業が100社を超えたからだ。そのうち一社がLivspaceである。
2014年に設立された同社は、住宅リフォームのオムニチャネルプラットフォームを構築し、確実にその規模を拡大していった。設立から8年後、LivspaceはKKR主導のシリーズFラウンドで1億8000万ドルの資金を獲得し、企業価値10億ドル以上のユニコーン企業入りを果たしている。
アジア最大の住居リフォームプラットフォーム
Livspaceが展開する住宅リフォーム用オムニチャネルプラットフォームは、現在アジア最大級とされている。7万5000件以上のリフォーム実績、4か国40以上の都市に50か所以上のリアル店舗があると聞けば、同社の規模がイメージできるだろうか。
住宅リフォームを簡単に発注できることが特徴で、住居オーナーは5つのステップで理想の住居を手に入れることができる。デザイナー紹介→Livspaceを予約→発注→施工開始→引越し、といった具合だ。しかも、注文から45日以内の引き渡しと10年保証が約束されている。
さらに、同社サイト上のカタログから、キッチンや風呂場などのリノベーションしたい箇所・デザインテイストを選択し、部屋のサイズなどを入力するだけで簡単に見積りが取れる。インドには親日家が多いことから、“Shoji screen”や、“Tatami flooring”など和モダンのデザインも提供しているという。
スピーディーで透明性の高いリフォーム体験を可能にしたのは、同社が独自のテクノロジーを活かして構築したデジタルプラットフォームにある。
Livspaceのデジタルプラットフォーム上では、住居オーナー、デザイナー・施工会社、OEM・製造会社というリフォームに関わる全てのステークホルダーが繋がっている。
住居オーナーが求めるのはインスピレーション、信頼、価格、納期、品質の透明性。デザイナー・施工会社が求めるのは安定した収入、ソフトウェアツール、予測可能なサプライチェーン。そして、OEM・製造会社が求めるのは、より多くの製品を販売すること。全ステークホルダーのニーズを満たすデジタルプラットフォームを構築したことで、効率的で透明性の高い住居リフォームのエコシステムを作り出した。
モデルルームでリフォーム後の住まいを体験
同社の壮大な住居リプラットフォームを支えているのが、精鋭のエンジニアとデザイナーが揃うLivTech部門だ。エンジニアリング・チームは最先端のテクノロジーを活かして顧客体験の最適化を支える。一方、デザイン・チームは、住居リフォームの発注から引き渡しまでの工程が直感的で快適なユーザーエクスペリエンスになるよう取り組んでいる。
しかし、どんなにデジタルプラットフォームが優れていても、ユーザーがリフォーム後の住居が持つ雰囲気や質感まで体感することは不可能だ。そこでLivspaceは、インド国内では35ヵ所以上の「エクスペリエンス・センター」と呼ばれる店舗拠点を構えている。多様なコンセプトでデザインされたモデルルームがあり、リフォーム後の住まいを住居オーナーが体験できるようになっている。
同センターでは、デジタル上では感じることの難しいカーテンや家具などの質感を実際に触れて確かめることも可能だ。3500人以上の登録デザイナーの一人と対面で相談しながらデザインを決めることができる。
デジタルと店舗を連動させたオムニチャネルプラットフォームでユーザーの住居リフォーム体験の最適化を図るLivspace。その壮大な顧客体験への取組みから、英国に本社を置く世界最大級のブランドメディアGlobal Brands Magazineで2021年「ベスト・インテリアデザイン・ソリューション・ブランド」に選ばれている。
創業から10年後、インド国内に凱旋しIPO目指す動き
大学時代の友人同士であるAnuj Srivastava氏とRamakant Sharma氏によって設立されたLivspace。そのきっかけは、自分達自身が住居リフォームに取組んだ時の体験にあった。当時、住居リフォーム業界は、プロセスが細分化されており調整が難しく、最適な専門家の選定、適正な価格と品質の確保も困難であったという。そのような体験から、住居オーナーが理想のマイホームに住むまでのサービスをワンストップで提供するプラットフォームの構築を決意したSrivastava氏とSharma氏。
Srivastava氏は、Googleのeコマースチームでプロダクトマーケティングのグローバルマネージャーを務めた経験がある。ユーザーエクスペリエンスのプロでもある同氏は、スタートアップ界のチェスの達人でもあり、常に次の一手を考えながらLivspaceをリードしている。
一方の Sharma氏はかつてMyntra社のコアチームメンバーにして技術部のVPを務めた人物。eコマース、プロダクトディベロップメント、デジタルマーケティングなどにおける10年以上の経験を生かし、Livspaceのテクノロジーを牽引している。
同社は2019年にシンガポールに進出、国際市場をターゲットとするため本拠地を同国に移していた。2023年のシンガポールグループ企業発表によると、Livspaceの営業利益は前年度比85%増の11億4800万ルピー(約1億8800万シンガポールドル、約211億円)を記録。しかし、金融メディアMintの報道によると、インド市場の活況を受けて2025年には母国での上場を目指しているとのこと。今後の展開に注目したい。
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