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セレクトショップ「ステュディオス(STUDIOUS)」などを展開するTOKYO BASEが、創業20年目を迎える2028年1月期に向けた初の中期経営計画を策定した。「人材・組織」「実店舗」「EC」「商品」「海外事業」の5つを成長戦略の主な柱に据え、グローバル展開の拡大や新業態の開発などに取り組みながら、2028年1月期の連結実績で売上高300億円(2024年1月期比150%)、営業利益30億円(同340%)、営業利益率10%を目標に掲げる。長期的には、高価格帯の商品を提案する“嗜好品”としてのファッションのマーケットで「日本一」を目指す。
「人材・組織」では、初任給40万円への引き上げや、若いスタッフを起用した新規事業といった取り組みに着手。「日本一のファッション企業を目指すにあたり、給与も日本一の水準に」という考えに基づき、初任給の改定にあわせて既存正社員のベースアップも実施し、全正社員が月給40万円以上となった。月80時間分の固定残業代が含まれていることから賛否が沸き起こったが、3月15日の発表から2週間で新卒エントリーは2〜2.5倍、中途エントリーは6〜7倍に増えたという。TOKYO BASEの谷正人代表取締役CEOはメディア向けの質疑応答の時間の中で残業時間について問われると、結果主義を前提に、平均して10〜20時間、デザイナーのような職種で多くて40時間というのが実態で、45時間超えたら始末書を提出されるなど管理を徹底していると強調した。月80時間分と設定しているのはベンチマークにしている企業に倣ったとしている。
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「実店舗」では、“成長の踊り場”として前期(2024年1月期)は国内外ともに新規出店ゼロで、店舗数は14店舗純減の83店舗に縮小した。今後はドミナント出店や路面出店の強化を図り、2025年1月末に87店舗(4店舗純増)、2028年1月期末までに25億円を投資して30〜40店舗の新規出店および既存店の改装に取り組み、全世界100店舗体制を目指す。
苦戦が続く「EC」は重点課題の一つ。2024年1月期の売上高は自社ECで15億3600万円(前期比86.5%)、ZOZOTOWNで37億4200万円(同90.0%)、EC合計で55億1900万円(同88.8%)と減収した。トップラインのためにタイムセールおよびクーポンの配布の施策を実施したことから、売上高に対してセール比率は40%を占めるなど非効率化が進んだという。これを受けて、昨年10月にタイムセールおよびクーポンの配布を廃止。今後は5億円を投資して自社ECを改善しながらグローバルECの開発を行う。
「商品」では、新業態の立ち上げを含むポートフォリオの拡充や、セレクトショップでのオリジナル商品開発に取り組み、売上および利益増を図る方針。
「海外事業」では、現在展開している香港、中国、米国(今年4月出店)に加えて2つのエリアに進出する予定。米国初進出となるニューヨークの店舗は、モードやストリートのブランドが並ぶソーホーの南エリアに位置し、「オープニングセレモニー(OPENING CEREMONY)」があった建物2棟のうち1棟に出店する。日本人社員3人を派遣し、同社が得意とするブランドや3人の社員が売りたいブランドの商品を中心に並べるという。初年度の売上目標はオープン後に決定する。
その他、新業態を今期中に2つ、これに加えて2028年1月期までに3つ、合計5つ立ち上げる。今期始動する新業態の1つはステュディオスの顧客層である20代よりも若い層を狙ったセレクトショップを計画。もう1つはオリジナルブランド「ユナイテッド トウキョウ(UNITED TOKYO)」や「パブリック トウキョウ(PUBLIC TOKYO)」を“卒業”した30代後半以降の女性をターゲットに据える予定だ。
M&Aも視野に入れる。同社はこれまで「ミハラヤスヒロ(MIHARAYASUHIRO)」や「マイン(MYne)」などを手掛けるソスウ、「ファクトタム(FACTOTUM)」を展開するロスチャイルドと資本提携を結んだ実績があるが、今回計画するM&Aはステュディオスで取り扱うブランドを対象に、10億〜30億円を投資して取得を検討する。
谷代表は2028年の日本のファッション業界について、アフターコロナの現状を踏まえて「ソフト面の変化はあると思うが、大きな変化はないだろう」と予想。本質を見極めながら、経営拡大を目指すと考えを示した。なお、2025年1月期は来期以降の成長フェーズに向けた収益基盤の盤石化を図る年と位置付け、利益高確保を優先。売上高は200億円(前期比100.1%)、営業利益は16億円(同181.6%)、純利益は7.5億円(同223.6%)の過去最高益を見込む。
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