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ファミマの「コンビニエンスウェア」ヒットの理由を考察

ファミマの「コンビニエンスウェア」ヒットの理由を考察

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー
南 充浩

大手コンビニチェーンのファミリーマートでのオリジナル衣料品販売が注目され続けている。

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「物のよしあし」とか「発送の転換のすばらしさ」とかそういう評価記事はあるが、ファミリーマートの店舗数の多さに言及した記事はあまり見たことが無い。(あくまでも個人の知る範囲において)

「ファミマの服が完売ペース」みたいな記事も見かけることがあるのだが、そもそも1店舗あたりの入荷数量はどれくらいなのだろうか?

たしか靴下は販売累計数量の記事を見たことはあるが、話題のスウェットパーカは見たことが無い。

以前にも書いたことがあるが、ファミマの衣料品の秘密はその店舗数の多さにあると考えられる。

ファミマの店舗数は毎月の増減はあるがだいたい16000店前後で推移している。ただ、ここ最近は減少傾向が続いている。

プロパーと呼ばれる本社管轄と、AFC(エリアフランチャイズ)に別れているが、プロパー店舗数が昨年秋から減少率が高まっている。

23年10月は閉店80で純減67

23年11月は閉店72で純減47

23年12月は閉店60で純減40

24年1月は閉店99で純減81

となっている。閉店数と純減数が異なるのは新たに開店する店舗数もあるためである。

23年9月の閉店が18で純減が4だったことを考えると10月からの閉店数は激増しているといえる。この理由は門外漢たる当方にはわからない。ご存知の方がおられたらお教えいただきたい。

AFCとは地域全体でフランチャイズ管轄をしている形態で沖縄、九州はそういう管理をしているようだ。ファミマの月次報告のAFCは沖縄、南九州、JR九州リテールが挙げられており、合計店舗数は926~929でずっと安定推移している。

このままプロパー店舗数が減り続けるとAFCと合わせても16000店舗を割り切る勢いで店舗数は減り始めている。

とはいえ、今回は全店16000店として話を進めてみよう。

以前にも書いた通り、3990円の裏毛スエットパーカの品質は悪くないとされている。何を持って高品質かというと議論の分かれるところではあるが、アメリカ産のヘビーオンス(ザックリ言うと分厚い)裏毛生地を使っている点が高品質だとされている。

横道に逸れるが、よく「生地の品質の高い低い」と言われるが、これが意味するところは幅広い。

1、珍しい糸、希少価値のある糸、高級な糸で製造されている

2、耐久性がある

3、整理加工などでキッチリ始末されている

4、通常ではあり得ないほど薄い、または厚いなどの珍しさ

5、機能性が高い

6、製造に手間がかかっている

などなど、場合によって使い分けられている。

ただ、全ての意味を兼ね備えた生地は存在しない。どれかの部分(または複数の部分)にクローズアップされて「品質」として評される。

だから以前にも書いたが、分厚い綿裏毛生地は高品質とされる場合が多いが、機能的かというとそうでもない。洗濯をすると乾きにくいし、重い。愛好家はその重さこそが良いとするが、愛好しない人にとってはその重さや乾きにくさはデメリットになる。生地の評価なんて実はそんなもんである。

極細番手の綿やウールで織られた生地は高品質だとされているが、耐久性は無い。

それはさておき。

3990円の割には高品質な生地を使っているとされるスエットパーカだが、販売先が16000店もあるなら、各店に1枚ずつ納品されるとしても最低でも16000枚を生産することができる。

ザックリとしたミニマム生産ロット(本当は工場や商品ごとに異なるが)が1型100枚だと考えると、1型で16000枚というと相当に生産ロットは安く抑えられる。

5枚ずつ納品するなら8万枚、10枚ずつ納品するなら16万枚の生産量となり、現在の国内市場ではユニクロやジーユー、しまむらなどに匹敵する生産数量になる。となると、ある程度安く販売できることに全く不思議ではない。

もちろん、ファミリーマート間でも年間売上高に優劣はあり、売れる店舗もあればそうでない店舗もある。そのあたりを加味して考えても10万枚くらいは製造できるのではないかと思う。

仮に、10万枚製造して各店に5枚~10枚のスエットパーカが納品されたとしよう。

ファミリーマートにおけるスエットパーカの販売期間設定は分からないが、投入された時期から考えて5月末くらいまでの3カ月間だと仮定する。

3カ月間あれば5枚を完売することはさして難しくないのではないだろうか。コンビニ商品としては高いとはいえ、3990円である。これが39900円なら完売は難しいだろうが、3990円でこれほどメディアで話題になっているのだから知名度もそれなりに高くなっており、難しいことではないだろう。

まあ、販売期間を1年に設定しておけば、6月以降暑くて売れなくてもまた9月以降で残った数枚を売り切ることも可能である。

ファミマのオリジナル衣料品について衣料品業界が考えるべきことは、物云々よりも売り方と店舗の在り方ではないかと思う。

衣料品業界の人が思っているよりも「ちゃんとした服屋」に入店することに抵抗を感じる消費者は多い。当方はある程度は慣れているが、それでも高額スーツ店なんかに冷やかしで入店するのは避けたいと思う。

逆にユニクロ、ジーユ―、無印良品、ハニーズ、ワークマン女子などの低価格大手チェーン店は「いらっしゃいませ」程度の掛け声だけで放置してくれるので冷やかしでも入りやすい。冷やかしで入ってみて、思わぬ値下げ品を見つけて買ってしまうことも多々ある。

この手の低価格大手チェーン店の多くがいつも入店客でにぎわっているのは入店することへのハードルの高さを感じない人が多いということも考えられる。

コンビニになれば、入店の心理的ハードルはもっと下がる。用事も無いのに入ってくる人も多い。そういう人にとってはコンビニでそこそこマシでそこそこ話題でそこそこ安い服が買えるとなると、ユニクロやジーユーよりも入店しやすく買いやすいと感じる部分も大いにあるのではないだろうか。

あらゆる年代の人にとって行きやすく入りやすいコンビニという店舗だからこそ洋服も売りやすいという状況に変わってきた部分もあるだろう。

「丁寧な接客を心掛ける」とはよく聞くが、きっと丁寧な接客を求める層と、コンビニ服を求める層では接客に対する印象も全く違うのだろうと思う。

ファミマのコンビニ服は発想の転換というよりは、店舗数の多さやコンビニという店への入店ハードルの低さという現状を上手く分析して、そこに衣料品の製造と販売を当てはめたと感じる。

創造力というよりは分析力とアレンジ能力の高さではないだろうか。

今後似たような売り方は増えてくるのではないだろうか。ドラッグストアや百均あたりがこの手の単品衣料を仕掛けてくる可能性は高いのではないか。

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