2015年前後に世界的なファッショントレンドとなった「ノームコア」。ノームコアスタイルの代名詞的存在といえばApple創業者のスティーブ・ジョブス氏ですが、シンプルかつ普遍的、そして周囲に調和する彼の服装こそノームコアの見本でした。そこからノームコアは長らくトレンドに君臨し続けましたが、アフターコロナ以降はファッションにも華やかさや攻めの姿勢がリバイバル。しかしそれらを凌駕する勢いで今世界を席巻しているのが、「クワイエットラグジュアリー」と呼ばれる新たなムーブメントです。今回はノームコアをよりリュクスにアップデートしたこのトレンドについてご紹介します。
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ノームコアとは
「ノームコア」のノームとはノーマルのことで、それに中心や核心を意味する「コア」を掛け合わせた造語です。究極の普通であることを指すこの言葉こそ、ノームコアスタイルの真骨頂。例えば黒のセーターにデニムパンツ、ニューバランスのスニーカーというように、シンプルで普遍的なアイテムを組み合わせる「普通の」スタイルがノームコアです。ベーシックなアイテムだけで構成するため誰にでも挑戦しやすく、かつ派手さよりも自然さを、周囲との調和を求める層にフィットしました。
ノームコアの鉄板アイテム
ノームコアスタイルはレディースよりも圧倒的にベーシックなデザインが多いメンズによって牽引されましたが、メンズ・レディースともにこれぞノームコアの鉄板と言えるアイテムがいくつかあります。ボトムスならチノパンツやカーゴパンツにジーンズ、トップスだと白シャツや装飾のないセーター、バスクシャツなど。足元はニューバランスやコンバースのスニーカーがそれにあたり、年齢や性別を問わず身につけられるものが主流。また、これらの色は白・黒・グレー・ネイビー・カーキなど、モノトーンかアースカラーで、個々のアイテムが目立たず主張しないモノたちが鉄板のアイテムです。
ノームコアからのクワイエットラグジュアリー
今でこそトレンドのど真ん中ではないものの、普遍的だからこそいつの時代も愛されるスタイルがノームコアです。低価格なアイテムでも体現でき、幅広い層が取り入れやすいスタイルであるのも長く愛される理由のひとつ。例えば無印良品やユニクロの定番品はどれもノームコアに直結するデザインが大半で、特にノームコアを意識していなくても結果的にノームコアスタイルになっている人も少なくないでしょう。冒頭でノームコアのアップデート版がクワイエットラグジュアリーだと記述しましたが、そういった無意識的なノームコアスタイルではなく、「数の選択肢がある中であえてノームコアなモノを選び取る」という本来のノームコアが時代を経てクワイエットラグジュアリーに進化しました。
クワイエットラグジュアリーとは
クワイエットラグジュアリーは、その名の通り「沈黙する(または静かな)ラグジュアリースタイル」のこと。つまり、一見高級なものだとわからないけれど、仕立てや素材の良さで着る人を引き立てる装いを指します。少し前のトレンドに「ロゴドン」と呼ばれたブランド名がデカデカとあしらわれたファッションがありましたが、クワイエットラグジュアリーはロゴドンの対極に位置するもの。ブランドロゴやモチーフを押し出さず極めて控えめ。しかしクラス感の漂うスタイルこそがクワイエットラグジュアリーなのです。
クワイエットラグジュアリーのポイント
ノームコアとクワイエットラグジュアリーの大きな違いは「高級感」。ノームコアよりもクワイエットラグジュアリーの方が大人向けのスタイルとも言えます。実践するには、そもそもラグジュアリーな素材や仕立ての服が欠かせません。例えば上質なウールやカシミヤのニット、仕立ての良いパンツやコートなど、リュクスな素材と丁寧な仕立てがあってこその装いだからです。そのため現在のクワイエットラグジュアリーブームを牽引しているのは、ジル サンダーやロロ・ピアーナ、ボッテガ・ヴェネタにザ ロウなど、いずれもミニマルなデザインながら素材と仕立ての良さ、シルエットの美しさが際立つブランドばかりです。
もちろんこれらのブランドに手が届かなくとも、シンプルでベーシックなアイテムの中から、縫製や生地、カッティングにこだわりのあるアイテムを揃えるのもひとつ。アイテムをなるべく同じトーンで組み合わせ、余計な装飾を省く引き算のコーディネートをすることで、クワイエットラグジュアリースタイルを体現することができます。まずは手の届く範囲で、このスタイルを着こなすポイントを押さえておきましょう。
・フラットさを重視
柄やボタン、装飾など、服の起伏をなるべく配したフラットなデザインを選ぶこと。フラットゆえに生地感やシルエットの美しさが強調され、服そのものの品格が際立ちます。
・トーン・オン・トーン
同系色のコーデは落ち着きや品の良さを演出しますが、同じ色ではなく似た色調で少し異なるトーンを重ねるのが上質に見えるコツ。淡いピンクにベージュなど、差し色ではなく同じ色調のグラデーションを意識するとより洗練されて見えます。
・セットアップ
スーツやスリーピースなど、トップスとボトムスを揃えるのも上質感への近道。ただし仕事用のセットアップではないので、シルエットで少し遊びを取り入れ意外性をプラスするなど、少し肩の力を抜いたデザインのものがおすすめです。
・アクセントになるメタリック
黒やグレーの同色コーデ、しかもシンプルとなれば、場合によっては間伸びした印象になるもの。そこでワンポイントとして首元や手首などにメタリックなアクセサリーを取り入れ、その存在感で全体を引き締めるテクニックが活躍します。あえて1点だけ印象的な輝きを投入することで、服そのものの上質感がより立体的になりますよ。
クワイエットラグジュアリーは、いわば服そのものが持つ質の良さがモノを言うスタイル。上質なアイテムは何年先も着回すことができ、服の良し悪しを見抜く目を養うことにも繋がります。また、クワイエットラグジュアリーの基本はシンプルゆえに、着る人自身が持つ素材や雰囲気が際立ちます。ファッションアイテムだけでなく、立ち姿や振る舞いなど自分自身の魅力を高めることでクワイエットラグジュアリーを優雅に着こなすことができますよ。
TEXT:横田愛子
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