資生堂が2023年12月期連結決算を発表した。売上高が前期比8.8%減の9730億3800万円、コア営業利益が同22.4%減の398億4200万円、親会社の所有者に帰属する当期利益が同36.4%減の217億4900万円と減収減益だった。日本および米州、欧州、アジアパシフィックにおいて成長するも、処理水問題などによる、中国、トラベルリテールの日本製品買い控えや景況感悪化の影響を受けた。なお、コア営業利益は前回発表予想の350億円を、親会社の所有者に帰属する当期利益は前回発表予想の180億円を上回って着地した。
セグメント別では、日本事業の売上高が同9.4%増の2599億円、コア営業利益が売上増による差益増や費用効率化などにより、18億円となり黒字に転換した(前期は130億円の赤字)。多くのブランドで革新的な新商品の展開やマーケティング活動を実施したことが奏功。ブランドでは愛用者が増加した「クレ・ド・ポー ボーテ(Clé de Peau Beauté)」や「SHISEIDO」、リニューアルしたシワ改善クリーム「レチノパワーリンクルクリーム」や新発売したエイジングケアクリーム「エリクシール トータルV ファーミングクリーム」などが好調だった「エリクシール(ELIXIR)」がけん引し、またインバウンド需要も緩やかに回復した。
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中国事業は、売上高が同4.0%減の2479億円、コア営業利益は70億円だった。上期における売上増による差益増と、市場環境変化を受けて減収となった下期におけるマーケティング活動の一部見直しや機動的なコストマネジメントなどにより、黒字に転換(前期は39億円の赤字)。上期がSHISEIDOやクレ・ド・ポー ボーテが堅調に推移した一方で、下期に処理水問題による影響、特に中国最大のEコマースイベント「ダブルイレブン(W11)」の同社の売上が、市場以上のマイナス成長となるなど、Eコマースの売上が減少した。
そのほかアジアパシフィック事業の国・地域では、台湾が成長に転じたほか、韓国や東南アジアの成長が継続し、売上高は同1.1%減の672億円の横ばい、コア営業利益が同7.5%増の50億円となった。米州事業は、「ドランクエレファント(DrunkElephant)」が引き続き大きく伸長するも、売上高は同20.0%減の1102億円、コア営業利益は同46.2%増の112億円。欧州事業は、「ナルシソ ロドリゲス(narciso rodriguez)」やナーズが好調だったものの、売上高は同8.9%減の1169億円、コア営業利益は同51.7%減の33億円だった。
トラベルリテール事業は、日本は力強い回復を実現した一方で、韓国・中国海南島が規制強化や旅行者を中心としたビジネスモデルへの回帰の流れを受けた流通在庫調整の影響を大きく受け、売上高は同19.0%減の1325億円、コア営業利益は同54.6%減の171億円だった。
2024年は、2025年度を最終年度とする中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」について、戦略の骨子は維持しながら市場環境の変化を踏まえ目標を再設定。コア営業利益率を2024年に6%、2025年に9%、将来的に15%を目標とする。藤原憲太郎社長COOは「持続的な利益成長とレジリエントな事業構造の構築を目指し、成長戦略と構造改革を両輪としたビジネストランスフォメーションをやり遂げる」と語る。政策として、400億円超のグローバルコストの削減を挙げた。セグメント別では日本の構造改革アクションの完遂および成長の加速、中国・トラベルリテールの質の高い成長の実現、さらに米州・欧州・アジアパシフィックの成長加速とした。またコアブランド(SHISEIDO、クレ・ド・ポー ボーテ、ナーズ、ドランクエレファントなど)の成長モメンタムのさらなる加速や、グロスプロフィットの拡大も挙げた。
日本市場はSHISEIDOやクレ・ド・ポー ボーテなどけん引するブランドをさらに成長させ、将来的に売上構成比70%を目指し、スキンケア技術をほか領域への適用による新カテゴリーの創出やインナービューティなどの新たな事業を推進する。またEC化率を2025年までに30%にまで拡大するとし、得意先ECでは、OMO強化によるシームレスな購買体験を実現し、また自社サイト「ワタシプラス(Watashi+)」を2024年に刷新し体験価値の向上を図る。
2024年12月期の連結業績は、売上高が同2.8%増の1兆円、コア営業利益が同38.0%増の550億円、親会社の所有者に帰属する当期利益同1.1%増の220億円を見込む。なお組織改革、生産性向上、店舗・オフィス合理化など構造改革費用を中心に非経常項目で300億円を計上する。
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