今年のお買い物を振り返る「2023年ベストバイ」。7人目はファッション誌や広告、映画など幅広い業界で活躍するスタイリストの梶雄太さん。性別・世代を超え、ユニーク且つ、オリジナリティ溢れるスタイリングで業界内外から支持される梶さんが選んだ2023年に買ってよかったモノ6点は?
目次
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SUNSEA コート
FASHIONSNAP(以下、F):1品目は「サンシー(SUNSEA)」のコート。梶さんは、アウトドア系のアウターをよく着ているイメージがあったので、コートを選んだのは意外でした。
梶:よくそう思われるんですが、コートも結構着ていますよ。スウェットにデニムを合わせるスタイルは固定なので、アウターを変えることが秋冬のスタイリングの醍醐味になるので結構たくさん持っています。サンシーは好きなブランドの1つだし、実は展示会のポスターモデルをしたこともあるくらい関わりが深くて。
F:ブランドとの出会いはいつだったんですか?
梶:確か10年くらい前じゃないかな。僕のマネージャーがサンシーのデザイナーと同じ専門学校出身で、それで2人で展示会に行ったのが最初だったかな。あと、タグのイラストを描いているのが友人のケンくん(加賀美健)ということもあり、共通の知人が多かったので自然と繋がっていった感じですね。今回選んだコート以外にもサンシーのアイテムはいくつか持っています。
Image by: FASHIONSNAP
F:ではその中でも、このコートを選んだ理由は?
梶:これはブランドの定番であるラクダコートというアイテムなんですけど、その名の通りラクダを体現したような綺麗な色味と素材感が気に入っています。だいたいこの手のコートって黒かグレーが多い印象ですが、このキャメルの色味とウールの素材感のバランスがちょうど良いなと。手触りも柔らかくて上質な感じがするし。
F:確かに柔らかくて、しっとりしていますね。サンシーはオンラインの販売もなく取扱店舗も限られていますが、これはどちらで買いましたか?
梶:僕は展示会で注文しました。今年はサンシーのアウターが着たい気分で、絶対にオーダーしたいという気持ちで展示会に行きましたが、その上がりきったハードルを悠々と越える完成度の高さとクオリティを見せつけられ感動しました。この満足感を味わえるブランドは中々無いと思っていて、期待を裏切らない洋服を作り続けているサンシーはやっぱりすごいなと思います。
F:ちなみに梶さんが思うサンシーの魅力ってなんですか?
梶:ブランドのアティチュードとか世界観が感じられるところですかね。規模はわからないですがずっと成長し続けているじゃないですか。独特の歩み方だけど堅実に伸び続けているのを見ていて、自分でブランドをやるようになってから、その凄さを再認識するようになりました。自分のブランドだとまだ僕の脳内をきちんと洋服に落とし込めていないというか、洋服を通じて100%言語化できていない部分がありますが、サンシーはそうではない。もちろんデザインやディテールも大切ですが、それ以上にプロセスが大切だと思っていて。なのでプロセスをきちんと洋服に落とし込んでいるサンシーのアイテムは魅力的に感じます。
F:これから冬本番ですが、どんなアイテムと合わせる予定ですか?
梶:シンプルに着たいなと思っています。ごちゃごちゃせずに自分なりに大人っぽく着た方がいいかなと。色と素材がいい塩梅に仕上がっているから、シンプルに合わせた方がコートが輝いてくれるかなと思います。実はまだ1回しか着られていないので、寒くなるのが待ち遠しいです。そういう意味では、今年1番楽しみにしているアイテムですね。
Image by: FASHIONSNAP
JERZEES ジップアップパーカー
F:2点目は「ジャージーズ(JERZEES)」のジップアップパーカーです。
梶:本当になんの変哲もない普通のパーカーです。最近プルオーバーは割と街中でもよく見るので、逆にジップアップが新鮮かなと思い買いました。個人的にジップの仕様も好きなので。
F:このアイテムとの出会いは?
梶:ジャージーズは、僕が10代の頃からで好きでよく着ていたんですが、気づいたら見なくなっていて、ここ最近はブランドのことすら忘れてしまっていました。ただ僕の知人が「フルーツオブザルーム(FRUIT OF THE LOOM)」などのボディメーカーの商品を扱っている会社にいて、そこで久しぶりに見かけ当時のことを思い出して懐かしい気持ちになり、3枚くらいまとめて購入したんですよ。
F:大人買いですね。
梶:基本的に僕はボディメーカーの洋服ばかり着ているので、いくらあっても困らないんですよ。2000円くらいで買えるので、まとめて買ってもそんなに罪悪感も無いですし。
F:では、このパーカを買ってよかったものに選んだ理由は?
梶:僕にとってボディメーカーのアイテムは主食的な存在なんですよね。このパーカが白米だとしたら、さっきあげたサンシーのコートはおかず。どのようなアイテムを組み合わせて美味しいご飯にするかという考え方なので、そうなるとボディメーカーのアイテムは白米として欠かせない存在になるわけです。
F:シルエットや着心地はどうなんですか?
梶:別に可もなく不可もなく想像通りですよ(笑)。シルエットもズドン系で、素材も粗野でラフだし。良い意味で何も考えていない感じですかね。でも気軽に着られるので重宝しています。
Paraboot トレッキングブーツ
F:3点目は「パラブーツ(Paraboot)」のトレッキングブーツ。履きジワも入って履き込んでいる印象ですが、買ったのはいつ頃ですか?
梶:1ヶ月くらい前ですね。ほぼ毎日履いていて、本当に気に入っています。
F:アヴォリアーズというモデルですね。
梶:そうです。トレッキングシューズがモチーフなんですけど、木型はブランド定番のシャンボードと同じものを採用しているみたいで、シャープですっきりした見た目が特徴の一足です。
F:パラブーツといえば、というような代表的な品番ではないように思いますが?
梶:スニーカーもそうなんですけど、「ACG(オール・コンディションズ・ギア)」的なニュアンスがあって、ギア感覚で履けるものが若い頃からずっと好きなんですよ。第何時ブームか分からないですけど、また自分の中で久しぶりにブームが再燃して。街中でも「ティンバーランド(Timberland)」や「メレル(MERRELL)」のシューズを見かけるようになったじゃないですか。それを傍目に見ていて、なんとなく自分の中でもトレンドが来たんだと思います。一度雑誌の企画で使わせてもらうことがあり、そこで実物を見て買うことにしました。10万円くらいだったので結構悩んだのですが、思い切って買っちゃいましたね。
F:気に入っているポイントは?
梶:無地の黒ですね。探すと意外と無くて。「ダナー(Danner)」とかだと本格的すぎるというか。これはやっぱりフランスらしさを感じるのか、洗練されている印象がある。品よく見えるので気に入っています。
F:どんなアイテムと合わせていますか?
梶:僕はスウェットのセットアップと合わせたりしています。いわゆるアウトドアらしい格好じゃなくてもハマってくれるので、基本的にどんなアイテムでも合わせられるはずです。ボリュームがあるのでしっかりと重心を作ってくれるし、見た目ほど重くないので、歩きやすく使い勝手がいいんですよ。
Levi's® ブラックデニム
F:次は「リーバイス®(Levi's®)」の501ブラックデニム。良い色落ちですね。
梶:これは現行のものなのですが、最初から色落ちの加工が施されていて、古着みたいで良いですよね。普段は34インチがちょうど良いのですが、少し大きめで穿きたい気分だったので36インチを選びました。最後のアメリカ生産のものらしく、星条旗のタグがついているのが特徴です。
F:アメリカ製という点に惹かれて買ったんですか?
梶:いえ。これは買った後でアメリカ製だと気づきました(笑)。「コンバース(CONVERSE)」も同じだと思うんですけど、「アメリカ製じゃないと嫌だ」みたいな人いるじゃないですか。僕は正直気にしたことなくて、今までそういう感覚で選んだ事もないんですよね。僕自身がアメリカのカルチャーで育ったような見た目をしているので勘違いされがちなんですが、実はそんなにアメリカに傾倒しているわけでもなくて。
F:ではどんなところに惹かれたんですか?
梶:一目惚れというより、穿いていくうちに自分に馴染んでいく感覚があって。言ってしまえば普通のデニムなんですけど、年間を通じて振り返るとなんだかんだ穿く機会が多かった。結局どんなスタイリングにもマッチする万能さに惹かれているんだと思います。
F:普段はどんな風に合わせていますか?
梶:ブレずにスウェットですね。時々上下デニムで合わせる時もありますよ。
F:梶さんはデニム好きなイメージがあるので、ご自宅にも沢山あるんじゃないですか?
梶:意識して選別するようにしていますよ。ヴィンテージが好きっていうわけでもないので、プレーンなものがいくつかあるって感じです。自分のブランドのものもありますが、やっぱりリーバイス®が多いですね。僕にとってはリーバイス®も白米的な存在なので、ワードローブには欠かせないブランドですね。
F:やっぱり501が多いんですか?
梶:基本そうなんですけど、あんまりこだわりもないんで、よくわからず穿いている時もあります(笑)。
SANSE SANSE ベスト
F:5点目は梶さんがディレクターを務める「サンセ サンセ(SANSE SANSE)のベスト。アイコニックなデザインが印象的ですね。
梶:2023年秋冬のテーマが1980年代のフランス代表のサッカーを表現した「シャンパンサッカー」なんですが、そのテーマを体現したような象徴的なアイテムです。古着でありそうだけど、意外とこういうの無いじゃないですか。新品でもこういうアイテムを作るブランドは少ないだろうし、そういう意味ではどこにも無いものが作れたかなって。
F:ルックでも一際目立っていましたね。色合いも素敵ですね。
梶:フランス代表のユニフォームの色味を拾って構成しました。発想は単純なんですけど、いい感じですよね。
F:くるみボタンも可愛いです。
梶:これはそもそも乾燥機にかけたらいけないんですけど、馴染ませたくて乾燥機に入れたらボロボロになっちゃったんですよね。全体的に馴染んだ感覚はあるんですけど、ボタンがこうなるのは想定外で新しいものに変えるか迷っています(笑)。
F:着こなし方は?
梶:スウェットに羽織るだけで、いつもと変わらずです。デニムとスウェットでどこまでいけるかが僕のスタイリングのテーマで、年間の3/4くらいはこの格好で過ごしているんですよ。そのスタイリングに何をプラスできるかが、実はサンセ サンセの裏テーマでもあるので。
F:自身のスタイリングにもプラスワンできるアイテムってことですね。
梶:いつもの格好だと少し物悲しい時があるというか。たまには遊びを入れたくなることがあって、そういう時に活躍してくれます。結構パンチがあるのでいつもの格好でも違って見えるというか、アクセントを加えてくれる一着ですね。
newscape 導入美容液
F:最後は、今年の8月にデビューしたスキンケアブランド「ニュースケープ(newscape)」の導入美容液です。このブランドを知ったきっかけは?
梶:僕の知り合いが始めたブランドだったので紹介してもらったのが最初です。製品の原価を公表していて、そのブランディングも革新的で面白いなと。
F:定価はいくらなんですか?
梶:2000円くらいだったと思います。化粧水や乳液などもあるんですが、どのアイテムもこれくらいの価格帯ですね。余計なお金を取られないというか、クリーンなイメージで買いやすいのも魅力。身につけるものだったらタグとかロゴが気になりますけど、化粧品なら成分が良ければいいやと思っていて。その点、このブランドの商品は生産背景だったり配合されている成分を公表していので、安心感もあって気に入っています。
F:今までスキンケアはしていましたか?
梶:面倒くさくて、ほとんどしていなかったですね。
F:ではどうしてこのタイミングで?
梶:他のブランドの化粧品をいただいたことがあって、何気なく塗ってみたらすごく気持ちよくて。年齢のせいもあるのかもしれないのですが。それから色々なブランドの商品を見るようになりました。
F:この導入美容液の使い心地はいかがですか?
梶:本当に気持ちいいです。導入美容液を使ったのはこれが初めてでしたが、労ってくれる感覚がすごくて。化粧水の前に塗るものなので、要は一番素の状態で塗るわけじゃないですか。なので余計に浸透していく感覚を味わえるというか。この上から化粧水を塗ると、化粧水すら変わったように感じますよ。
F:そこまで言われると気になりますね。使い始めてから変化はありましたか?
梶:使い始めてまだ半年なので、成果が出ているかと言われると分かりませんが、スキンケアが日課になったという点でいうとだいぶ生活が変わりました。気持ちいいという感覚がスキンケアをルーティン化させてくれましたね。49歳から始めるスキンケアです(笑)。
F:49歳で美容男子になったわけですね(笑)。他にも化粧品は使っているんですか?
梶:今はこれと化粧水と乳液だけです。まだそんなに奥深くハマっていません。パックとかはまだですね。美容整形も(笑)。
今年を振り返って
F:2023年の買い物を振り返って。今年はどんな一年になりましたか?
梶:買いたいと思ったものは買うようになりました。昔の方が「どうせ着なくなるでしょ」とか買わない理由を探していた気がしますけど、今は買っちゃえばいいじゃんと思えるようになりましたね。
F:買い物に対するハードルが下がった?
梶:そうですね。若い時の方が先が長いじゃないですか。と考えると、まだいいものが出てくるかもと思うと簡単に手を出せなかったというか。きっと年齢の問題でしょうね。
F:では最後に、来年の目標や抱負を聞かせてください。
梶:「スキンケアの効果があったね」って言われるように頑張ります。そしていつかファッションスナップの表紙を飾りたいです(笑)。
■梶雄太
1974年東京都生まれ。1998年よりスタイリストとして活動開始。ファッション誌、広告、映画など幅広く活動中。性別・世代を越え、ユニーク且つ、オリジナリティ溢れるスタイリングに定評がある。2020年より「サンセ サンセ(SANSE SANSE)」のブランドディレクションをスタート。
インスタグラム:@yutakaji_
■2023年ベストバイ
・ファッションエディター 大平かりんが今年買って良かったモノ
・「ロンハーマン」ウィメンズディレクター根岸由香里が今年買って良かったモノ
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・映像ディレクター 上出遼平が今年買って良かったモノ
・「シスター」オーナーの長尾悠美が今年買って良かったモノ
・義足モデル KawaK(川原渓青)が今年買って良かったモノ
・資生堂ヘアメイクアップアーティスト 進藤郁子が今年買って良かったモノ
・ダンサー RIEHATAが今年買って良かったモノ
・VCM 十倍直昭が今年買って良かったモノ
・GEZAN マヒトゥ・ザ・ピーポーが買って良かったモノ
・川谷絵音が今年買って良かったモノ
・グラフィックアーティスト VERDYが今年買って良かったモノ
・芸人・俳優・芸術家 片岡鶴太郎が今年買って良かったモノ
・美容室「アルバム」創業者 槙野光昭が今年買って良かったモノ
・スタイリスト TEPPEIが今年買って良かったモノ
・音楽家 渋谷慶一郎が今年買って良かったモノ
・ [Alexandros] 川上洋平が今年買って良かったモノ
・繊研新聞 小笠原拓郎が今年買って良かったモノ
・FASHIONSNAP社長 光山玲央奈が今年買って良かったモノ
・サカナクション山口一郎が今年買って良かったモノ
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