■当社のワークショップ・セミナーでは研修参加者にチェーンストア最大手ウォルマートのネットスーパーを体験してもらうカリキュラムがある。
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アイパッド・プロやアイパッド・エアを使いウォルマートのストアアプリを介して生鮮品等を注文するのだ。
実際にネットスーパー体験することで生活者の視線で世界最先端となる流通DXの利便性等を確認することになる。
受け取りは店舗のカーブサイド・ピックアップを選択する。
カーブサイド・ピックアップに移動車が到着後にアプリを介して通知を行い、どれだけの早さで注文品を受け取れるのかを確認する。と同時に受け取ったあとに返品の実験も行う。
注文して受け取ったレタスやキャベツ、アボガドなどの生鮮品から一つを選び、アプリで返品処理をするのだ。
例えばマカロニ&チーズを購入した後、アプリを介した「イージーリターン」で返品するとチェックマークに「返品完了しました!(You're all set)」に「返品する必要はありません(No need to return it)」と表示される。
返品せずとも返金処理されクレジットカードに返金されたり、お店のクレジットになったりすることを研修参加者が確認する。
ウォルマートの返品レスとなるイージー・リターンに日本人誰もが驚くことになる。
アメリカ国内の週客数1.4億人となるウォルマートの返品作業を考えることにもなる。実はこのイージーリターン、つまり返品なしの返金がウォルマート以外のお店でも拡大している。
返品サービス業者ゴーTRG(goTRG)が大手小売企業21社の約500人の役員を対象にした調査では実に59%が返品なしの「リターンレス(Returnless)」ポリシーを採用していることが明らかになった。
無返品となる「キープ・イット(Keep It:返品せず、お客様のほうでお預かりください)」ポリシーは昨年の26%から2倍以上も拡大しているのだ。
返品のサプライチェーンとなるリバース・ロジスティクスでは、戻ってきた商品の輸送に検品と仕分け、さらに値引きして再び販売するとどうしてもコスト高になる。
商品によっては赤字になってしまうことも珍しくない。
したがってリバース・ロジスティクスにコストをかけて再販するよりもお客の方で処理してもらったほうが合理的になるのだ。
返品レスが小売チェーンやEC企業で拡大したことはコロナの影響だ。感染拡大や衛生面の理由から食品や下着、シーツなどのリネン、一部の家具などが返品レスの対象となった。
最近ではコロナ禍で定着した新しい生活様式に返品レスが商慣習として加わり、対象カテゴリーがTシャツやペットトーイまで広がりつつあるという。
ロイターが買い物客17人を対象に調査したところでも20ドル前後の価格から最大300ドル(欠陥もしくは誤発送)の商品も返品レスになっていた。
特にアマゾンのマーケットプレイスの購入では17人中8人が返品レスとなった。
もっとも顧客によっても返品対応も大きく異なってくる。顧客でも気前よくお金を使ってくれる太客に対しては、より返品レスになるというのだ。
全米小売業協会(NRF)によると返品される商品の総額は2022年、8,160億ドル(約122兆円)にのぼると見込んでいる。
8160億ドルはウォルマートやアマゾン、コストコの2021年の国内売上高の合計とほぼ等しいのだ。
小売チェーンにとって小売総額の16.5%にもなる返品を嫌ってばかりではいられない。むしろ集客のチャンスにしようとしている。
例えばウォルマートやターゲットでは返品をカーブサイド・ピックアップでスタッフが受け取れるようにしている。
ウォルマートのネットスーパー宅配サービスでは自宅で返品を配達員が預かるようなこともおこなっている。
日本人にとって「気に入らない」という理由だけで返品できるアメリカの商慣習には驚くしかない。
プレゼントさえ返品するのが一般的なアメリカで、返品レスが拡大するのは理解が追いつかないかもしれない。
トップ画像:コールズ内にあるアマゾンの返品専用カウンター。20ドル程度の商品の場合、返品せずとも返金する小売企業が増えている。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。米国小売業界の慣習で、どんなに強調してもしすぎることがないことに返品があります。お店やECのポリシーで返品条件が寛大でなければそれだけでハンディを持つことになります。特に小売業界に携わっている日本人にとって、アメリカの返品については理解が追いついていなかったりします。「好きじゃない」「気に入らない」というお客のワガママな理由で返品ができるのです。最近ではクルマに乗ったまま返品も可能で、宅配スタッフに自宅で返品を渡すサービスまであります。良くも悪くもSNSの時代ではいいニュースも悪いニュースも伝達スピードが上がっています。少しでも返品に手こずれば、消費者が声を上げてお店を批判するのです。それを嘆いていてもアメリカでは厳しい競争に勝つことはできません。最近の返品のトレンドはエントリー記事にもあるようにリターン(返品)レス返金。商品を返さなくても返金してくれるのです。お客様のほうでその商品を廃棄するなり、友だちにあげるなり、寄付するなりと自由にしてくださいと。
返品レスを乱用する輩もいるかもしれませんが、小売側にとっては多くが正直なお客さまです。(競合に顧客を奪われたりせず)顧客の生涯価値を少しでも高めるための返品レスなのです。
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