WEGOは今年からリメイク古着の販売を本格化させた。これまでは袖や裾に汚れがあってそのままでは販売できないものをノースリーブにしたり、裾をカットして販売していた。それらのリメイク古着が人気だったことで、この春夏からはそのままでは販売に適さないものの袖、身頃、ディテールなど使える部分を活用。新しいデザインのリメイク古着に作り変え、販売を始めたのだ。
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WEGOは大阪の拠点に企画デザイン、縫製の施設を設け、デザイナーを加えたリメイクチームを編成。先にアイデアを出し合った上で、売りものにならない在庫の中からリメイクに適したものをピックアップし、商品化している。併せて、不良在庫をできるだけ出さず、SDGsにも取り組めるという利点もアピールする。
リメイクは当初、全部で37型、価格は最高で約25,000円と割高だったが、次第に2000円〜4000円くらいのものを作り始めた。リメイク古着はWEGOの新品との相性も良いことから、顧客には好評なようで、売上げにも貢献している。古着を扱わない店舗にも置くことで、販路拡大も視野に入れているそうだ。
現在ではリメイクのための商品買い付けもスタートさせ、計画的な生産を進めているとのこと。これはWEGOがこれまで取ってきたビジネスモデルが下敷きになっていると思う。同社は1994年、大阪ミナミのアメリカ村で産声を上げ、東京・下北沢進出を皮切りに全国展開の古着店となった。ただ、古着店の性格からして店を増やせば、人気のブランドやアイテムはどうしても在庫が安定しなくなる。買取に注力したからと言っても、限界があるのだ。
そこで、在庫を安定させるために、洗いをかけるなどユーズド風のストリートカジュアルも取り扱い始めた。その手法はODM(相手先デザイン製造)調達で、デッドストック素材を活用したり、デッドストック製品のをリメイクすることで、エッジが効いたトレンド商品を低価格で打ち出すもの。デザイナーもの、アメカジ、ヴィンテージなど数々の古着を扱うことで磨かれた感性がユーズド風の商品作りにも生きたわけだ。
こうしたノウハウを蓄積してきたからこそ、リメイクのための商品の買い付ける上でも、目利きが働く。欧米のメゾンデザイナーがテキストタイル展で新作の生地を見た瞬間にクリエーションのイメージが湧くのと同じように、古着を見ただけで「こうリメイクしたら、お洒落なアイテムになるかも」といったアイデアが浮かぶのだろう。古着を選り抜くことでインスピレーションが広がり、商品企画に繋げていくフローとでも言おうか。
WEGOがリメイク古着に注力するには、社内デザイナーがどこまでのクリエイティビティを発揮できるか。また、縫製まで手がけることで、服としても完成度を高めていけるか。今後はそれらがカギになるわけだが、新品を手がけるのとは違った感性やノウハウも磨いていかなければならないのは確かだろう。
古着人気の反動が来ている
もっとも、ここに来て古着ビジネスに逆風が吹き始めている。若者を中心に好調に売れているため仕入れ競争に拍車がかかる中、もともとの供給量には限界があることから、取引価格が上昇しているのだ。古着は中古車と似ている。新車が売れないと、必然的に中古車の在庫も増えない。だから、ハイエースなどの人気の車種は中古価格がアップする。古着も人気ブランドや比較的状態がいいアイテムは、引き合いも多いため仕入れ価格も上がっていくのだ。
衣料品の1世帯当たり購入数量は、バブル期の1985年を100としたとき、94年をピークに98年まで低下が続いた。97年以降は85年の水準をも下回っている。また、購入価格も98年以降は低下が続き、2000年は85年以下の90%台まで低下している。背景にはアジア製品などの安価な商品が輸入されていったことがある。こうして適度な品質の商品が流通すると、多くの消費者はそれらで十分との意識に変わり、数量、金額とも下がっていったのだ。
一方、安価な衣料は1~2シーズンで着古すため、廃棄されるケースが圧倒的に多い。昨年くらいからは物価高が影響し、衣料品にそこまで投資できないことから、着用シーズンをもう1~2シーズン伸ばす消費者が増えている。そうなると、ますます中古衣料としての利用は困難になる。逆に若者が好むような古着はブランド物など元々の品質がいいものに限られ、出回るのは古着全体の一部に過ぎない。国内でそうしたブランドの新品がインバウンドを主体に売れていけば、なおさら中古品として流通するケースは少なくなる。
国内アパレルの低価格ブランドはどこも同じようなテイストやカラーで、古着になればなるほど人気を欠いてしまう。せいぜいメルカリなどで個人売買される程度だ。そのため、コアな古着ファンはユーロ、アメカジ、ビンテージなどお洒落で個性的なデザインを求め、多少高くても購入する。こうした状況から、販売業者は輸入古着に頼らざるを得なくなっている。
現に2022年の古着の輸入量は1万トンを超え、過去最高を記録した。輸入古着1Kgあたりの価格は、2018年に比べると3割程度も上昇したという貿易統計をもとにした試算データもある。さらに関係者からは近年の円安で「2割程度は値上がりしたと感じる」との話も聞こえてくる。こうした状況も古着ビジネスの窮状を表していると言えそうだ。
不吉なのは中国市場の動向である。これまでは経済成長が続き、海外ブランドを中心に高額な商品が売れていた。しかし、不動産バブルの崩壊で「理性的消費」にトレンドが移ったと言われる。中国でも若者のファッションニーズが成熟するのは時間の問題で、今後は古着ファンが増えていくのは想像に難くない。その結果、中国が古着の輸入を積極化すれば、さらに価格が上がり日本や欧米の事業者が買い負けるケースが出てくることが考えられる。
東京・下北沢には200店舗もの古着店があり、多くの若者を集めている。昨年、東京に出張した時に久々に立ち寄ってみたが、海外から来ているバイヤーらしき人々が店頭で商品を吟味する姿を見かけた。ベール仕入れだと中身が確認できないため、実際に小売店の店頭で商品を確認してまとめ買いしようという狙いなのか。店側としても大量に買ってくれるなら在庫が捌けるわけで、バイヤー側との価格交渉にも応じるだろう。
下北沢に古着店が集中するのは、渋谷や原宿に比べ家賃が安く経営しやすいことがある。ただ、古着が安定的に売れて在庫が消化していけば、新たな商品を仕入れなければならない。この価格が上昇しているのだから、小売り価格も値上げされていく。すると、店頭の販売に影響が出るのは必至だ。それでもお客を惹きつけるには魅力的な商品が欠かせないが、そうしたものが不足気味なのだから、古着店としては如何とも難い。人気店の閉店も何らかの関連性があるのだろうか。
こうした課題を既存の古着事業者がどう乗り越えていくか。古着の中でも回転が鈍いものはある。そうしたものをいかに消化するかは、これまでも各店が取り組んできたと思うが、WEGOが始めたリメイク古着の材料として提供するようなこともあるだろう。東京コレクションに参加している「スリュー」のように、クリエーションに古着リメイクを位置付けるデザイナーも出てきている。
スリューは毎回、柄も素材も異なる生地をはぎ合わせたり、服の各部に別の布地を組み合わせたりしたものを発表している。使用する素材が古着由来のため、作品は1着1着微妙に変わる。素材の古着は無駄なく使うのもモットーで、ジャージの背中をくり抜いてジャケットにしたとしても、くり抜いた生地も別の服に使っている。この辺のクリエイティビティも古着ビジネスの今後を左右していくかもしれない。
世界の人口は増えているが、日本は少子高齢化が収まる気配はない。国内では新規需要がこれ以上、増えることはなくアパレル市場も縮小していく。古着ビジネスにも少なからず影響があるということだ。古着はもちろん、売れ残りなど抱える在庫を再活用して、いかに需要を喚起していくか。古着ビジネスにはシーズとアイデアが求められ、ビジネスモデルそのものを作り替えなければならないようだ。古着
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